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イヴの総て All About Eve 1950 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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喝采の裏側に潜む、若き野心と老いゆく孤独。ジョセフ・L・マンキーウィッツが暴き出した、女たちの華麗なる毒。

ブロードウェイの大女優マーゴの前に現れた、慎ましやかな熱狂的ファン、イヴ。彼女の献身的な態度は周囲の信頼を勝ち取っていくが、その裏には主役の座を狙う恐るべき計算と野心が隠されていた。

洗練された辛辣なセリフ回しと、演劇界の虚飾を剥ぎ取る冷徹な視線。アカデミー賞最多14部門ノミネートを記録し、ハリウッド映画史上最も完璧な脚本の一つと称えられる至高の人間ドラマ。

イヴの総て
All About Eve
(アメリカ 1950)

[製作] ダリル・F・ザナック
[監督] ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
[原作] メアリー・オール
[脚本] ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
[撮影] ミルトン・クラスナー
[音楽] アルフレッド・ニューマン
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 助演男優賞(ジョージ・サンダース)/衣装デザイン賞/監督賞/作品賞/音響賞/脚本賞
英国アカデミー賞 オリジナル作品賞
カンヌ映画祭 主演女優賞(ベティ・デイヴィス)/審査員特別賞
ゴールデン・グローブ賞 脚本賞
NY批評家協会賞 主演女優賞(ベティ・デイヴィス)/監督賞/作品賞

キャスト

ベティ・デイヴィス
(マーゴ・チャニング)

アン・バクスター
(イヴ・ハリントン)

ジョージ・サンダース
(アディソン・ドウィット)

セレスト・ホルム
(カレン・リチャーズ夫人/ナレーター)

ゲイリー・メリル (ビル・サンプソン)
ヒュー・マーロウ (ロイド・リチャーズ)
グレゴリー・ラトフ (マックス・ファビアン)
バーバラ・ベイツ (フィービー)

マリリン・モンロー
(クラウディア・カスウェル)

テルマ・リッター (バーディ・クーナン)
エディ・フィッシャー (男)



受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1951第23回アカデミー賞作品賞/監督賞/脚本賞/助演男優賞(ジョージ・サンダース)/衣裳デザイン賞/録音賞受賞
1951第4回カンヌ国際映画祭審査員特別賞/女優賞(ベティ・デイヴィス)受賞
1951第8回ゴールデングローブ賞脚本賞受賞

評価

演劇界という特殊な迷宮を舞台に、人間の「野心」と「自己愛」をこれほどまでに残酷かつ優雅に描き出した作品は他にありません。監督・脚本のマンキーウィッツによる文学的でウィットに富んだダイアログは、登場人物たちの知性と狡猾さを際立たせています。

特にベティ・デイヴィスが見せる、老いへの不安と女王のプライドが入り混じった熱演は、彼女のキャリアを代表する金字塔として、今なお多くの女優たちの指針となっています。


あらすじ:純真な顔をした「毒」の侵食

ブロードウェイの頂点に君臨するマーゴ(ベティ・デイヴィス)は、楽屋口で出待ちをしていた貧しい娘イヴ(アン・バクスター)を、その熱意に負けて付き人として雇い入れる。イヴは献身的に立ち回り、マーゴや劇作家、演出家たちの心を掴んでいく。

しかし、イヴの正体は、嘘を重ねて演劇界への階段を駆け上がろうとする狡猾な野心家だった。彼女は次第にマーゴの地位を脅かし、代役の座を手に入れ、批評家のアディソン(ジョージ・サンダース)をも利用して、ついに主役の座を奪い取る。


イヴは念願の演劇賞を受賞し、誰もが羨むスターの座を手にする。しかし、彼女の過去の嘘を見抜いていたアディソンに弱みを握られ、彼の支配下に入るという皮肉な代償を払う。

物語の幕切れ、疲れ果てて帰宅したイヴの前に、かつての自分と同じように、彼女を崇拝する若きファンが現れる。イヴが眠っている間に、その少女はイヴの衣装を身に纏い、鏡の前で喝采を浴びる空想に耽る。野心の連鎖は止まることなく、新たな「イヴ」が誕生する不穏な予兆を残して映画は終わる。


エピソード・背景

  • ベティ・デイヴィスの起死回生
    キャリアが低迷していた彼女だが、クロデット・コルベールの降板により回ってきたこの役で、見事にトップスターの座を奪還した。
  • マリリン・モンローの初期出演
    アディソンの連れ、カズウェル嬢役で出演。まだ無名に近かったが、その存在感はすでに群を抜いていた。
  • 驚異のアカデミー賞記録
    作品賞、監督賞、脚本賞の主要部門を独占。合計14ノミネートという記録は、後に『タイタニック』や『ラ・ラ・ランド』に並ばれるまで破られなかった。
  • ジョージ・サンダースの知的な悪役
    冷笑的な批評家を演じたサンダースは、その卓越した演技で助演男優賞を獲得。彼なしではこの映画の毒気は完成しなかった。
  • 衣裳の魔法
    イーディス・ヘッドによる衣裳は、マーゴの貫録とイヴの変貌を雄弁に物語っており、オスカー受賞も納得の完成度を誇る。

まとめ:作品が描いたもの

本作は、華やかな舞台の袖で繰り広げられる、女たちの熾烈な権力闘争と世代交代を記録した一級の心理劇でした。「今夜は荒れるわよ。シートベルトを締めて(Fasten your seatbelts)」という劇中の名セリフ通り、観客は人間の醜い本性が剥き出しになる嵐の中へと誘われます。

最後に見せる鏡の中の少女の姿は、栄光がいかに脆く、そして残酷に繰り返されるものであるかを、言葉以上に鋭く突きつけているのです。


〔シネマ・エッセイ〕

パーティーの喧騒の中、酒杯を手に毒づくベティ・デイヴィスの、あの剥き出しの背中と刺すような視線。彼女が放つ言葉のナイフは、自分自身さえも傷つけてしまうほどの鋭さを秘めています。対するアン・バクスターの、計算し尽くされた「従順な眼差し」が次第に冷徹な野心へと色を変えていく様には、背筋が凍るような恐怖を感じてなりません。

アディソンという冷笑的な観察者が、イヴの正体を暴き、彼女を自分の籠の中に閉じ込める瞬間の、あの甘美なまでの残酷さ。結局のところ、スポットライトを浴びる者は、常に誰かの視線という檻に囚われているのかもしれません。

鏡の中、何人にも増殖して見える少女の残像。あれはイヴの未来であり、そしてかつてのマーゴの姿でもあったのでしょう。映画が終わった後、煌びやかな劇場を後にする時、私たちは暗闇の中に潜む無数の「イヴ」たちの視線を、どこか背中に感じずにはいられなくなるはずです。

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