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疑惑の影 Shadow of a Doubt 1943

1940

疑惑の影
Shadow of a Doubt

(アメリカ 1943)

[製作] ジャック・H・スカボール
[監督] アルフレッド・ヒッチコック
[原作] ゴードン・マクドネル
[脚本] ソーントン・ワイルダー/サリー・ベンソン/アルマ・レヴィル
[撮影] ジョゼフ・ヴァレンタイン
[音楽] ディミトリー・ティオムキン
[ジャンル] クライム/スリラー


キャスト

テレサ・ライト
(チャーリー)

ジョゼフ・コットン
(チャーリー叔父)

マクドナルド・キャリー (ジャック・グレアム)
ヘンリー・トレイヴァーズ (ジョゼフ・ニュートン)
パトリシア・コリンジ (エマ・ニュートン)

ヒューム・クローニン
(ハービー・ホーキンス)

ウォレス・フォード (フレッド・サンダース)
エドナ・メイ・ウォナコット (アン・ニュートン)
チャールズ・ベイツ (ロジャー・ニュートン)

アルフレッド・ヒッチコック
(駅の男)



ストーリー

『疑惑の影』は、1943年に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督によるサイコロジカルスリラー映画。主演はテレサ・ライトとジョセフ・コットン。映画は、平穏な小さな町に暮らす少女が、訪ねてきた叔父に対して抱いた不審が、やがて恐ろしい真実へと繋がる様子を描いている。ヒッチコック自身、この映画を彼の最も優れたアメリカ映画と考えていた。

物語は、カリフォルニア州サンタローザの静かな町に住む少女シャーロット・”チャーリー”・ニュートン(テレサ・ライト)が、久しぶりに訪れた叔父チャーリー(ジョセフ・コットン)を歓迎するところから始まる。彼女は、叔父が家族の生活に活気をもたらしてくれることを期待していた。しかし、叔父が到着するにつれて、彼の行動に不審を感じるようになる。

中盤では、チャーリーが叔父についての調査を進めるうちに、彼が「メリー・ウィドウ・マーダラー(未亡人殺人犯)」として警察に追われていることを知る。叔父の行動がますます怪しくなる中、チャーリーは自身や家族が危険にさらされていることに気づき、叔父の真実を暴こうと決意するが、彼女の命も危険にさらされることになる。

エピソード

ヒッチコックの個人的な傑作:
アルフレッド・ヒッチコックは『疑惑の影』を彼の最も優れたアメリカ映画と評価していた。この映画は、彼が手掛けた作品の中でも特にアメリカ的な要素を取り入れたもので、小さな町の生活とその裏に潜む恐怖を巧みに描いている。

実在の殺人犯がモデル:
映画のストーリーは、実在の連続殺人犯アール・レナード・ネルソンから着想を得ている。彼は1920年代に「ゴリラマン」と呼ばれた殺人犯で、多くの未亡人を殺害したことで知られている。

テレサ・ライトの決意:
テレサ・ライトは、ヒッチコックの作品に強く惹かれ、この映画の出演を決意した。彼女は脚本を読む前に出演を承諾し、その後、この作品で彼女のキャリアがさらに高まった。

象徴的な映像:
ヒッチコックは、映画の中で「黒い煙」や「鉄道駅」といった象徴的な映像を使い、登場人物の内面や運命を暗示している。特に、叔父チャーリーが町にやってくるシーンでは、列車から出る黒煙が邪悪さを象徴している。

撮影地と建物:
映画はカリフォルニア州サンタローザで撮影されており、ニュートン家の外観にはイタリア風の家屋が使用された。この建物は現在も残っており、訪問者がその外観を楽しむことができる。

ダブルのテーマ:
映画には、「二重性」がテーマとして多く取り入れられている。チャーリーと叔父チャーリー、二つの夕食シーン、二度にわたる殺害未遂、などがその例で、善と悪、真実と偽りといった対立が物語を深めている。

音楽と雰囲気:
ドミトリ・ティオムキンによる音楽は、特に「メリー・ウィドウ・ワルツ」を用いることで、不穏な雰囲気を高めている。この曲は映画全体を通じて使われ、殺人行為を暗示している。



『疑惑の影』は、ヒッチコックの得意とするサスペンスと心理的緊張感が見事に融合した作品であり、アメリカの平穏な小さな町の表面下に潜む暗い秘密を鋭く描き出している。

特に評価されるのは、ヒッチコックが作り出す緊張感であり、日常の何気ないシーンが不穏な意味を持つように演出されている点だ。この映画は、善と悪の曖昧さや人間の二重性を巧みに描き出し、ヒッチコックの作品の中でも屈指の出来栄えとされている。

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