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[監督] ケン・ラッセル Ken Russell 映画作品一覧|代表作と作風解説| 肉体の悪魔

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ケン・ラッセル
Ken Russell

1927年7月3日、イギリス・サウサンプトン生まれ。
2011年11月27日、イギリス・ハンプシャー州リミントンで逝去。享年84歳。
本名ヘンリー・ケネス・アルフレッド・ラッセル。
身長171cm。
商船大学卒業後、バレエダンサー、俳優、写真家を経験。
自主製作映画を認められ、BBCで音楽家やダンサーの伝記ドラマを演出後、36歳の時劇場映画監督デビュー。
人間の異常さやセックスへの飽くなき関心をテーマに、奔放な映像と音楽の大胆な使用による幻惑的な映像世界にまとめる、英国の異才。


今回は、あまりに過激で、あまりに美しく、そしてあまりに破天荒だった「映像の魔術師」、ケン・ラッセルをご紹介します。

彼は、クラシック音楽や芸術家の生涯をテーマにしながら、宗教、性、暴力をサイケデリックな色彩で描き出し、観客を熱狂と困惑の渦に叩き込んだイギリス映画界最大の異端児でした。静寂を嫌い、常に「過剰」であることを愛した彼の映像は、まさに目から摂取するドラッグのような衝撃を秘めています。


狂気と悦楽の万華鏡。ケン・ラッセルが解放した「禁断の視覚」

ケン・ラッセルの映画を貫いていたのは、理性による抑制を一切拒絶した「エモーションの爆発」でした。

歴史の裏側にあるスキャンダラスな物語や、天才たちの脳内に広がる幻覚を、オペラのように壮大なスケールとポップアートのような感性で映像化。彼の手にかかれば、高尚なクラシック音楽さえも、淫らで凶暴なエネルギーを放つロックへと変貌しました。


✦ PROFILE & FAMILY

  • 本名: ヘンリー・ケネス・アルフレッド・ラッセル
  • 生年月日: 1927年7月3日(2011年11月27日、84歳で逝去)
  • 出身: イギリス・ハンプシャー州サウサンプトン
  • 背景: 王立海軍学校を卒業後、商船員やダンサー、写真家を経てBBCのドキュメンタリー監督となりました。この放浪の若き日が、彼の多角的な芸術観を形作りました。
  • 家族: 4度の結婚を経験。最初の妻シャーリーは衣装デザイナーとして彼の初期作品を支えました。また、多くの子供たちも映画制作に関わるなど、ラッセル家はさながら一つの「芸術ギルド」のようでした。


1. 裸の男たちが暖炉の前で:『恋する女たち』

D.H.ロレンスの原作を映画化。主演のオリヴァー・リードとアラン・ベイツが、全裸で取っ組み合いのレスリングをするシーンは、当時の検閲の壁を突き破る衝撃を与えました。美しさと野蛮さが同居するこの一作で、彼は世界的な名声を確立しました。

2. 宗教とエロティシズムの極北:『肉体の悪魔』

17世紀フランスで起きた修道女たちの集団ヒステリー事件を描いた問題作です。バチカンから上映禁止を突きつけられるほどの過激な描写は、今なおカルト的な人気を誇ります。権力への激しい怒りを、これ以上ないほどグロテスクで美しい映像で叩きつけた、彼の最高傑作の一つです。

3. ロック・オペラの金字塔:『トミー』

ザ・フーの名盤を映画化。エリザベス・テイラーがチョコまみれになり、エルトン・ジョンが巨大な靴を履いて歌う……。全編音楽のみで構成された、目と耳を休ませる暇もないほどの視覚的洪水。彼の「過剰の美学」が最もポップな形で結実した作品です。


🎭 素顔と情熱:巨匠を巡るパーソナル・エピソード

「恐るべき子供」の精神を持ち続けたラッセル。その撮影現場や私生活は、映画そのものに負けないほどハチャメチャで、かつ純粋な情熱に満ちていました。

  • オリヴァー・リードとの「酔いどれの絆」
    ラッセルの「ミューズ」といえば、あの野生児オリヴァー・リード。二人は最高のコンビでしたが、現場は常に火薬庫でした。撮影後には毎晩のようにパブで騒ぎ、ある時は全裸でバーの上を歩き回るなど、悪童のような振る舞いを繰り返していました。しかし、リードは「ケンこそが俺の獣性を美しく撮れる唯一の男だ」と死ぬまで彼を敬愛していました。
  • BBCを出入り禁止になった理由
    もともとBBCで作曲家の伝記ドラマを撮っていましたが、実在の人物をあまりにスキャンダラスに描きすぎ(特にリヒャルト・シュトラウスをナチスと結びつけた描写など)、ついに放送禁止・出入り禁止に。しかし、彼は「テレビに収まる器じゃない」と笑い飛ばし、映画界でさらに過激さを増していきました。
  • 「僕はただの古いカトリック信者だ」
    神への冒涜ともとれる映像を量産した彼ですが、実は熱心なカトリック信者でした。彼にとって、宗教的なイメージを過激に扱うのは「不信心」からではなく、宗教が持つ圧倒的なパワーを誰よりも恐れ、敬っていたからこその表現でした。
  • 低予算でも「ド派手」に見せる天才
    晩年はメジャーから見捨てられ、自宅の庭やわずかな予算で映画を撮り続けましたが、その創作意欲は衰えませんでした。キッチン用品を組み合わせてSFのセットに見せかけるなど、初期の職人気質を活かして「安っぽさを超えた前衛」を生み出す、不屈のクリエイターでした。
  • 実は「お茶目なおじいちゃん」?
    映画祭などでは、常に突飛な衣装(派手なチェックのジャケットや帽子)で現れ、周囲を煙に巻きました。晩年にはイギリスのリアリティ番組『セレブリティ・ビッグブラザー』に出演。他のセレブとの口論の末、わずか4日で「ここは退屈だ!」と自ら降板。最後まで「型にハマること」を拒絶した人生でした。


📝 まとめ

ケン・ラッセルという監督は、映画というキャンバスに自らの妄想とエネルギーをぶちまけた、最後の「恐るべき芸術家」でした。彼の作品は、今のコンプライアンス重視の映画界では到底生まれないような、毒々しくも芳醇な香りを放っています。彼の映画を観ることは、退屈な日常を爆破し、五感を解放する最高のデトックスになるはずです。



[監督作品]

1964 年    37 歳

1967 年    40 歳

1968 年    41 歳

ソング・オブ・サマー  Song of Summer

1969 年    42 歳

恋する女たち  Women in Love

1970 年    43 歳

1971 年    44 歳

ボーイフレンド  The Boy Friend

肉体の悪魔  The Devils

  ヴェネツィア国際映画祭 パシネッティ賞

1972 年    45 歳

1974 年    47 歳

マーラー  Mahler

  カンヌ国際映画祭 フランス映画高等技術委員会賞

1975 年    48 歳

トミー  Tommy

1976 年    49 歳

1977 年    50 歳

1979 年    52 歳

1980 年    53 歳

アルタード・ステーツ/未知への挑戦  Altered States

1984 年    57 歳

クライム・オブ・パッション  Crimes of Passion

1986 年    59 歳

1987 年    60 歳

アリア  Aria

1988 年    61 歳

1989 年    62 歳

レインボウ  The Rainbow

1990 年    63 歳

ロシア・ハウス  The Russia House (出)

1991 年    64 歳

ボンデージ  Whore

逆転無罪  Prisoner of Honor

1993 年    66 歳

チャタレイ夫人の恋人  Lady Chatterley (TV)

1994 年    67 歳

カーシュ夫人の欲望  The Insatiable Mrs. Kirsh

1996 年    69 歳

超能力者ユリ・ゲラー  Mindbender (TV)

2006 年    79 歳

デス・ルーム  Trapped Ashes
The Girl with Golden Breasts

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