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巴里のアメリカ人 An American in Paris 1951

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ガーシュウィンの名曲に乗せて踊るパリの街並み——アカデミー賞6部門を制覇したミュージカル映画の至宝!

名匠ヴィンセント・ミネリ監督と偉大なダンサーであるジーン・ケリーが組み、ジョージ・ガーシュウィンの名曲群を結実させたミュージカル映画の金字塔。

戦後の開放感あふれるパリを舞台に、画家を目指すアメリカ人青年と健気に生きるフランス人娘の恋の行方を、印象派絵画の世界観を散りばめた華麗な映像美とステップで美しく描き出します。

巴里のアメリカ人
An American in Paris
(アメリカ 1951)

[製作] アーサー・フリード/ロジャー・イーデンス
[監督] ヴィンセント・ミネリ
[原作] アラン・ジェイ・ラーナー
[脚本] アラン・ジェイ・ラーナー
[撮影] アルフレッド・ギルクス/ジョン・アルトン
[音楽]
ジョニー・グリーン/ソール・チャップリン/アイラ・ガーシュイン/ジョージ・ガーシュイン
[ジャンル] ミュージカル/恋愛
[受賞]
アカデミー賞 美術監督賞/撮影賞/衣装デザイン賞/作曲賞/作品賞/脚本賞
ゴールデン・グローブ賞 作品賞

キャスト

ジーン・ケリー
(ジェリー・マリガン)

レスリー・キャロン
(リズ・ブーヴィエ)

オスカー・レヴァント (アダム・クック)
ニナ・フォッシュ (ミロ・ロバーツ)
ジョルジュ・ギタリー (アンリ・バレル)


受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1952第24回アカデミー賞作品賞 / 脚本賞 / 撮影賞(カラー部門) / 美術賞 / 衣装デザイン賞 / 音楽賞受賞
1952第24回アカデミー賞監督賞 / 編集賞ノミネート

評価

色彩豊かなパリの街並みをスタジオ・セットで見事に再現し、映画表現とバレエ芸術の完璧な融合を果たした絢爛豪華な一作。 クライマックスに配置された17分間におよぶセリフ無しの「バレエ・シークエンス」は、映画史に残る圧巻の出来栄えと絶賛されています。

新星レスリー・キャロンの可憐な魅力とジーン・ケリーのダイナミックな振付、そしてガーシュウィンの洗練されたシンフォニーが見事に調和し、アカデミー賞作品賞に輝く快挙を成し遂げました。

あらすじ

第二次世界大戦が終わり、画家としての成功を夢見てパリの下町モンマルトルに留まり続ける元アメリカ兵のジェリー(ジーン・ケリー)。彼はピアニストのアダム(オスカー・レヴァント)や、フランス人歌手アンリ(ジョルジュ・ギタリー)と友情を育みながら気ままな貧乏生活を送っていた。

ある日、ジェリーの絵を気に入った裕福なアメリカ人女性ミロ(ニナ・フォック)が彼のパトロンとなり、個展を開く支援を約束する。しかしその夜、ジェリーは居酒屋で出会った可憐なフランス人娘リズ(レスリー・キャロン)にひと目で心を奪われてしまう。

幾度か会ううちに二人は互いに惹かれ合っていくが、リズには秘められた決意が存在した。彼女には戦時中の苦難を支えてくれた恩人であり、婚約者でもある人気歌手アンリの存在があったのだ。友情と情熱の狭間で、若者たちの恋は複雑に交錯していく。

アンリとの結婚のためにアメリカへ去る決意を固めたリズから別れを告げられ、ジェリーは絶望に打ちひしがれる。自室のベランダから見下ろす夜のパリの街並みを見つめる中、ジェリーの脳裏にはリズとともに踊る幻想的な世界が繰り広げられる。ロートレックやルノワールら印象派の名画をモチーフにした世界で、二人は「巴里のアメリカ人」の旋律に乗せて愛のバレエを踊り明かす。

幻想から目覚めたジェリーの前に、彼らの真の想いを知ったアンリが車でリズを送り届けてくる。恩義ではなく自分の心に正直に生きるよう促されたリズは、階段を駆け上がり、待っていたジェリーの胸へと飛び込む。二人は固く抱き合い、夜のパリを見下ろしながら溢れる喜びとともに愛を確かめ合うのだった。


エピソード・背景

  • キャスティングのひらめきとレスリー・キャロンの抜擢
    ジーン・ケリーはパリのバレエ団で踊っていた当時18歳のレスリー・キャロンを偶然見出し、ヒロイン役に抜擢しました。英語が一切話せなかった彼女ですが、スクリーンデビュー作となった本作で一躍ハリウッドのトップスターへと登り詰めました。
  • 映画史を塗り替えた17分間の伝説的バレエシーン
    クライマックスの「巴里のアメリカ人」バレエ・シークエンスは、50万人ドル以上の予算と一ヶ月以上の撮影期間を費やして制作されました。名画の色彩や構図を完全に立体再現したこの美術とダンサーたちの肉体表現は、映画におけるミュージカル表現の極限として称賛されています。
  • ピアニスト役オスカー・レヴァントの怪演と多重合成
    劇中、ピアニストのアダムが夢の中でオーケストラの全パート(指揮者、ピアニスト、バイオリニスト、打楽器奏者など)を自分一人で演じ分ける「ラプソディ・イン・ブルー」の演奏シーンが存在します。当時の最先端映像技術を用いたコミカルで高度な多重合成カットとして有名です。
  • 全編MGMスタジオで再現された「パリ」
    フランス現地ロケは冒頭のわずかな実写カットのみで、映画の大部分はロサンゼルスのMGMスタジオ内に組み立てられた膨大なセットで撮影されました。現実のパリ以上に「アメリカ人が憧れる理想のパリ」の空気感が見事に作り出されています。
  • アカデミー賞作品賞を受賞したミュージカルの快挙
    本作は第24回アカデミー賞において、ミュージカル映画としては『ブロードウェイ・メロディー』(1929年)以来となる作品賞を受賞する偉業を達成しました。さらにジーン・ケリー自身にも、俳優・振付師・監督としての多大な功績を称えて特別賞が授与されました。

まとめ

終戦直後という時代の熱気の中で、アメリカ的躍動感とフランス的エレガンスが完璧な調和を見せた珠玉のミュージカルです。物語の骨組みはシンプルな古典的メロドラマでありながら、ガーシュウィンのジャズ感覚溢れる旋律と印象派絵画への敬意に満ちた美術演出によって、映画という媒体そのものを極上の視覚芸術へと昇華させています。

芸術家の葛藤や愛の選択というテーマを言葉ではなくダンスの躍動で語り尽くす構造は、ハリウッド黄金期が到達したミュージカル表現の極致と言えます。

〔シネマ・エッセイ〕

石畳の路地に響く軽やかなステップと、キャンバスの上で跳ねる鮮やかな絵の具——。街角のカフェから聴こえてくるピアノの音色には、戦後の光の中に生きる人々の自由への歓喜が満ちあふれているのではないでしょうか。

言葉にならない情熱をセリフではなく全身の躍動へと変え、絵画の世界を疾走していくラストのバレエ。ロートレックの描く影やルノワールの光の中を踊り抜ける二人の姿に、芸術と映画が見事に溶け合う一瞬の奇跡を目撃したような眩しさを覚えてしまいます。

たとえ現実の恋がほろ苦い選択を迫ろうとも、ダンスと音楽がもたらす多幸感はあらゆる切なさを包み込んでいく。セーヌ川の夜風を感じさせる美しい余韻の中に、私たちが映画を愛する理由のすべてが詰め込まれているのかもしれません。

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