四つの時代が交錯する、映画史上最大の「不寛容」への抗い
イントレランス
Intolerance
(アメリカ 1916)
[製作] D・W・グリフィス
[監督] D・W・グリフィス
[原作・脚本] D・W・グリフィス/トッド・ブローニング/アニタ・ルーズ
[音楽] カール・デイヴィス/ジョゼフ・カール・ブレイル/フェリックス・ギュンター
[撮影] G・W・ビッツァー
[ジャンル] ドラマ
キャスト
オルガ・グレイ (メアリー・マグダレーン)
ミルドレッド・ハリス (ハーレムの女)
ロバート・ハロン (少年)
ジョゼフ・ハナベリー (コリニー)
ロイド・イングラハム (判事)
リリアン・ランドン (母・メアリー)
エルモ・リンカーン (ボディガード)
ハワード・ゲイ (キリスト)

リリアン・ギッシュ
(ゆりかごの女)
ウォルター・ロング (仮面の男)

ベッシー・ラヴ
(花嫁)

コンスタンス・タルマッジ
(女)

ダグラス・フェアバンクス
(白い馬の男)
概要
『イントレランス』は、D・W・グリフィス監督による壮大なサイレント映画。
人類史を通じた不寛容の悲劇を描いたオムニバス形式の物語で、4つの異なる時代を交差させながら展開される。革新的な撮影技法とスケールの大きさで映画史に残る作品。
ストーリー
映画は「ゆりかごを揺らす母親」のイメージを繋ぎ目に、「不寛容」というテーマで結ばれた4つの時代の物語を交互に描き出す。
- バビロン編:
紀元前539年。平和を愛するバビロンの王子ベルシャザルは、宗教的対立と裏切りによってペルシャ軍の侵攻を許し、都は陥落する。 - ユダヤ編:
紀元30年頃。民衆の不寛容によって、イエス・キリストがパリサイ派に糾弾され、十字架にかけられる。 - フランス編:
1572年。カトリックとプロテスタントの対立が極まり、「サン・バルテルミの虐殺」によって多くの命が奪われる。 - 現代編:
1916年当時。ストライキによって職を失った若者が、無実の罪で死刑判決を受ける。彼の妻は必死に真犯人を探し、刑執行の数秒前に特赦を勝ち取って夫を救い出す。
これら4つのエピソードは、終盤に向かうにつれてカットの切り替えが速まり、時代を超えた「不寛容」の連鎖が加速していく。最終的には現代編のハッピーエンドを通じて、不寛容の壁が崩れ、世界に平和が訪れるという希望のイメージで幕を閉じる。
エピソード・背景
巨大すぎるセット
バビロン編のために作られた巨大な城壁のセットは、高さが90メートル以上あり、実際に数千人のエキストラを配置して撮影されました。このセットは撮影後もしばらく放置され、ハリウッドの名所となったほどです。
前作への批判への回答
グリフィス監督の前作『国民の創生』が人種差別的だと激しい批判を浴びたため、それに対する「自分は不寛容に反対している」という弁明の意を込めて本作を製作したと言われています。
映画史上初のクレーン撮影
巨大セットを俯瞰で撮るために、気球や巨大な塔を立ててカメラを動かすなど、当時としては革命的な撮影技法が次々と生み出されました。
興行的な失敗と負債
あまりにも壮大な内容と複雑な編集のため、当時の観客には理解されにくく、映画は大赤字となりました。グリフィスはこの借金を返すためにその後数十年苦労することになります。
リリアン・ギッシュのゆりかご
各エピソードを繋ぐ「ゆりかごを揺らす母」を演じたのは、サイレント映画の大スター、リリアン・ギッシュ。彼女の慈愛に満ちた表情が、残酷な歴史の合間の救いとなっています。
ソ連映画への影響
本作の編集技法は、後にソ連のセルゲイ・エイゼンシュテイン監督らに発見され、「モンタージュ」という映画理論へと発展する決定的なきっかけとなりました。
まとめ:作品が描いたもの
本作が描いたのは、時代や場所が変わっても繰り返される「人間の心の狭さ(不寛容)」という普遍的な悲劇です。異なる4つの物語を同時進行させるという手法は、個別の事件を「全人類共通の課題」へと昇華させました。
国家、宗教、道徳……正しいと信じているものが、他者を排除する武器に変わってしまう危うさ。100年以上前の作品でありながら、現代のSNS社会や国際紛争にも通じる鋭いメッセージを持っており、映画が単なる娯楽ではなく「思想を語るメディア」であることを証明した金字塔と言えます。



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