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赤と黒 Le Rouge et le noir 1954

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野望と情熱に身を焦がす青年の愛と破滅——スタンダールの不朽の名作文学を映画化

名匠クロード・オータン=ララ監督が、フランスの名優ジェラール・フィリップを主演に迎えて描いた文芸ドラマの傑作。

19世紀初頭の社会変動期を舞台に、野心を胸に階級の壁へ挑んだ貧しい木こりの息子が、二人の対照的な女性との愛を通じて辿る波乱に満ちた愛憎と破滅のドラマを描き出す。

赤と黒
Le Rouge et le noir
(フランス・イタリア 1954)

[監督] クロード・オータン・ララ
[原作] スタンダール
[脚本] ジャン・オーランシュ/ピエール・ボスト/クロード・オータン・ララ
[撮影] ミシェル・ケルベール
[音楽] ルネ・クロエレック
[ジャンル] ドラマ

キャスト

ジェラール・フィリップ
(ジュリアン・ソレル)

ダニエル・ダリュー
(レナル夫人)

アントネッラ・ルアルディ (マチルド)
ジャン・メルキューレ (マルキス)
ジャン・マルティメッリ (M・ド・レナル)
アンナ・マリア・サンドリ (エリザ)




受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1955フランス映画批評力協会賞最優秀作品賞受賞

評価

スタンダールの同名名作小説を、名匠クロード・オータン=ララが鮮烈な色彩美と重厚なドラマ性で映像化した名作です。

主人公ジュリアン・ソレルを演じたジェラール・フィリップの眉目秀麗な容姿と狂気を孕んだ繊細な演技、独立した強い意志を持つレナール夫人を演じたダニエル・ダリューの気品あふれる美しさが高く評価されています。1950年代フランス文芸映画黄金期を代表する作品として今なお語り継がれています。

あらすじ

王政復古期のフランス。野心に燃える貧しい木こりの息子ジュリアン・ソレル(ジェラール・フィリップ)は、ラテン語の才能を買われてレナール市長(ジャン・マルティネッリ)の家の家庭教師として雇われる。

ジュリアンは、町の権力者たちへの復讐心と野心から、市長の美しく信仰深い妻レナール夫人(ダニエル・ダリュー)に接近。二人は周囲の目を盗んで激しい情事へと身を投じていく。しかし不倫が発覚しそうになり、ジュリアンはピラール神父(アントワーヌ・バルペトレ)の推薦で神学校を経て、パリの権力者ラ・モール侯爵(ジャン・メルキュール)の秘書となる。

パリの上流社会で頭角を現したジュリアンは、侯爵の気高き娘マチルド(アントネッラ・ルアルディ)をも持ち前の美貌と知性で魅了し、彼女を身ごもらせて貴族の称号と地位を手に入れようとするのだった。

マチルドとの結婚により、望み通りの地位を手に入れかけたジュリアン。しかし、罪悪感と情念に駆られたレナール夫人が、ジュリアンの出世欲を告発する手紙をラ・モール侯爵へ送ったことで婚約は破談となる。

野望を打ち砕かれ激怒したジュリアンは故郷の教会へ向かい、祈りを捧げていたレナール夫人に向けて拳銃を発砲。負傷させた罪で逮捕され、死刑判決を受ける。

牢獄を訪れたレナール夫人と再会したジュリアンは、自分が本当に愛していたのは地位や名声ではなく彼女だけであったことに気づく。ジュリアンは潔く断頭台で処刑され、彼の死後、絶望したレナール夫人も後を追うように息を引き取るのだった。

エピソード・背景

  • 名優ジェラール・フィリップのハマリ役
    主人公ジュリアン・ソレルを演じたジェラール・フィリップは、原作のイメージそのものだと絶賛されました。野心と脆さを併せ持つ青年像を見事に体現し、彼の代表作の一つとなっています。
  • タイトル「赤と黒」が象徴する二つの野望
    タイトルの「赤」は軍服(軍人としての成功)、「黒」は修道服(聖職者としての出世)を意味しています。ナポレオン失脚後のフランスで、下層階級の青年が成り上がるための二つの道を示しています。
  • 名脚本家コンビによる原作の巧みな凝縮
    長編小説を映画化するにあたり、ジャン・オーランシュとピエール・ボストの脚本家コンビが二人の対照的な女性(レナール夫人とマチルド)との愛憎を軸に整理し、ドラマ性を高めました。
  • 大女優ダニエル・ダリューとの共演
    レナール夫人役のダニエル・ダリューは、気品と情熱を兼ね備えた演技で作品の品格を支え、年下のジュリアンとの背徳的かつ純粋な愛を表現しました。
  • 美術監督マックス・ドゥーイの豪華セット
    1950年代フランス映画界を代表する美術監督マックス・ドゥーイが手がけた上流社会の豪華なセットやイーストマンカラーの映像美が、重厚な世界観を作り出しています。

まとめ

階級社会の壁に挑んだ一人の青年の野望と、二つの愛の狭間で揺れる人間性を鮮烈に描いたラブロマンスの至高の名作です。情熱の果てに自らの真実の愛へと辿り着くジュリアンの儚い生涯が、重厚な映像美とともに深い余韻を残します。

〔シネマ・エッセイ〕

ステンドグラスから差し込む静かな光と、密かに交わされる熱い指先の触れ合い。野望に燃える青年の瞳に映る情熱の影が、階級という冷たい壁を越えて観る者の胸へと忍び寄ってきます。

地位や権力を追い求めながらも、真実の愛に翻弄されるジュリアンの不器用な生き様が、激しい愛憎劇以上に私の心を強く揺さぶります。己の野望のために立ち回りながら、ただ一人の女性の存在によって崩れ去っていく脆さと儚さ。愛と憎しみの狭間で葛藤する姿には、愚かしくも美しい人間の純粋さが漂っています。

断頭台を前に、すべてを脱ぎ捨てて心の平穏を取り戻すラストシーン。死の影が迫る牢獄でようやく触れ合った真実の愛の温もりに、偽りの栄華を超えた永遠の輝きを感じずにはいられません。

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