グローリー
Glory
(アメリカ 1989)
[製作] フレディ・フィールズ/ピーター・ジャン・ブルッジ/サラ・カプラン/P・K・フィールズ/レイ・ハーベックJr.
[監督] エドワード・ズウィック
[原作] ロバート・ゴールド・ショー/リンカーン・カースタイン/ピーター・バーチャード
[脚本] ケヴィン・ジェール
[撮影] フrディ・フランシス
[音楽] ジェームズ・ホーナー
[ジャンル] ドラマ/戦争/歴史
[受賞]
アカデミー賞 助演男優賞(デンゼル・ワシントン)/撮影賞/音響賞
ゴールデン・グローブ賞 助演男優賞(デンゼル・ワシントン)
キャスト

マシュー・ブロデリック
(ロバート・グールド・ショー大佐)

デンゼル・ワシントン
(トリップ)

ケイリー・エルウェス
(カボット・フォーブス少佐)

モーガン・フリーマン
(ジョン・ローリンズ)
ジミー・ケネディ (ジュピター・シャーツ)
アンドレ・ブラウアー (トーマス・シールズ)
ジョン・フィン (マルカイ)
ドノヴァン・リッチ (チャールズ・フェセンドン・モース)
JD・カラム (ヘンリー・スタージス・ラッセル)
アラン・ノース (ジョン・アルビオン・アンドリュー)
ボブ・ガントン (ハーカー将軍)
クリフ・デ・ヤング (ジェームズ・M・モンゴメリー大佐)

ジェイ・O・サンダース
(ジョージ・クロケット・ストロング将軍)
ストーリー
南北戦争真っ只中のアメリカ。北軍の若き将校ロバート・グールド・ショーは、ボストンの名家出身でありながら、黒人だけで構成されるアメリカ史上初の部隊「第54マサチューセッツ歩兵連隊」の指揮官に任命される。
集まったのは、自由を求めて逃げ出してきた元奴隷のトリップ、教養ある自由黒人のトーマス、部隊の父親的存在であるローリンズなど、背景も性格もバラバラな男たちだった。ショーは彼らを一人前の兵士に育てようと猛訓練を課すが、軍上層部は彼らを「労働力」としか見なさず、靴すら支給されないという過酷な差別に直面する。トリップはそんな現状に反発し、部隊内に緊張が走ることもあったが、ショー自身が軍の不正に立ち向かい、彼らと同じ条件で戦う姿勢を見せたことで、兵士たちとの間に固い絆が芽生えていく。
ようやく実戦の機会を得た彼らだったが、待っていたのは「難攻不落」と言われる南軍のワグナー要塞への突撃任務だった。生還の可能性が極めて低いことを知りながら、ショーと兵士たちは自ら先陣を切ることを志願する。決戦の前夜、彼らは焚き火を囲み、自らの人生と信仰、そして自由への願いを歌と祈りに込めて分かち合った。
1863年7月18日、夕闇に包まれた砂浜で突撃が始まる。ショー大佐は先頭に立って剣を振るい、要塞の壁を越えた直後に凶弾に倒れる。軍旗を掲げていた兵士も倒れるが、かつて「軍旗なんて守る価値がない」と吐き捨てていたトリップが、その旗を高く掲げ直し、雄叫びと共に敵陣へ飛び込んでいく。激しい戦闘の末、連隊の半数以上が戦死するという凄惨な結末を迎えるが、彼らの勇敢な戦いぶりは全米に報じられた。最後、ショーとトリップの遺体が区別されることなく同じ穴に葬られるシーンは、彼らが戦場において、真の意味で「対等な人間」として認められたことを象徴し、深い感動と共に幕を閉じる。
エピソード・背景
- デンゼル・ワシントンの魂の演技
トリップが背中を打たれる罰を受けるシーンで、彼の目から一筋の涙がこぼれ落ちるのは、演技を超えた本物の感情だったと言われています。この圧倒的な演技で、彼は自身初のアカデミー助演男優賞に輝きました。 - マシュー・ブロデリックの変貌
当時『フェリスはある朝突然に』などの青春スターの印象が強かった彼ですが、若くして重責を担い、苦悩しながら成長していくショー大佐を等身大で演じきり、役者としての新境地を開きました。 - モーガン・フリーマンの安定感
部隊を精神的に支えるローリンズ役。彼がそこにいるだけで、映画全体に一本の太い芯が通るような重厚な存在感は、さすが名優といったところです。 - 歴史に忠実な描写
撮影には、南北戦争の再現(リナクトメント)を趣味とする数千人のボランティアが参加しました。当時の制服や武器、戦術が驚くほど正確に再現されており、映像のリアリティを極限まで高めています。 - ジェームズ・ホーナーの音楽
少年合唱団の歌声を活かした壮大なスコアは、悲劇的な物語の中に神聖さと希望を感じさせます。映画音楽史上でも屈指の名盤として語り継がれています。 - 「グローリー(栄光)」の意味
勝利することではなく、人としての尊厳を勝ち取るために命を懸けた彼らの姿こそが「真の栄光」であるというテーマが、タイトルに込められています。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、南北戦争という歴史の転換点において、名もなき黒人兵士たちが自らの「人間としての価値」を証明するために戦った壮絶な記録です。彼らが向き合った敵は、目の前の南軍だけでなく、北軍内部に蔓延する根深い人種差別でもありました。
しかし、物語が進むにつれて描かれるのは、人種や階級を超えて共有される「誇り」と「友情」の物語です。若きエリート将校ショーと、自由を渇望する元奴隷トリップ。正反対の二人が、最後には一つの信念の下で共に倒れる姿は、自由がどれほど尊く、そして大きな犠牲の上に成り立っているかを痛烈に描き出します。凄惨な戦場描写の果てにある、静かで崇高なラストシーンは、今を生きる私たちに「人間の尊厳とは何か」を力強く問いかけ続ける、不朽の名作です。


