地獄の黙示録
Apocalypse Now
(アメリカ 1979)
[製作] フランシス・フォード・コッポラ/グレイ・フレデリクソン/シャノン・レイル/フレッド・ルース/トム・スターンバーグ/ジョン・アシュビー/キム・オーブリー/エディ・ロメロ/モナ・スケイガー
[監督] フランシス・フォード・コッポラ
[原作] ジョゼフ・コンラッド
[脚本] ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ/マイケル・ハー
[撮影] ヴィットリオ・ストラーロ
[音楽] カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ/ミッキー・ハート
[ジャンル] アクション/ドラマ/戦争
[受賞]
アカデミー賞 撮影賞/音響賞
英国アカデミー賞 監督賞/助演男優賞(ロバート・デュヴァル)
カンヌ映画祭 国際批評家連盟賞/グランプリ
ゴールデン・グローブ賞 監督賞/助演男優賞(ロバート・デュヴァル)/オリジナル作曲賞
ロンドン批評家協会賞 作品賞
全米批評家協会賞 助演男優賞(フレデリック・フォレスト)
キャスト
マーロン・ブランド
(ウォルター・E・カーツ大佐)
ロバート・デュヴァル
(ウィリアム・‘ビル’・キルゴア大佐)
マーティン・シーン
(ベンジャミン・L・ウィラード大尉)
フレデリック・フォレスト
(ジェイ・ヒックス)
アルバート・ホール (フィリップス)
サム・ボトムズ
(ランス・B・ジョンソン)
ローレンス・フィッシュバーン
(タイロン・ミラー/クリーン)
デニス・ホッパー
(フォトジャーナリスト)
G・D・スプラッドリン (R・コーマン将軍)
ハリソン・フォード
(G・ルーカス大佐)
ジェリー・ジースマー (ジェリー)
スコット・グレン
(リチャード・コルビー)
コリーン・キャンプ
(テリー・トゥリー(ミス・メイ))
フランシス・フォード・コッポラ
(TVの監督)
ヴィットリオ・ストラーロ (TVのカメラマン)
概要
『地獄の黙示録』は、フランシス・フォード・コッポラが監督を務めた戦争映画。
ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を原作に、舞台をベトナム戦争に置き換えた物語が展開される。
戦争の狂気と人間の闇を描く壮大なスケールの作品で、公開当時から現在に至るまで映画史に残る傑作とされている。
ストーリー
物語は、アメリカ軍特殊部隊のウィラード大尉(マーティン・シーン)が秘密任務を受ける場面から始まる。彼の任務は、カンボジアの奥地で独自の「王国」を築き、反乱を起こしたカーツ大佐(マーロン・ブランド)を暗殺すること。カーツはかつて優れた軍人だったが、戦争の狂気に呑まれ、指揮系統を離れて独自の秩序を作り上げていた。
ウィラードは小型の巡視艇に乗り、隊員たちとともに川を遡る旅に出る。道中、彼らは戦争の混乱と暴力に満ちた光景を目撃し、次第に戦争の現実に精神を蝕まれていく。ナパームの攻撃が行われる村、無意味な虐殺、そして兵士たちの恐怖と狂気。これらの出来事は、ウィラードの任務だけでなく、人間性そのものを問う旅となる。
川を遡る中で、ウィラードは次第にカーツの思想に引き寄せられ、彼の行動の背後にある論理を理解し始める。ついに彼はカーツの王国にたどり着き、そこで目にする光景は、戦争がもたらす究極の破壊と人間の深い闇を象徴するものだった。
エピソード
- 主演のマーティン・シーンは撮影中に心臓発作を起こし、一時的に撮影が中断。しかし、コッポラは彼を降板させることなく撮影を続け、彼の精神的・肉体的回復を待った。シーンもまた、コッポラの期待に応えるべく懸命に役を演じ切った。
- カーツ役のマーロン・ブランドは撮影開始時にセリフをほとんど覚えず、太った体型のまま現場に登場したため、コッポラは彼を光と影で効果的に隠しながら撮影。即興的な会話の中で、カーツの狂気と威圧感を際立たせた。
- キルゴア中佐役のロバート・デュヴァルは、現場でのムードメーカーとしてキャストとスタッフを支えた。特に「朝のナパームの匂いが好きだ」のシーンでは、彼の堂々とした演技が現場全体を鼓舞した。
- ブランドはカーツのキャラクターに独自の解釈を持ち込み、コッポラと何度も議論を交わした。二人の対立はあったものの、最終的にブランドのアプローチがキャラクターに深みを与えた。
- 撮影の長期化と過酷な環境の中で、キャストたちは互いに支え合う絆を築いた。特にシーンとデュヴァルは、撮影を通じて友情を深め、後に別の作品で共演することもあった。
- 脚本や撮影スケジュールが何度も変更される中で、プロデューサーや撮影スタッフはコッポラを支え続けた。撮影監督ヴィットリオ・ストラーロは、ビジュアル面での助言を積極的に行い、作品のクオリティ向上に尽力。
- 撮影に必要なヘリコプターや兵士を提供してもらうため、コッポラはフィリピン政府と綿密に交渉。現地の軍事支援を得ることで、戦争のリアリティを再現できた。
- 過酷な撮影の間、コッポラの妻エレノアは夫を精神的に支え、彼女自身が現場の記録を撮影。後にこの記録は、ドキュメンタリー『ハーツ・オブ・ダークネス』として公開された。
- 端役で出演したフォードは、撮影中にコッポラと良好な関係を築き、後に彼の作品で重要な役割を果たす俳優となった。
- キャストと現地のエキストラの間で親密な交流が生まれ、文化や言語の壁を越えて映画制作が進行。特に戦闘シーンで協力した現地住民との連携が映画のリアリズムに貢献した。
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