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アンネの日記 The Diary of Anne Frank 1959 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】| ミリー・パーキンス

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隠れ家に灯った希望の火。13歳の少女が綴った「人間への信頼」を、巨匠ジョージ・スティーヴンスが厳粛に描き出した感動作。

ナチスの占領下、アムステルダムの隠れ家で過ごした2年余り。死の恐怖と隣り合わせの極限状態にありながら、思春期の瑞々しい感性で世界を愛し続けた少女アンネ・フランクの記録。ジョージ・スティーヴンス監督が、モノクロのワイド画面(シネマスコープ)を駆使し、閉ざされた空間での息詰まる緊張感と、失われることのなかった人間の尊厳を克明に描き出す。

アンネの日記
The Diary of Anne Frank
(アメリカ 1959)

[製作] ジョージ・スティーヴンス/ジョージ・スティーヴンス・ジュニア
[監督] ジョージ・スティーヴンス
[原作] アンネ・フランク
[脚本] フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット
[撮影] ウィリアム・C・メラー
[音楽] アルフレッド・ニューマン
[ジャンル] ドラマ/実話/戦争
[受賞]
アカデミー賞 助演女優賞(シェリー・ウィンタース)/美術監督賞/撮影賞
ゴールデン・グローブ賞 国際評価作品賞

キャスト

ミリー・パーキンス
(アンネ・フランク)

シェリー・ウィンタース
(ペトロネラ・ヴァン・ダーン夫人)

ダイアン・ベイカー
(マーゴット・フランク)

ジョセフ・シルドクラウト (オットー・フランク)
リチャード・ベイマー (ピーター・ヴァン・ダーン)
グスティ・フーバー (イーディス・フランク)

ルー・ジャコビ
(ハンス・ヴァン・ダーン)

ダグラス・スペンサー (ハリー・クレイラー)
ドディ・ヘス (ミープ)
エド・ウィン (アルバート・デュッセル)

受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1960第32回アカデミー賞助演女優賞(シェリー・ウィンタース)受賞
1960第32回アカデミー賞撮影賞(白黒部門)受賞
1960第32回アカデミー賞美術賞(白黒部門)受賞
1960第32回アカデミー賞作品賞・監督賞ノミネート

評価

第二次大戦中、米軍の通信兵としてダッハウ強制収容所の惨状を直接目撃したジョージ・スティーヴンス監督が、並々ならぬ決意で映画化した一作です。通常、狭い空間の撮影には向かないとされるワイド画面をあえて採用し、隠れ家の「閉塞感」と、そこに集まった8人の「人間関係の密度」を際立たせました。

悲劇的な結末を知る観客に対し、アンネの明るい歌声や恋心がもたらすカタルシスは凄まじく、ホロコーストという巨大な歴史を、一人の少女の視点から描いたヒューマニズムの金字塔として高く評価されています。


あらすじ:屋根裏に響く、自由への鼓動

1942年、アムステルダム。ユダヤ人狩りから逃れるため、フランク一家とファン・ダーン一家、そして歯科医のデュッセルは、ある建物の隠れ家に身を寄せる。13歳のアンネ(ミリー・パーキンス)は、父オットー(ジョセフ・シルドクラウト)から贈られた日記帳に、そこでの窮屈な生活や大人たちへの不満、そして孤独を綴り始める。

窓を開けることも、昼間に物音を立てることも許されない日々。食糧不足や空襲の恐怖に晒されながらも、アンネは同居する少年ピーター(リチャード・ベイマー)と淡い恋を育み、いつか自由の身になって作家になる夢を抱き続ける。しかし、終戦の足音が近づく1944年、隠れ家に不審な物音が響き、ついにドイツ警察の手が伸びる。


1945年、戦争が終わり、収容所からただ一人生還した父オットーが隠れ家を再訪する。彼はそこで、友人ミープ(ドディ・ヘス)が保管していたアンネの日記を受け取る。

日記の最後には、アンネの有名な一節が記されていた。「いろいろなことがあっても、私は今でも信じている。人間の本心は善なのだということを」。アンネ自身はベルゲン・ベルゼン収容所でチフスにより15歳の若さで亡くなっていたが、彼女の言葉と精神は日記の中で永遠の命を得た。オットーが日記を閉じ、遠くを見つめる静かなラストシーンは、失われた多くの命への鎮魂と、彼女が遺した希望の重さを観客に突きつける。


エピソード・背景

  • シェリー・ウィンタースの執念
    助演女優賞を受賞した彼女は、役作りのために体重を10kg以上増やし、強制収容所での過酷さを表現するために撮影後にはそれを急激に落としました。彼女は受賞したオスカー像を、「アンネの精神を忘れないために」とアムステルダムのアンネ・フランクの家に寄贈しました。
  • オーディションを勝ち抜いたミリー・パーキンス
    1万枚以上の写真の中から選ばれたミリー。演技経験はほとんどありませんでしたが、その汚れなき瞳と繊細な佇まいがアンネそのものだと絶賛されました。
  • オットー・フランクの協力と苦悩
    監督はアンネの父オットーに何度も相談を持ちかけましたが、彼は愛する家族の悲劇を再現することに当初は難色を示しました。最終的に協力に応じた彼は、完成した映画の試写を観て、娘を演じたミリーの姿に涙が止まらなかったと言われています。
  • 細部まで再現された「隠れ家」
    美術賞を受賞したセットは、アムステルダムの実物を寸分違わぬサイズで再現。あまりにリアルで狭いセット内での撮影は俳優たちの精神にも影響を与え、劇中の張り詰めた空気感を生み出す一因となりました。
  • アルフレッド・ニューマンの荘厳な音楽
    悲劇を煽るのではなく、アンネの純真さと宗教的な敬虔さを象徴するような、気高く美しい旋律が映画を支えています。
  • 監督が封印した「収容所」の描写
    ジョージ・スティーヴンスは、収容所の実態を誰よりも知っていたからこそ、あえて映画の中でそこを描かず、「隠れ家」での生活を瑞々しく描くことで、奪われた日常の尊さを強調しました。
  • 影の撮影監督ジャック・カーディフ
    室内シーンはウィリアム・C・メラーが担当しましたが、オープニングとラストのアムステルダムのロケ映像は名匠ジャック・カーディフが担当し、物語に深い奥行きを与えています。

まとめ:作品が描いたもの

本作が映し出しているのは、歴史の残酷さそのものではなく、その残酷さに「屈しなかった精神」です。アンネが日記に綴ったのは、狭い屋根裏から見上げた空の青さであり、人を愛することの喜びでした。

ジョージ・スティーヴンス監督は、彼女の命が消えたという事実を描きつつも、彼女の言葉が今なお世界を照らし続けているという「勝利」を強調しました。不自由な環境にあっても心はどこまでも自由であれる。その尊い真実が、観る者の心に静かな、しかし消えない灯をともします。


〔シネマ・エッセイ〕

モノクロの画面の中で、日記に向かうミリー・パーキンスのペン先が刻む音。それが、外の世界で鳴り響くサイレンや足音よりもずっと力強く、生への執着として響いてきます。あんなに狭い隠れ家で、どうしてこれほどまでに豊かな言葉が溢れ出たのか。彼女が夢見た「将来」が、理不尽な憎しみによって断ち切られてしまった事実に、私たちは改めて深く打ちのめされます。

けれど、ピーターと過ごした屋根裏の小さな窓から差し込む光。そこで交わされた不器用な接吻。それらはどんな銃声よりも気高く、美しい。

父オットーがアンネの日記を抱きしめるラストシーン。彼女の肉体は土に還っても、その魂は言葉となって今も私たちのすぐ隣で呼吸しています。「人間は本来、善である」という言葉を、あのような地獄の中で記した少女の勇気。スクリーンの灯が消えた後、私たちは自分たちの生きる世界を、少しだけ違う優しさを持って眺めずにはいられなくなるのです。

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