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駅馬車 Stagecoach 1939

1930

駅馬車(字幕版)

駅馬車
Stagecoach
(アメリカ 1939)

[製作総指揮] ウォルター・ウェンジャー
[製作] ジョン・フォード
[監督] ジョン・フォード
[原作] アーネスト・ヘイコックス
[脚本] ダドリー・ニコルズ/ベン・ヘクト
[撮影] バートグレノン
[音楽] リチャード・ヘイジマン/フランク・ハーリング/ルイス・グルンベルグ/ジョン・ライポルド/レオ・シューケン/ジェラルド・カーボナラ
[ジャンル] アクション/ウエスタン/ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 助演男優賞(トーマス・ミッチェル)/作曲賞
NY批評家協会賞 監督賞

キャスト

ジョン・ウェイン
(リンゴ・キッド)


クレア・トレヴァー (ダラス)
アンディ・デヴァイン (バック)
ジョン・キャラダイン (ハットフィールド)

トーマス・ミッチェル
(Dr.ジョシア・ブーン)


ルイーズ・プラット (ルーシー・マロリー)
ジョージ・バンクロフト (カーリー・ウィルコックス保安官)
ドナルド・ミーク (サミュエル・ピーコック)
バートン・チャーチル (ヘンリー・ゲイトウッド)
ティム・ホルト (ブランチャード)
トム・タイラー (ルーク・プラマー)



概要

『駅馬車(Stagecoach)』は、ジョン・フォード監督による西部劇映画。

アメリカ西部の広大な荒野を舞台に、駅馬車に乗り合わせた多様な人々が直面する困難と、それを通じて芽生える友情や自己発見を描く。

ジョン・ウェインの出世作で、西部劇の金字塔とされる作品。




ストーリー

物語は、ニューメキシコからローズバーグへ向かう駅馬車が出発するところから始まる。

乗客にはそれぞれ異なる背景を持つ個性的な人々が揃う。社会から追放された娼婦ダラス、酔いどれ医者のブーン、妊婦のルーシー・マロリー夫人、ギャンブラーのハットフィールド、銀行家のゲートウッド、そして鉄道会社の売上を管理するコーチマンのバックと保安官カーリーが同行する。

旅の途中、彼らは脱走犯リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)を拾う。リンゴは家族を殺した仇を討つために逃亡しており、保安官に投降する意志を見せるが、目的地まで同行することになる。

旅路は険しく、アパッチ族の襲撃が迫る中、乗客たちは互いに不信感や偏見を抱きながらも、生存のために協力し合わざるを得ない状況に追い込まれる。

道中、ダラスはリンゴとの間に絆を育み、彼の純粋な一面に触れて心を開いていく。一方、ハットフィールドはマロリー夫人を守るため、紳士的な振る舞いを続けるが、彼にも隠された過去があることが暗示される。

ついにアパッチ族が駅馬車を襲撃する。激しい戦闘が繰り広げられる中、乗客たちはそれぞれの立場を超えて団結し、最後の瞬間まで戦い抜く。

危機が過ぎ去った後、リンゴは仇討ちの機会を得て、宿敵プラマー兄弟と対決する。リンゴの勝利によって彼の復讐は果たされ、彼は再び自由を手に入れる。

物語の終わり、リンゴとダラスは新たな人生を歩むために旅立つ。彼らは荒野の中で新しい希望を見つけ、未来に向かって進む姿が描かれる。


エピソード

  • この映画でのリンゴ・キッド役はジョン・ウェインにとって大きなブレイクのきっかけとなり、彼の代表作の一つとされる。
  • 当初、スタジオは西部劇を「過去のジャンル」と考えていたが、本作の成功によって再び脚光を浴びた。
  • 映画はアカデミー賞で7部門にノミネートされ、トーマス・ミッチェルが助演男優賞を受賞したほか、作曲賞も受賞した。
  • フォードはモニュメントバレーで撮影を行い、その壮大な風景は西部劇の象徴となった。
  • 映画は、それぞれのキャラクターが持つ人間的な欠点と長所を描くことで、リアリズムを追求している。
  • 『駅馬車』は、後の西部劇映画に多大な影響を与え、ジャンルの新たなスタンダードを確立した。
  • この映画でモニュメントバレーの景色が広く知られるようになり、後の西部劇でも頻繁に使用されるロケ地となった。
  • ウェインの演技は、彼の後のキャリアにおける典型的な「強くて寡黙な男」のイメージを確立した。
  • オーソン・ウェルズはこの映画を映画製作の教科書的な例として挙げており、『市民ケーン』(1941年)の制作に備えて40回以上鑑賞したと語っている。
  • ジョン・ウェインがかぶっている帽子は彼自身のものだった。彼はその後 20 年間、多くの西部劇でこの帽子をかぶっていたが、ハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』(1959 年)以降、帽子が「ぼろぼろ」になったため、使用を中止した。その後、この帽子は彼の自宅のガラスケースに飾られていた。
  • 地元のナバホ族インディアンがアパッチ族を演じた。この映画の製作は地元の貧困層に大きな経済的刺激を与え、エキストラや雑用係として何百人もの地元民に仕事を与えた。
  • 室内のセットはすべて天井が見えるように撮影されており、当時のスタジオ撮影では珍しい手法だった。これはモニュメント バレーの広々とした空間と完全に対照的な、閉所恐怖症のような効果を生み出すために行われた。
  • ジョン・フォードがアカデミー監督賞にノミネートされながら受賞を逃した唯一の映画。
  • ジョン・フォードは、親しい友人であったにもかかわらず、1930 年代のどの映画にもジョン・ウェインを起用せず、ウェインに俳優として「準備」ができるまで待つように言った。フォードはこの映画を利用してウェインを大スターに仕立て上げようとした。リンゴが駅馬車を停めてウィンチェスター ライフルを振り回し、カメラが彼の顔にズームインする冒頭のシーンは、その努力の成果である。
  • ジョン・フォードはジョン・ウェインに脚本を渡し、リンゴ・キッドの役に誰がふさわしいか意見を求めた。ウェインはロイド・ノーランを推薦したが、フォードがその役で自分を誘い出そうとしていることに気づいていなかった。

    さらに、撮影が始まるとフォードはウェインに容赦なく、絶えず彼をけなした。この心理的戦術は、ウェインが本物の感情を抱き始め、トーマス・ミッチェルのようなベテランの俳優たちと一緒に演技することに怯まないようにするためのものだった。
  • 地元のシャーマンであるホスティーン・ツォは、ジョン・フォードに、まさに彼が望んでいたような雲の形を約束した。そして、その雲は予定通りに現れた。
  • トーマス・ミッチェルは、酔っぱらいのドク・ブーンを演じる2年以上前に飲酒をやめていた。
  • 音楽を手掛けたリチャード・ヘイゲマンは、アメリカ民謡を効果的に取り入れ、作品の雰囲気を高めた。




『駅馬車』は、ジョン・フォードの卓越した演出とキャストの優れたパフォーマンスによって、西部劇のジャンルにおける不朽の名作となった。映画は、単なる冒険物語にとどまらず、人間ドラマとしての深みを持ち、観客に多くの教訓を提供する。特に、ジョン・ウェインのリンゴ・キッド役は、彼のキャリアを象徴する役柄として知られている。『駅馬車』はその後の映画製作に大きな影響を与え、西部劇のスタンダードを確立した作品であり、今なお映画史において重要な位置を占めている。

感想

登場人物の多様さが魅力的で、それぞれのキャラクターの苦悩や成長がリアルに感じられた。特にダラスのような女性キャラクターが過酷な状況下で見せる強さには共感できたし、彼女の心の変化をじっくり追える点が素晴らしい。恋愛要素は西部劇らしい荒々しさの中に繊細さを添えていて、観ていて引き込まれるものがあった。一方で、男性中心の物語構造やダラスの扱われ方には、今の目線では時代のギャップを感じざるを得ないところもあった。それでも、あのラストシーンは胸が熱くなる。

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