豪華絢爛!ブロードウェイの伝説を築いた男の栄光と挫折の物語

『アメリカの女性を美しく飾る』ことに生涯を捧げた伝説の興行師フローレンツ・ジーグフェルド。破格の贅を尽くしたステージと、二人の女性との愛。ハリウッド黄金期の粋を集めた、圧倒的スケールの伝記ミュージカル。
巨星ジーグフェルド
The Great Ziegfeld
(アメリカ 1936)
[監督] ロバート・Z・レナード
[脚本] ウィリアム・アンソニー・マクガイア
[撮影] レイ・ジューン/ジョージ・フォルシー/オリヴァー・T・マーシュ
[音楽] ウォルター・ドナルドソン
[ジャンル] 伝記/ミュージカル
[受賞]
アカデミー賞 主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)/ダンス監督賞/作品賞
NY批評家協会賞 主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)
キャスト

ウィリアム・パウエル
(フローレンツ・ジーグフェルド)

マーナ・ロイ
(ビリー・バーク)

ルイーゼ・ライナー
(アンナ・ヘルド)
フランク・モーガン (ジャック・ビリングス)
ファニー・ブライス (本人)
ヴァージニア・ブルース (オードリー・デイン)
レジナルド・オーウェン (サンプストン)
レイ・ボルガー (本人)
アーネスト・コサート (シドニー)
ジョゼフ・カウソーン (Dr.ジーグフェルド)
ナット・ペンドルトン (サンドー)
受賞・ノミネートデータ
- 1936年 第9回アカデミー賞
- 受賞:作品賞
- 受賞:主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)
- 受賞:ダンス監督賞
- ノミネート:監督賞、原案賞、美術賞、編集賞
- 評価
- 約3時間という当時としては破格の長尺と、MGMが社運を賭けて投入した豪華なセット・衣装が話題を呼び、大ヒットを記録しました。ルイーゼ・ライナーの「電話のシーン」の演技と、階段を駆使した巨大なセットでのダンスシーンは、映画史に残る伝説として語り継がれています。
あらすじ:ショービジネスの帝王、誕生
1893年のシカゴ万博。若きフローレンツ・ジーグフェルド(ウィリアム・パウエル)は、怪力男サンドーの見世物興行で頭角を現す。彼はライバルの興行師を出し抜き、フランスの人気歌手アンナ・ヘルド(ルイーゼ・ライナー)をスターに仕立て上げる。
アンナと結婚し、ブロードウェイで「ジーグフェルド・フォリーズ」を立ち上げた彼は、巨大なセットと美しい「ジーグフェルド・ガール」を起用したステージで一世を風靡する。しかし、彼の浪費癖と女性問題が原因でアンナとは離婚。その後、舞台女優のビリー・バーク(マーナ・ロイ)と出会い、再婚して幸せを掴むが、1929年の世界恐慌が彼の運命を大きく狂わせていく。
株の大暴落により、全財産を失ったジーグフェルド。彼は重い病に倒れるが、病床にあってもなお、彼の頭の中には華やかなステージの幻影が流れていた。
最期の瞬間、彼は傍らにいる妻ビリーに「もっと高い階段を……もっと高く……」という言葉を遺し、静かに息を引き取る。かつて彼が作り上げた豪華なステージの数々が、走馬灯のように重なり合いながら幕を閉じる。富は失っても、彼がブロードウェイに刻んだ「美の伝説」は永遠に人々の記憶に残ることとなった。
エピソード・背景
- ルイーゼ・ライナーの「伝説の電話」
元夫ジーグフェルドの再婚を知ったアンナが、涙を堪えながら祝福の電話をかけるシーン。このわずか数分の演技がアカデミー賞を決定づけたと言われています。 - 巨大なセット
劇中の名曲「A Pretty Girl Is Like a Melody」で使われた巨大な回転階段のセットは、重さ数トン、製作費に当時の金額で数万ドルが費やされました。 - 本人たちの出演
ジーグフェルド・フォリーズの実際のスターであるファニー・ブライスやレイ・ボルジャーが本人役で出演し、当時のステージを再現しています。 - ビリー・バークの監修
ジーグフェルドの二人目の妻であるビリー・バーク(本物の女優)が、作品の監修として参加しました。劇中で彼女を演じたのはマーナ・ロイです。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、一人の男の半生を通じて、エンターテインメントが持つ「夢」と、それを維持するための「過酷な対価」を描いています。ジーグフェルドの強欲さや欠点をも包み込むような、ウィリアム・パウエルの優雅な演技が、この壮大な物語を支えています。どれほど時代が変わっても、人々が美しいものに寄せる憧れは変わらない。そんなショービジネスの本質を体現している一作です。
〔シネマ・エッセイ〕
これほどまでに「ハリウッドの贅沢」を煮詰めたような映画は他にありません。画面いっぱいに広がる羽根飾り、シルクのドレス、そしてどこまでも続く階段。それは大恐慌に喘いでいた当時の観客にとって、現実を忘れさせてくれる唯一の魔法だったのでしょう。
ルイーゼ・ライナーの震える声と、ウィリアム・パウエルの崩れない微笑み。この二人の対比が、華やかなステージの裏側にある人間臭いドラマに深みを与えています。「もっと高く」。その最期の言葉は、単なる興行師の執着ではなく、私たち人間が常に抱く「より美しい世界へ」という願いそのもののように響きます。

