レイ・ミランド
Ray Milland

1907年1月3日、イギリス・ウェールズ生まれ。
1986年3月10日、アメリカ・カリフォルニア・トランスで死去(肺ガン)。享年79歳。
身長185cm。
22歳の時スクリーン・デビュー。
「失われた週末」で認められる。
100本以上の作品に出演した。
今回ご紹介するのは、端正な英国紳士のイメージを自ら打ち破り、アルコール依存症の凄絶な演技でオスカーを手にした名優、レイ・ミランドです。
彼は、初期の軽快なコメディや二枚目役で人気を博しながらも、満足することなく演技の深淵へと足を踏み入れました。ビリー・ワイルダー監督の『失われた週末』で見せた、理性を失い堕ちていく男の姿は、当時の観客に強烈な衝撃を与え、ハリウッドにおける「演技」の概念そのものを変えたと言っても過言ではありません。
洗練された都会的な魅力と、人間の心の闇を覗き込むような鋭さを併せ持った彼は、長いキャリアを通じて監督業にも挑戦するなど、飽くなき探究心を持ち続けた真の表現者でした。
洗練の奥底に潜む真実。レイ・ミランド、知性と情熱の航跡
レイ・ミランドの魅力は、完璧に整えられた身のこなしの裏側に、脆さや狂気を滲ませる卓越した表現力にあります。
彼はウェールズ出身という誇りを持ち、ハリウッドの喧騒の中でも常に一歩引いたような冷静な知性を漂わせていました。ヒッチコック作品で見せた計算高い悪役から、後年のホラー映画で見せた怪演まで、その一貫した「品格」は、どんなに堕落した役柄を演じても失われることがありませんでした。
自らのイメージを固定されることを嫌い、常に挑戦的な役を選び続けたその姿勢は、多くの後進俳優たちにとっての指針となりました。
- ✦ PROFILE & BACKGROUND
- 🏆 主な功績・活動
- 1. 冒険への誘い:ボー・ジェスト(1939)
- 2. 墜ちていく魂:失われた週末(1945)
- 3. 知的な犯罪:ダイヤルMを廻せ!(1954)
- 4. 歪んだ執着:X線の眼を持つ男(1963)
- 5. 黄昏の輝き:ある愛の詩(1970)
- 📜 レイ・ミランドを巡る知られざるエピソード集
- 📝 まとめ:時代の変遷とともに歩んだ孤高の表現者
- 1934 年 27 歳
- 1935 年 28 歳
- 1936 年 29 歳
- 1937 年 30 歳
- 1939 年 32 歳
- 1940 年 33 歳
- 1941 年 34 歳
- 1942 年 35 歳
- 1943 年 36 歳
- 1944 年 37 歳
- 1945 年 38 歳
- 1947 年 40 歳
- 1948 年 41 歳
- 1949 年 42 歳
- 1950 年 43 歳
- 1951 年 44 歳
- 1952 年 45 歳
- 1953 年 46 歳
- 1954 年 47 歳
- 1955 年 48 歳
- 1956 年 49 歳
- 1957 年 50 歳
- 1959 年 52 歳
- 1962 年 55 歳
- 1963 年 56 歳
- 1970 年 63 歳
- 1971 年 64 歳
- 1972 年 65 歳
- 1973 年 66 歳
- 1974 年 67 歳
- 1975 年 68 歳
- 1976 年 69 歳
- 1977 年 70 歳
- 1978 年 71 歳
- 1979 年 72 歳
- 1980 年 73 歳
- 1982 年 75 歳
- 1983 年 76 歳
✦ PROFILE & BACKGROUND
- 本名:レジナルド・アルフレッド・ジョン・トランド
- 生涯:1907年1月3日 ~ 1986年3月10日(享年79歳)
- 出身:イギリス・ウェールズ、ニース
- 背景:イギリス海軍の近衛騎兵連隊に所属していたという異色の経歴を持ち、射撃や乗馬の達人でもありました。1920年代後半に映画界入りし、1930年代にはパラマウント映画のトップスターとして君臨しました。
- 功績:1945年『失われた週末』でアカデミー主演男優賞を受賞。同作でカンヌ国際映画祭の男優賞も受賞しています。ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームには、映画とテレビの両部門で星が刻まれています。
🏆 主な功績・活動
| 年 | 出来事 | 備考 |
| 1934 | 『恋の凱歌』で注目を集める | ハリウッドでの出世作 |
| 1942 | 『絶海の嵐』公開 | セシル・B・デミル監督の大作に出演 |
| 1945 | 『失われた週末』公開 | アカデミー主演男優賞を受賞 |
| 1954 | 『ダイヤルMを廻せ!』公開 | ヒッチコック作品で知的な悪役を熱演 |
| 1955 | 『陰謀のリスボン』で監督業に進出 | 出演兼監督として多才さを発揮 |
1. 冒険への誘い:ボー・ジェスト(1939)
外人部隊に身を投じる三兄弟の末弟を演じた、冒険映画の古典です。ゲイリー・クーパーらと肩を並べ、砂漠を舞台にした壮大な人間ドラマの中で、若々しくも気品ある姿を見せました。この作品の成功により、彼は「信頼できる二枚目俳優」としての地位を不動のものにしました。
2. 墜ちていく魂:失われた週末(1945)
アルコール依存症に苦しむ作家を、文字通り心身を削って演じた代表作です。当時のハリウッドではタブー視されていた「依存症の醜さ」をリアルに描き出し、オスカー像を手にしました。あまりの迫真の演技に、酒造メーカーの団体が映画の買い取り(お蔵入り)を画策したという逸話が残るほどの社会現象となりました。
3. 知的な犯罪:ダイヤルMを廻せ!(1954)
アルフレッド・ヒッチコック監督による密室サスペンスの傑作です。妻の殺害を完璧な計画で企てる夫を演じました。冷徹でいながら、どこか優雅さを失わないその佇まいは、観客に「悪役への共感」さえ抱かせるほど。彼の英国紳士的な風貌が、犯罪の陰湿さをより際立たせた見事な配役でした。
4. 歪んだ執着:X線の眼を持つ男(1963)
キャリア後半、B級映画の帝王ロジャー・コーマン監督と組んだSFホラーです。自らの眼を改造し、世界の真実を見ようとして狂気に陥る科学者を熱演。大御所俳優でありながら、こうしたジャンル映画にも全力で取り組む柔軟性と、圧倒的な説得力で作品の質を引き上げました。
5. 黄昏の輝き:ある愛の詩(1970)
主人公オリバーの厳格な父親を演じました。かつての二枚目スターが、息子との確執に悩む保守的な父を重厚に演じる姿は、時代の移り変わりを感じさせるとともに、俳優としての円熟味を観客に印象付けました。短い出演時間ながら、物語の骨格を支える重要な役割を果たしました。
📜 レイ・ミランドを巡る知られざるエピソード集
1. 妻マラル・シャープとの「54年間の献身」
1932年にマラル・シャープと結婚。ハリウッドのスターとしては珍しく、1986年に彼が亡くなるまで54年間、一度もスキャンダルなく連れ添った理想的な夫婦でした。人気絶頂期も、彼は仕事が終わるとすぐに家に帰り、妻と過ごす時間を大切にしました。この安定した私生活こそが、彼が長年トップスターとして走り続けられた最大の理由でした。
2. グレース・ケリーとの「許されざる噂」
唯一、彼の潔白な経歴に影を落としたのが、『ダイヤルMを廻せ!』で共演したグレース・ケリーとの噂でした。当時、若き美貌のグレースがミランドに夢中になり、二人の関係が噂されましたが、ミランドは沈黙を貫き、家庭を守り通しました。この一件で、彼は「ミステリアスな大人の男」としての深みを増したとも言われています。
3. 役作りのための「リアルな孤独」
『失われた週末』の撮影前、彼はアルコール依存症の恐怖を理解するため、実際に精神病院の閉鎖病棟で一晩過ごしました。そこで見た光景や患者たちの叫びが、あの震えるような演技の源泉となりました。また、撮影中は食事を制限して体重を落とし、酒焼けした肌を作るために不摂生な生活を自らに課すなど、メソッド演技の先駆けのような徹底ぶりを見せました。
4. オスカーの「皮肉な行方」
アカデミー賞を受賞した際、彼はスピーチで「この賞をくれた皆さんに感謝します。でも、私はこの映画を撮ってからというもの、どこへ行ってもお酒を一杯もご馳走してもらえなくなりました」とジョークを飛ばし、会場を沸かせました。役柄のイメージがあまりに強烈だったため、彼=酒飲みという誤解を逆手に取った紳士的な対応でした。
5. 監督としての情熱と「リスボン」
1950年代、彼は俳優業だけでなく監督業にも情熱を注ぎました。特に自ら主演も務めた『リスボン』などの作品では、美しい風景描写と緊迫感のある演出を両立させ、批評家からも高く評価されました。「俳優は駒に過ぎないが、監督はチェスを指す側だ」と語り、映画制作の全容を把握することに喜びを見出していました。
6. 趣味は「深海」と「ヨット」
海軍出身の彼は、生涯を通じて海を愛しました。週末には自らヨットを操り、太平洋へと繰り出すのが何よりのリフレッシュでした。ハリウッドの虚飾にまみれたパーティーよりも、荒波の中で自然と向き合う時間を好んだ彼の自立心は、その気高い演技の根底に流れる「個の強さ」に繋がっていました。
📝 まとめ:時代の変遷とともに歩んだ孤高の表現者
ハリウッドの黄金期からニューシネマの時代、そして個性豊かなジャンル映画への進出まで、劇的な変化を遂げる映画界を軽やかに泳ぎ切った歩みでした。
最愛の妻マラルとの穏やかな家庭を守りながらも、スクリーンでは人間の極限の弱さや冷徹な狂気を描き出す。その対照的な生き方は、彼の中にあったプロフェッショナルとしての矜持そのものでした。どの時代にあっても、彼にしか出せない気品と説得力は、作品に確かな重みを与え続けました。
子役時代の二枚目役に安住せず、自らの才能を削り取って真実を追い求めた、情熱と知性に満ちた映画人生を全うしました。
[出演作品]
1934 年 27 歳
恋と胃袋 We’re Not Dressing
ボレロ Bolero
1935 年 28 歳
輝ける百合 The Gilded Lily
ガラスの鍵 The Glass Key
1936 年 29 歳
結婚設計図 Next Time We Love
宝石と女賊 The Return of Sophie Lang
天使の花園 Three Smart Girls
ジャングルの女王 The Jungle Princess
1937 年 30 歳
ホノルル航空隊 Wings Over Honolulu
街は春風 Easy Living
底抜けトップガール作戦 Wise Girl
1939 年 32 歳
ジャングルの恋 Her Jungle Love
セニョリタ Tropic Holiday
翼の人々 Men with Wings
1940 年 33 歳
囁きの木陰 Arise, My Love
1941 年 34 歳
空の要塞 I Wanted Wings
ひばり Skylark
1942 年 35 歳
絶海の嵐 Reap the Wild Wind
少佐と少女 The Major and the Minor
1943 年 36 歳
提督の館 Forever and a Day
クリスタル・ボール The Crystal Ball
1944 年 37 歳
呪いの家 The Uninvited
恐怖省 Ministry of Fear
1945 年 38 歳
1947 年 40 歳
カリフォルニア California
黄金の耳飾り Golden Earrings
1948 年 41 歳
大時計 The Big Clock
夜霧の誘惑 Alias Nick Beal
1949 年 42 歳
春の珍事 It Happens Every Spring
1950 年 43 歳
特ダネ女史 A Woman of Distinction
銅の谷 Copper Canyon
1951 年 44 歳
黒い傷 Circle of Danger
生きるためのもの Something to Live For
1952 年 45 歳
午後の喇叭 Bugles in the Afternoon
1953 年 46 歳
炎の館 Jamaica Run
Meet Mr. McNutley (TV) ~1955
1954 年 47 歳
白昼の対決 A Man Alone (監・製・出)
1955 年 48 歳
夢去りぬ The Girl in the Red Velvet Swing
1956 年 49 歳
陰謀のリスボン Lisbon (監・製・出)
1957 年 50 歳
舞い散った札束/断崖の河 The River’s Edge
朝やけ雲 High Flight
1959 年 52 歳
Markham (TV)
1962 年 55 歳
姦婦の生き埋葬 Premature Burial
性本能と原爆戦 Panic in Year Zero! (監・出)
1963 年 56 歳
1970 年 63 歳
1971 年 64 歳
刑事コロンボ 指輪の爪あと Columbo: Death Lends a Hand (TV)
1972 年 65 歳
吸血の群れ Frogs
Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男 The Thing with Two Heads
刑事コロンボ 悪の温室 Columbo: The Greenhouse Jungle (TV)
1973 年 66 歳
蝋人形館の恐怖 Terror in the Wax Museum
1974 年 67 歳
ゴールド Gold
1975 年 68 歳
星の国から来た仲間 Escape to Witch Mountain
1976 年 69 歳
スイス・コネクション The Swiss Conspiracy
続・ローズマリーの赤ちゃん/悪魔の子が生まれて8年が経った… Look What’s Happened to Rosemary’s Baby
メイデイ40.000フィート Mayday at 40,000 Feet! (TV)
ラスト・タイクーン The Last Tycoon
1977 年 70 歳
オイル・パニック Cuibul salamandrelor
地獄のキャッツ・アイ/呪いの爪 The Uncanny
1978 年 71 歳
呪われた航海/悪魔の連続殺人!死を呼ぶ黄金の棺 Cruise Into Terror
スレイバーズ/自由への旅立ち Slavers
ニューヨーク・インフェルノ/戦慄の12時間 Blackout
宇宙空母ギャラクティカ Battlestar Galactica (TV)
続ある愛の詩 Oliver’s Story
1979 年 72 歳
SFクローン人間の復讐 The Darker Side of Terror
バイオレンス・チェイサー/無法砂漠の殺人遊戯 Survival Run
ブラック・バトル Game for Vultures
1980 年 73 歳
ドリーム・マーチャント/夢を売る男 The Dream Merchants (TV)
1982 年 75 歳
ロイヤル・ロマンス/ダイアナ世紀の恋 The Royal Romance of Charles and Diana (TV)
1983 年 76 歳
SFスターフライトI Starflight: The Plane That Couldn’t Land (TV)
洞窟探検 Cave In! (TV)






