アビエイター
The Aviator
(アメリカ・ドイツ 2004)
[製作総指揮] クリス・ブリガム/コリン・コッター/レオナルド・ディカプリオ/アスラン・ナデリー/フォルカー・シャウツ/リック・シュワルツ/マーティン・スコセッシ/ボブ・ワインスタイン/ハーヴェイ・ワインスタイン/リック・ヨーン
[製作] サンフォード・R・クライマン/マティアス・デイル/チャールズ・エヴァンス・ジュニア/グラハム・キング/ダン・マーグ/マイケル・マン/ジョセフ・P・レイディ/フィリップ・シュルツ・デイル
[監督] マーティン・スコセッシ
[脚本] ジョン・ローガン
[撮影] ロバート・リチャードソン
[音楽] ハワード・ショア
[ジャンル] ドラマ/伝記
キャスト

レオナルド・ディカプリオ
(ハワード・ヒューズ)

ケイト・ブランシェット
(キャサリン・ヘプバーン)

ケイト・ベッキンセール
(エヴァ・ガードナー)

ジョン・C・ライリー
(ノア・ディートリッヒ)

アレック・ボールドウィン
(フアン・トリッペ)

アラン・アルダ
(ラルフ・オーウェン・ブリュースター上院議員)

イアン・ホルム
(フィッツ教授)
ダニー・ヒューストン (ジャック・フライ)
グウェン・ステファニー (ジーン・ハーロウ)

ジュード・ロウ
(エロール・フリン)
アダム・スコット (ジョニー・マイヤー)
マット・ロス (グレン・オデカーク)
ケリー・ガーナー (フェイス・ドメルグ)
フランシス・コンロイ (ヘップバーン夫人)
ブレント・スピナー (ロバート・グロス)
スタンリー・デサンティス (ルイス・B・メイヤー)

エドワード・ハーマン
(ジョセフ・ブリーン)

ウィレム・デフォー
(ローランド・スウィート)
ケネス・ウェルシュ (ドクター・ヘップバーン)
J・C・マッケンジー (ラドロー)
ジェイコブ・ダビッチ (ハワード・ヒューズ – 9歳)
エイミー・スローン (ハワード・ヒューズの母)
サム・ヘニングス (フランク)
ジョー・クレスト (ヘルズ・エンジェルス撮影監督)

マーティン・スコセッシ
(ヘルズ・エンジェルス映写技師)
ストーリー
亡き父の財産を継いだ若きハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は、全財産を投じて航空映画『地獄の天使』の製作に乗り出す。完璧主義ゆえの撮り直しや無声映画からトーキーへの変更など、周囲の猛反対を押し切り映画を大成功させた彼は、次に航空会社TWAを買収し、自ら設計した飛行機で世界最速記録を塗り替えるなど、航空界の寵児となる。
その傍らで、キャサリン・ヘプバーン(ケイト・ブランシェット)やエヴァ・ガードナー(ケイト・ベッキンセイル)ら名だたる女優たちと浮き名を流すが、幼少期からの「潔癖症」による強迫性障害が徐々に彼の精神を蝕み始めていた。
第2次世界大戦中、巨大輸送機「スプルース・グース」の開発を国から請け負うが、遅延が重なり詐欺容疑で公聴会に召喚される。ライバル企業パンナム社の裏工作により窮地に立たされ、強迫観念が悪化したハワードは、自宅の試写室に引きこもり、全裸で牛乳瓶に排尿するほどの狂気に陥る。しかし、エヴァの助けを借りて正気を取り戻すと、公聴会で見事な反撃を見せ、世論を味方につけてパンナム社の独占を打ち砕く。
1947年、周囲が不可能と断じた巨大木製機「スプルース・グース」が、ハワード自らの操縦でついに空へと舞い上がる。彼は再び「時代の英雄」として喝采を浴びるが、祝宴の最中、再び強迫観念の波が彼を襲う。洗面所で鏡を見つめながら、幼い頃に母から聞かされた「クランク・イン(清潔にしなさい)」という言葉を何度も呪文のように繰り返す彼の姿を映し出し、過去の栄光と終わりのない狂気が交錯する中で物語は幕を閉じる。
受賞・ノミネートデータ
- 第77回アカデミー賞(2005年)
- 受賞:助演女優賞(ケイト・ブランシェット)、撮影賞、編集賞、美術賞、衣裳デザイン賞
- ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)ほか
- 第62回ゴールデングローブ賞(2005年)
- 受賞:作品賞(ドラマ部門)、主演男優賞(ドラマ部門)、作曲賞
- 興行・評価
- 全世界で2億ドル以上の大ヒットを記録。ディカプリオの演技が「アイドル脱却」を象徴する一作として絶賛され、スコセッシ監督の絢爛豪華な演出も高い評価を得た。
エピソード・背景
- ケイト・ブランシェットの徹底した役作り
実在の名女優キャサリン・ヘプバーンを演じるにあたり、ブランシェットは彼女の独特な話し方や身振りを完璧にコピー。存命中の関係者すら驚かせる演技を見せ、見事アカデミー助演女優賞に輝きました。 - 色彩による時代表現
スコセッシ監督と撮影のロバート・リチャードソンは、1920年代は「2色式テクニカラー」、30年代以降は「3色式」をシミュレートしたデジタル加工を施し、当時の映画を観ているような没入感を演出しました。 - レオナルド・ディカプリオの執念
ハワード・ヒューズの伝記を読み込んだディカプリオは、自らスコセッシに監督を直談判しました。強迫性障害を表現するために専門家や患者と数ヶ月過ごし、撮影中も役が抜けなくなるほどの熱演を見せました。 - 墜落シーンのリアリティ
ビバリーヒルズの住宅街に不時着するシーンは、ミニチュアと実物大の模型、CGIを駆使して撮影されました。ヒューズが負った瀕死の重傷を克明に描くことで、彼の執念の凄まじさを強調しています。 - 豪華なカメオと脇役
ジュード・ロウがエロール・フリン役、グウェン・ステファニーがジーン・ハーロウ役で出演しているほか、ジョン・C・ライリーやアレック・ボールドウィンといった実力派が、ヒューズを支え、あるいは対立する人物として重厚な演技を見せています。 - 膨大な数の衣装
劇中に登場する衣装は、ヒューズ一人のものだけでも膨大ですが、エキストラを含めると数千着に及びます。1920年代から40年代までのファッションの変遷が、アカデミー賞を受賞したサンディ・パウエルの手によって忠実に再現されました。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、一人の天才が抱いた「空への夢」という光の部分と、彼を内側から破壊していく「精神の病」という闇の部分を、等身大の人間ドラマとして描き出しています。ハワード・ヒューズが手に入れた巨大な富や権力も、彼の心の中にある底なしの不安を埋めることはできませんでした。
「不可能を可能にする」というアメリカ精神の象徴でありながら、あまりにも孤独だった一人の男の肖像を通じ、成功の代償と人間の脆さを浮き彫りにした、スコセッシ監督入魂の叙事詩です。


