ヒーロー 靴をなくした天使
Hero
(アメリカ 1992)
[製作総指揮] ジョゼフ・M・カラッチオロ
[製作] ローラ・ジスキン/サンディ・アイザック
[監督] スティーヴン・フリアーズ
[原作] ローラ・ジスキン/アルヴィン・サージェント/デヴィッド・ウェブ・ピープルズ
[脚本] デヴィッド・ウェブ・ピープルズ
[撮影] オリヴァー・ステイプルトン
[音楽] ジョージ・フェントン
[ジャンル] コメディ/ドラマ
キャスト

ダスティン・ホフマン
(バーニー・ラプラント)

ジーナ・デイヴィス
(ゲイル・ゲイリー)

アンディ・ガルシア
(ジョン・ババー)

ジョーン・キューザック
(イヴリン・ラプラント)
ケヴィン・J・オコナー (チャッキー)
モーリー・チェイキン (ウィンストン)

スティーヴン・トボロウスキー
(ジェームズ・ウォレス)
クリスチャン・クレメンソン (ジェームズ・コンクリン)

トム・アーノルド
(バーテンダー)
ウォーレン・バーリンガー (ゴインズ判事)
キャンディ・ハフマン (スチュワーデス;レスリー)

ダニエル・ボールドウィン
(消防士デントン)

チェヴィー・チェイス
(デイク)

エドワード・ハーマン
(テレビマン)
ストーリー
ケチな泥棒で前科者のバーニー(ダスティン・ホフマン)は、離婚した妻から息子の面会を拒まれ、人生のどん底にいた。雨の降る夜、彼は目の前で旅客機が墜落するのを目撃する。野次馬として近づいたバーニーだったが、爆発の危険がある中で不本意ながらも乗客たちを機外へ救出し、どさくさに紛れて乗客の一人であるテレビ局の記者ゲイル(ジーナ・デイヴィス)の財布を盗んで立ち去る。その際、彼は片方の靴を現場に脱ぎ落としてしまった。
テレビ局は救出の英雄を「銀の靴の天使」として大々的に捜索し、100万ドルの賞金を懸ける。バーニーは逮捕され勾留されていたが、彼から事故の話を聞き、片方の靴を預かっていたホームレスのジョン(アンディ・ガルシア)が、名乗り出られないバーニーに代わって英雄として名乗り出る。清廉潔白な風貌のジョンは一躍全米のスターとなるが、本物の救出者であるバーニーは、世間が望む「英雄像」にぴったりなジョンに対し、複雑な感情を抱く。
ジョンは嘘の重圧に苦しみ、バーニーに賞金を渡そうとするが、バーニーは息子の養育費のために金を要求しつつも、ジョンが英雄として振る舞い続けることを認める。ゲイルはジョンが財布を盗んだ犯人ではないと気づき真実を追い求めるが、ジョンが自殺を図ろうとした際、バーニーが彼を説得する姿を見て、真の救出者が誰かを知る。しかし、ゲイルは世間の夢を壊さないために沈黙を守る。バーニーは息子に対し、自分が本当の英雄であることを密かに打ち明け、親子の絆を取り戻す。バーニーは名誉をジョンに譲ったまま、一人の「無名の父」として新しい人生を歩み始める。
エピソード・背景
- ダスティン・ホフマンの役作り
徹底した役作りで知られるホフマンは、本作でも「英雄らしくない英雄」を演じるため、小汚い外見と卑屈な態度を完璧に作り上げ、観客が素直に感情移入できないギリギリのラインを攻めました。 - スティーヴン・フリアーズのハリウッド進出
『危険な関係』などで知られるイギリスの名匠スティーヴン・フリアーズが監督を務め、アメリカのメディア社会に対する冷徹な風刺と温かい人間賛歌を見事に融合させました。 - アンディ・ガルシアの抑えた演技
偽の英雄を演じたガルシアは、嘘をついている罪悪感に苛まれる内面を繊細に演じ、主演のホフマンとは対照的な静の存在感で作品に深みを与えています。 - 豪華なサイドキャスト
ニュース番組のプロデューサー役にチーチ・マリン、バーニーの元妻役にジョーン・キューザックが出演しているほか、若き日のトム・アーノルドなど個性派俳優が脇を固めています。 - 当初の脚本タイトル
脚本の初稿段階でのタイトルは『Black Box』であり、より航空機事故の謎やメカニズムに焦点を当てたトーンでしたが、開発段階で人間ドラマへとシフトしていきました。 - シンデレラのモチーフ
「残された靴」によって英雄が探されるという展開は、童話『シンデレラ』の変奏曲となっており、現代の殺伐とした都会に寓話的な彩りを添える演出となっています。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、メディアが作り上げる「虚像」と、泥臭い「現実」の対比を通じ、英雄とは何かを鋭く問いかけています。立派な格好をして賞賛を浴びる者が必ずしも善人ではなく、身勝手で卑劣な人間の中にも尊い一瞬の輝きがあるという真理は、観る者の倫理観を揺さぶります。
最後には真実よりも「人々に必要な物語」を優先させるという結末は、ほろ苦い余韻を残しつつも、不完全な人間に対する監督の深い慈しみを感じさせる名作です。



