
ジュリア
Julia
(アメリカ 1977)
[製作] ジュリアン・デロード/トム・ペヴスナー/リチャード・ロス
[監督] フレッド・ジンネマン
[原作] リリアン・ヘルマン
[脚本] アルヴィン・サージェント
[音楽] ジョルジュ・ドルリュー
[撮影] ダグラス・スローカム
[ジャンル] ドラマ/実話
[受賞]
アカデミー賞 助演男優賞(ジェイソン・ロバーズ)/助演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)/脚色賞)
ゴールデン・グローブ賞 主演女優賞(ジェーン・フォンダ)/助演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)
キャスト

ジェーン・フォンダ
(リリアン・ヘルマン/ナレーター)

ヴァネッサ・レッドグレイヴ
(ジュリア)

ジェイソン・ロバーズ
(ダシール・ハメット)

マクシミリアン・シェル
(ヨハン)
ハル・ホルブルック (アラン・キャンベル)
ローズマリー・マーフィ (ドロシー・パーカー)

メリル・ストリープ
(アン・マリー)
リサ・ペリカン (少女ジュリア)
スーザン・ジョーンズ (少女リリアン)

ジョン・グローヴァー
(サミー)
概要
『ジュリア』(Julia)はフレッド・ジンネマン監督によるドラマ映画で、リリアン・ヘルマンの回顧録をもとにした物語。
1930年代の激動のヨーロッパを舞台に、友情と政治的信念の間で葛藤する2人の女性を描く。
ジェーン・フォンダが主人公リリアンを、ヴァネッサ・レッドグレイヴがジュリアを演じ、友情の力と危険な使命の重さが感動的に表現される。
ストーリー
物語は、リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)が幼なじみであり親友のジュリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)との思い出を回想する形で進行する。リリアンとジュリアは裕福な家庭で育ち、幼い頃から特別な絆で結ばれていた。ジュリアは自由奔放で聡明、理想主義的な女性であり、リリアンはそんなジュリアに憧れを抱いていた。
時代が進み、2人は別々の道を歩むようになる。リリアンは作家としてのキャリアを追求し、文筆活動に没頭。一方、ジュリアはオックスフォード大学に進学し、学問を極めると同時に、ヨーロッパの政治的混乱に巻き込まれていく。ナチスの台頭を目の当たりにした彼女は、反ファシズム運動に身を投じる。
リリアンはパートナーである作家ダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーズ)との関係に悩みながらも、彼の支えを受けて執筆活動を続ける。しかし、ジュリアの安否を気にする日々が続く中、突然、ヨーロッパでの危険な任務を依頼される。ジュリアの指示を受けたリリアンは、ナチスの監視下にあるウィーンに向かい、反ファシズム運動の資金を密輸するという危険な使命を遂行することになる。
リリアンは列車で密輸任務を遂行するが、周囲には疑惑の目が光り、一瞬の油断が命取りになる状況に直面。緊張感に満ちた列車の旅を経て、リリアンはジュリアと再会する。ジュリアは短い時間の中で、自分の置かれている危険な状況を語りつつ、リリアンに感謝の言葉を伝える。彼女はリリアンに、自分の遺志を次の世代に繋いでほしいと託す。
その後、ジュリアは反ファシズム運動の最前線で命を落とす。リリアンは深い悲しみを抱えながらも、彼女の死を受け入れることができない。物語は、ジュリアが遺した幼い娘を探し出そうとするリリアンの決意で締めくくられる。友情と信念の代償、そしてその永遠性が深く心に刻まれる結末となっている。
エピソード
- ジェーン・フォンダは、作家リリアン・ヘルマンの繊細で複雑な感情を丁寧に表現し、その演技が高く評価された。フォンダ自身も女性の独立や信念を重視する思想を持っており、リリアン役と自身の価値観が共鳴していたという。
- ジンネマン監督は、フォンダの内面的な演技力を信頼し、撮影中も彼女に自由な演技を任せる場面が多かった。フォンダは「彼の静かな指導が役への没入を助けた」と語っている。
- 撮影中、フォンダとレッドグレイヴは共演を通じて実際に親密な友情を築いた。映画内の友情がリアルに感じられるのは、2人のオフスクリーンでの親密な関係が反映されているためだとされる。
- ジュリアを演じたレッドグレイヴは、この役でアカデミー賞助演女優賞を受賞。彼女はアカデミー賞授賞式で政治的スピーチを行い、一部で批判を受けた。しかし、ジンネマンやフォンダは彼女の信念を尊重し、その行動を支持した。
- ダシール・ハメット役のジェイソン・ロバーズは、撮影中にフォンダと意見の対立を見せる場面があった。しかし、2人はそれを役作りに生かし、劇中での複雑な関係性をよりリアルに表現することに成功した。2人は、リリアンとハメットの関係を忠実に再現するために実際のエピソードを参考にし、リアルな夫婦像を演じた。
- ジンネマン監督は、キャストに対して深い敬意を持ち、特にフォンダとレッドグレイヴの才能を称賛していた。彼は「彼女たちの演技が映画の魂そのものだ」と述べている。
- ジンネマン監督は大声で指示を出すことなく、繊細な言葉でキャストの感情を引き出すスタイルをとった。フォンダは「彼の言葉一つでキャラクターの全てが見えてくる」と語った。
- 列車の再会シーンでは、フォンダとレッドグレイヴが台本を超えた即興的な動きを取り入れ、それが映画の緊張感を高めた。
- レッドグレイヴはジュリアの思想や行動を深く理解するために、当時の反ファシズム運動について徹底的に調査し、それをジンネマン監督と共有した。
- 撮影終了後もフォンダとレッドグレイヴ、そしてロバーズとの関係は続き、彼らは互いに尊敬と友情を語り合った。映画が生んだ「リアルな絆」と言えるエピソードだった。
- 映画はヘルマンの回顧録をもとにしているが、彼女の親友ジュリアの存在については実在性が議論されている。それでも映画は、友情と信念のテーマを深く掘り下げた。
- 映画の舞台となるヨーロッパの多くのシーンは、実際にヨーロッパ各地で撮影され、時代の雰囲気が忠実に再現されている。
コメント