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[監督] イングマール・ベルイマン Ingmar Bergman 映画作品一覧|代表作と作風解説|野いちご|ファニーとアレクサンデル

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イングマール・ベルイマン
Ingmar Bergman

1918年7月14日、スウェーデン・ウプサラ生まれ。
2007年7月30日、スウェーデン・ゴットランドで死去(老衰)。享年89歳。
本名エルンスト・イングマール・ベルイマン。
身長179cm。
スウェーデンを代表する巨匠。

今回は、人間の魂の深淵を覗き込み、神の沈黙や家族の愛憎を冷徹かつ詩的な映像で描き出したスウェーデンの巨匠、イングマール・ベルイマンをご紹介します。

彼は、演劇と映画の境界線を越え、観客の心に直接語りかけるような、極めて内省的なドラマを構築しました。ウディ・アレンやフランシス・フォード・コッポラといった後の巨匠たちが「映画史上最大の作家」と崇める、映画という芸術を「精神の解剖学」へと高めた先駆者です。


魂の叫び、鏡の中の真実。ベルイマンが刻んだ「存在の痛み」

イングマール・ベルイマンの作品を貫いていたのは、人間が抱える孤独、罪、そして救済への渇望でした。

剥き出しの感情を捉える極端なクローズアップと、光と影が織りなす厳格な美学。彼はスクリーンの向こう側に広がる物語を通じて、私たちが普段は蓋をしている心の深淵にある「叫び」を、鮮やかな映像へと昇華させました。


✦ PROFILE & FAMILY

  • 本名: エルンスト・イングマール・ベルイマン
  • 生年月日: 1918年7月14日(2007年7月30日、89歳で逝去)
  • 出身: スウェーデン・ウプサラ
  • 背景: 厳格なルター派牧師の息子として育ちました。幼少期に手に入れた映写機が、彼の孤独な想像力を羽ばたかせる生涯の友となりました。
  • 家族: 生涯で5度結婚。名優リヴ・ウルマンとは公私にわたる深いパートナーシップを築き、彼女との間に生まれた長女リン・ウルマンは作家として活躍しています。


死神との対峙:『第七の封印』

黒死病が蔓延する中世スウェーデンを舞台に、騎士が死神とチェスをしながら人生の意義を問う物語です。浜辺で死神と向かい合うシルエットは、映画史において最も象徴的なイメージの一つ。神の不在と、それでも生きようとする人間の意志を強烈に描き出しました。

意識の深層へ潜る:『野いちご』

死を予感した老教授が、旅の途中で過去の記憶や幻想と邂逅するロードムービーの傑作です。夢の中の不気味な光景と、美しい思い出が交錯する構成は、後の多くの映画作家に多大な影響を与えました。

精神の変容と融合:『仮面/ペルソナ』

言葉を失った女優と、彼女を看病する看護師。二人の女性のアイデンティティが次第に溶け合い、重なり合っていく様子を、斬新な映像表現で描写しました。人間の表層(仮面)と深層を抉り出す、ベルイマン美学の到達点と言える作品です。

自伝的な集大成:『ファニーとアレクサンデル』

ベルイマン自身の幼少期を投影したような、ある大家族の光と影を描いた叙事詩です。これまでの重苦しい作風から一転、演劇的な豊かさと幻想的な魔法が溢れる本作は、彼のキャリアを締め括るにふさわしい華やかな傑作となりました。


🎭 素顔と情熱:巨匠を巡るパーソナル・エピソード

哲学的な作風とは裏腹に、ベルイマン本人は非常に情熱的で、時に偏執的なまでのこだわりと、複雑な人間関係に彩られた人生を歩んでいました。

「牧師の息子」としての原罪と恐怖
厳格な父による教育は苛烈で、粗相をするとクローゼットに閉じ込められるなどの罰を受けていました。この時の恐怖や、抑圧された性への関心が、彼の作品に漂う「罪悪感」や「家族間の沈黙」の源泉となりました。

リヴ・ウルマンとの「愛と孤独」の孤島
彼はバルト海に浮かぶ孤島フォーレ島を愛し、そこに居を構えました。ミューズであるリヴ・ウルマンと共に島で暮らし、数々の傑作を撮りましたが、ベルイマンの嫉妬心や独占欲は凄まじく、二人の関係は常に激しいエモーションの嵐の中にありました。別離後も、二人は魂の友として映画を作り続けました。

「毎日午後4時にイチゴを食べる」規則正しさ
完璧主義者の彼は、生活のリズムも極めて厳格でした。毎日決まった時間に起床し、執筆し、そして午後には決まってイチゴを食べていたと言われています。現場でも俳優たちを完全に掌握し、劇場のように緻密なリハーサルを繰り返しました。

映画界の「暴君」と「名優たちの信頼」
撮影現場での彼は、気に入らないことがあれば激昂する「暴君」的な側面もありましたが、マックス・フォン・シドーやビビ・アンデショーンといった名優たちは、彼の深い洞察力に全幅の信頼を寄せていました。「彼は私たちの魂の奥底にある秘密を、本人よりも先に知っている」と言わしめるほどでした。

スウェーデン当局との「脱税疑惑」を巡る亡命騒動
1976年、脱税の容疑で警察に連行された際、極度のショックから神経衰弱に陥り、一時はスウェーデンを離れドイツへ亡命しました。後に疑惑は晴れましたが、この事件は彼の自尊心を深く傷つけ、当時のスウェーデン社会への不信感を生む契機となりました。


📝 まとめ

イングマール・ベルイマンという監督は、人間の顔が持つ「風景」としての美しさと、その裏側に潜む「地獄」を同時に肯定した詩人でした。彼の作品は、私たちが孤独に苛まれる時、誰にも言えない秘密を抱える時、鏡のように静かにその姿を映し出してくれます。彼がこの世を去った今も、フィルムに刻まれたあの鋭い眼差しは、私たちの魂を揺さぶり続けています。


[監督作品]

1944 年    26 歳

もだえ  Hets (脚)

1946 年    28 歳

危機  Kris

われらの恋に雨が降る  Det regnar på vår kärlek

1947 年    29 歳

インド行きの船  Skepp till India land

1948 年    30 歳

闇の中の音楽  Musik i mörker

愛欲の港  Hamnstad

エヴァ  Eva (脚)

1949 年    31 歳

牢獄  Fängelse

1950 年    32 歳

それはここでは起こらない  Sånt händer inte här

1951 年    33 歳

1952 年    34 歳

シークレット・オブ・ウーマン  Kvinnors väntan

1953 年    35 歳

1954 年    36 歳

1955 年    37 歳

女たちの夢  Kvinnodröm

夏の夜は三たび微笑む  Sommarnattens leende

  カンヌ国際映画祭 詩的ユーモア賞

1957 年    39 歳

第七の封印  Det Sjunde inseglet

  カンヌ国際映画祭 審査員特別賞

野いちご  Smultronstället

  ベルリン国際映画祭 金熊賞/国際映画批評家連盟賞
  ヴェネツィア国際映画祭 イタリア批評家賞
  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞

1958 年    40 歳

女はそれを待っている  Nära livet

  カンヌ国際映画祭 監督賞

魔術師  Ansiktet

  ヴェネツィア国際映画祭 審査員特別賞/イタリア批評家賞

1960 年    42 歳

処女の泉  Jungfrukällan

  アカデミー賞 外国語映画賞
  カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟賞
  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞

1961 年    43 歳

鏡の中にある如く  Såsom i en spegel

  アカデミー賞 外国語映画賞
  ベルリン国際映画祭 国際カトリック映画事務局賞

1962 年    44 歳

1963 年    45 歳

1964 年    46 歳

1966 年    48 歳

仮面/ペルソナ  Persona

  全米映画批評家協会賞 作品賞/監督賞

1967 年    49 歳

ダニエル  Daniel

1968 年    50 歳

狼の時刻  Vargtimmen

  全米映画批評家協会賞 作品賞/監督賞

恥  Skammen

  全米映画批評家協会賞 作品賞/監督賞

1969 年    51 歳

沈黙の島  En Passion

全米映画批評家協会賞 監督賞

1970 年    52 歳

フォール島の記録  Faro Document

1971 年    53 歳

愛のさすらい  Beröringen

1972 年    54 歳

叫びとささやき  Viskningar

  カンヌ国際映画祭 フランス映画高等技術委員会賞
  全米映画批評家協会賞 脚本賞
  NY映画批評家協会賞 作品賞/監督賞/脚本賞

1973 年    55 歳

ある結婚の風景  Scener ur ett äktenskap

  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞
  全米映画批評家協会賞 作品賞/脚本賞
  NY映画批評家協会賞 脚本賞

1975 年    57 歳

魔笛  Trollflöjten

  全米映画批評家協会賞 特別賞

1976 年    58 歳

鏡の中の女  Ansikte mot ansikte

  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞

1977 年    59 歳

1978 年    60 歳

秋のソナタ  Höstsonaten

  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞

1979 年    61 歳

フォール島の記録1979  Fårö-dokument 1979

1980 年    62 歳

夢の中の人生  Aus dem Leben der Marionetten (TV)

1982 年    64 歳

ファニーとアレクサンデル  Fanny och Alexander

  アカデミー賞 外国語映画賞
  ヴェネツィア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞
  ゴールデングローブ賞 外国語映画賞
  NY映画批評家協会賞 外国語映画賞/監督賞
  セザール賞 外国映画賞

1984 年    66 歳

母の面影  Karins ansikte

リハーサルの後で  Efter repetitionen (TV)

1986 年    68 歳

ベルイマンの世界/ドキュメント「ファニーとアレクサンデル」  Dokument Fanny och Alexander

1992 年    74 歳

愛の風景  Den goda viljan (脚)

日曜日のピュ  Söndagsbarn (脚)

2000 年    82 歳

不実の愛、かくも燃え  Trolösa (脚)

2003 年    85 歳

サラバンド  Saraband (TV)
















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