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[監督] ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders 映画作品一覧|代表作と作風解説|パリ、テキサス

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ヴィム・ヴェンダース
Wim Wenders

1945年8月14日、西ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。
本名エルンスト・ヴィルヘルム・ヴェンダース。
大学で映画を学び、評論家を経て21歳の頃から16ミリの短編を監督し、27歳の時の長編作品「ゴールキーパーの不安」が注目され、独特の感覚のロードムービーで人気を得た。
独自の視点と映像で、詩的な世界を作り上げる。


今回は、ロードムービーの旗手であり、都市の孤独と魂の救済を静謐な映像で描き続けるドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダースをご紹介します。

彼は、小津安二郎を敬愛し、音楽や写真といった多角的な芸術視点から映画を構築する詩的な作家です。2023年から2024年にかけて公開された『PERFECT DAYS』の世界的ヒットにより、今まさに新たな世代の観客からも熱い注目を浴びている、現役のレジェンドです。


彷徨える魂、光の詩学。ヴィム・ヴェンダースが映し出す「風景の記憶」

ヴィム・ヴェンダースの映画を貫くのは、移動すること(旅)と、世界を「観察」することへの執着です。

物語の劇的な展開よりも、その場所の空気や、人物がふとした瞬間に見せる表情を重んじる。彼の作品を観ることは、日常の中に潜む神聖な美しさや、忘れかけていた人間性の断片を再発見する旅に出るようなものです。


✦ PROFILE & FAMILY

  • 本名: エルンスト・ヴィルヘルム・ヴェンダース
  • 生年月日: 1945年8月14日
  • 出身: ドイツ・デュッセルドルフ
  • 背景: 医師の息子として生まれ、医学や哲学を学んだ後に映画制作の道へ進みました。1970年代にニュー・ジャーマン・シネマの旗手として脚光を浴び、カンヌ国際映画祭の常連となります。
  • パートナー: 現在の妻は写真家のドナータ・ヴェンダース。彼女はヴィムの作品の制作現場を写真に収めるなど、公私ともに深い創造的パートナーシップを築いています。


ロードムービーの至高:『パリ、テキサス』

テキサスの荒野を彷徨う男の再生を描いた本作は、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。赤いセーターを纏ったナスターシャ・キンスキーの美しさと、ライ・クーダーによる哀愁漂うスライドギターの音色は、映画ファンにとって永遠の記憶となりました。

天使が街を見守る詩:『ベルリン・天使の詩』

東西に分断されていたベルリンを舞台に、人間に恋をした天使の物語を、モノクロとカラーを織り交ぜた幻想的な映像で描きました。見守ることしかできない天使が「今」を生きる喜びを希求する姿は、多くの人々に感動を与え、ヴェンダースの代表作の一つとなりました。

ドキュメンタリーの魔術:『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』

キューバの忘れ去られていた老ミュージシャンたちを追った本作は、音楽映画としても異例のヒットを記録。彼らが再び輝きを取り戻す姿を、ヴェンダースは敬意を持ってレンズに収め、世界中にキューバ音楽ブームを巻き起こしました。

東京の日常を慈しむ:『PERFECT DAYS』

役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレの清掃員の日々を描きました。同じルーティンの中に宿る豊かさ。言葉を削ぎ落としたからこそ際立つ「今この瞬間」の輝きは、世界中で絶賛され、ヴェンダースが再びキャリアの頂点に立っていることを証明しました。


🎭 素顔と情熱:巨匠を巡るパーソナル・エピソード

哲学的な作風とは裏腹に、ヴェンダース本人は非常に好奇心旺盛で、音楽や最新技術を愛する多趣味な人物として知られています。

「日本」と「小津安二郎」への熱狂的愛
彼は自他共に認める日本通であり、小津安二郎を「映画の聖師」と仰いでいます。かつて小津が描いた東京の風景を求めて来日し、ドキュメンタリー『東京画』を撮影したほど。自身の映画哲学の根幹には、小津的な「静止した時間への敬意」が流れています。

「ロックンロール」が救いだった青年時代
第二次世界大戦後のドイツで育った彼にとって、アメリカのロック音楽は「出口」であり、自由の象徴でした。彼の映画にロックミュージックやジュークボックスが頻繁に登場するのは、自身のアイデンティティを形成した音楽へのオマージュです。

スマホを持たず、ライカを提げる
彼は今でも世界的な写真家として活動しており、常にライカのカメラを首から下げて街を歩いています。一方で、長年「携帯電話は持たない」という主義を貫いてきました(現在は利便性のためにタブレットなどを使用することもあるようですが)。「画面を見るのではなく、世界を直接見る」という彼の姿勢の表れです。

「3D映画」への先駆的な挑戦
意外なことに、彼は3D技術を単なるギミックではなく、芸術的な表現としていち早く取り入れました。舞踏家ピナ・バウシュを追った『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』では、3Dによって空間の奥行きと身体の躍動を見事に表現し、ドキュメンタリー映画の新たな可能性を切り拓きました。

「ベルリンの天使」は実は自分たち?
『ベルリン・天使の詩』の構想中、彼は「天使とは映画作家のことではないか」と考えたそうです。目に見えない場所から人々を観察し、その声を聞き、記憶を記録する。ヴェンダースにとって映画を作ることとは、天使のように世界に寄り添う行為そのものなのです。


📝 まとめ

ヴィム・ヴェンダースという監督は、世界を「旅する者」の視点で捉え、そこに流れる孤独や美しさを拾い集める詩人です。彼の作品には、都会の喧騒や荒野の静寂の中で迷子になっている私たちの心を、優しく肯定してくれる力があります。たとえ言葉が通じなくても、風景と音楽が魂に直接語りかけてくる――そんな魔法を、彼は80歳を目前にした今もなお、スクリーンにかけ続けています。


[監督・製作作品]

1967 年    22 歳

Schauplätze

1968 年    23 歳

Same Player Shoots Again

Victor I.

Klappenfilm

1969 年    24 歳

Silver City

警察映画  Polizeifilm

アラバマ:2000光年  Alabama: 2000 Light Years from Home

3枚のアメリカのLP  Drei Amerikanische LP’s

1970 年    25 歳

都市の夏  Summer in the City

1972 年    27 歳

ゴールキーパーの不安   Die Angst des Tormanns beim Elfmeter

  ヴェネツィア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞

1973 年    28 歳

1974 年    29 歳

都会のアリス  Alice in den Städten

Ein Bißchen Liebe (製)

1975 年    30 歳

1976 年    31 歳

さすらい  Im Lauf der Zeit

  カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟賞

1977 年    32 歳

アメリカの友人  Der Amerikanische Freund

ワニの家族から  Aus der Familie der Panzerechsen (TV)

島  Die Insel (TV)

1978 年    33 歳

1979 年    34 歳

RADIO ON  Radio On (製)

…als Diesel geboren (製)

1980 年    35 歳

1982 年    37 歳

ハメット  Hammett

ことの次第  Der Stand der Dinge

  ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞/国際映画批評家連盟賞

666号室  Chambre 666 (TV)

1984 年    39 歳

パリ、テキサス  Paris, Texas

  カンヌ国際映画祭 パルム・ドール国際映画批評家連盟賞
  英国アカデミー賞 監督賞

Docu Drama

1985 年    40 歳

1987 年    42 歳

ベルリン・天使の詩  Der Himmel über Berlin

  カンヌ国際映画祭 監督賞
  ヨーロッパ映画賞 監督賞
  LA映画批評家協会賞 外国語映画賞

鉄の大地、銅の空  Yer demir gök bakir (製)

1989 年    44 歳

都市とモードのビデオノート  Aufzeichnungen zu Kleidern und Städten

1990 年    45 歳

Night and Day

1991 年    46 歳

夢の涯てまでも  Bis ans Ende der Welt

Dream Island (製)

1992 年    47 歳

アリーシャと熊とストーンリング  Arisha, the Bear, and the Stone Ring

L’absence (製)

1993 年    48 歳

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!  In weiter Ferne, so nah!

  カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ

1994 年    49 歳

1995 年    50 歳

愛のめぐりあい  Al di là delle nuvole

  ヴェネツィア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞

キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒  Lumière et compagnie

1997 年    52 歳

エンド・オブ・バイオレンス  The End of Violence

Go for Gold! (製)

1999 年    54 歳

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ  Buena Vista Social Club

  ヨーロッパ映画賞 ドキュメンタリー賞
  LA映画批評家協会賞 ドキュメンタリー賞
  ナショナル・ボード・オブ・レビュー ドキュメンタリー映画賞

2000 年    55 歳

ミリオンダラー・ホテル  The Million Dollar Hotel

  ベルリン国際映画祭 銀熊賞

2002 年    57 歳

Viel passiert – Der BAP-Film

U2: The Best of 1990-2000

トローナからの12マイル  Twelve Miles to Trona

Halbe Miete (製)

Junimond (製)

2003 年    58 歳

ソウル・オブ・マン  The Soul of a Man

Other Side of the Road

Narren (製)

2004 年    59 歳

La torcedura (製)

Egoshooter (製)

2005 年    60 歳

2006 年    61 歳

The House Is Burning (製)

2007 年    62 歳

Invisible Crimes

平和の中の戦争  War in Peace

2008 年    63 歳

人から人へ  Person to Person

2009 年    64 歳

2010 年    65 歳

もし建築が話せたら…  If Buildings Could Talk

2011 年    66 歳

Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち  Pina

  ヨーロッパ映画賞 ドキュメンタリー賞

2012 年    67 歳

Ver ou Não Ver

Sing Me the Songs That Say I Love You: A Concert for Kate McGarrigle (製)

2014 年    69 歳

ベルリン・フィルハーモニー  The Berlin Philharmonic

セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター  The Salt of the Earth

  カンヌ国際映画祭 「ある視点」部門特別賞
  セザール賞 ドキュメンタリー賞

もしも建物が話せたら  Cathedrals of Culture (製)

2015 年    70 歳

Return to Timbuktu (製)

2016 年    71 歳

アランフエスの麗しき日々  Les beaux jours d’Aranjuez

2017 年    72 歳

2018 年    73 歳

ローマ法王フランシスコ  Pope Francis: A Man of His Word

2023 年    78 歳

PERFECT DAYS  Perfect Days

  カンヌ国際映画祭 エキュメニカル審査員賞

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