マーサ・ミーツ・ボーイズ
Martha, Meet Frank, Daniel and Laurence
(イギリス 1998)
[製作] グレイン・マーミオン
[監督] ニック・ハム
[脚本] ピーター・モーガン
[撮影] デヴィッド・ジョンソン
[音楽] エド・シアーマー
[ジャンル] 恋愛/コメディ
キャスト

モニカ・ポッター
(マーサ・ダウリング)

ルーファス・シーウェル
(フランク・マッキーン)

トム・ホランダー
(ダニエル・アルフリー)

ジョセフ・ファインズ
(ローレンス・ラヴレス)
レイ・ウィンストン (ペダーセン)
ストーリー
人生に行き詰まりを感じ、衝動的にアメリカからロンドンへやってきたマーサ。彼女はロンドンの空港で、偶然にも性格の全く違う3人の男たちと出会うことになる。
一人目は、エリートだが傲慢な広告マンのローレンス。彼は空港で偶然出会ったマーサに一目惚れする。二人目は、自信家でプレイボーイの俳優ダニエル。彼はマーサを口説き落とそうと必死になる。そして三人目は、理屈っぽくてどこか抜けている橋梁設計士のフランク。彼は公園で偶然マーサと知り合い、彼女の不思議な魅力に惹かれていく。
実はこの3人の男たちは、学生時代からの腐れ縁で結ばれた大親友同士だった。お互いに「最高の女性に出会った!」と報告し合うものの、まさかそれが同一人物であるとは夢にも思わない。マーサは3人それぞれとデートを重ねる中で、彼らが友人同士であることに気づき始め、ある「仕掛け」を思いつく。一方、男たちは自分たちの友情が、一人の女性を巡って崩壊の危機にあることを知り、パニックに陥る。
物語のクライマックスは、舞台がアイスランドへと移る。3人の男たちは、マーサが誰を選ぶのか、あるいは誰とも結ばれないのかを確認するために彼女を追う。
ダニエルは相変わらずの自信過剰さで自爆し、フランクも持ち前の理屈っぽさが災いしてチャンスを逃してしまう。結局、マーサが最終的に選んだのは、一番不器用ながらも純粋に彼女自身を見つめようとしたローレンスだった。
しかし、この映画の面白いところはラストシーンにある。マーサとローレンスが結ばれてハッピーエンドかと思いきや、実は空港での出会いの裏には、さらに巧妙な「偶然を装った計画」があったことが示唆される。友情はボロボロになりつつも、どこか憎めない彼らの関係性は続き、マーサという嵐に翻弄された3人の男たちの奇妙な夏は、少しの成長と爽やかな後味を残して幕を閉じる。
エピソード・背景
- 豪華な英国俳優の競演
『恋におちたシェイクスピア』のジョセフ・ファインズ、『ホリデイ』のルーファス・シーウェル、そして個性派トム・ホランダー。今思うと、当時の英国若手実力派が揃い踏みしている贅沢なキャスティングです。 - モニカ・ポッターの魅力
『スパイダー』で見せたシリアスな演技とは一変、本作では自由奔放でチャーミングなアメリカ人女性を演じています。彼女のキラキラした笑顔が、皮肉屋な英国男たちを骨抜きにする説得力を与えています。 - アイスランド・ロケ
結末の舞台がロンドンからアイスランドへと急展開するのも本作の特徴です。荒涼とした、しかし美しい風景が、ドタバタな恋の騒ぎをどこか幻想的で特別なものに引き立てています。 - 英国流の自虐ユーモア
「自分がいかにダメな男か」を競い合うような3人のやり取りには、イギリス映画特有の自虐的でシニカルな笑いが詰まっています。かっこいいはずの俳優たちが徹底的に情けなく描かれるのが魅力です。 - 脚本の妙
3人の視点が重なり合い、同じ時間軸が別々の角度から描かれる構成が、後の真相解明へと繋がる心地よいパズル感覚を観客に与えてくれます。 - 別タイトルの存在
アメリカ公開時には『The Very Thought of You』というタイトルに変更されました。こちらの方がロマンティックな印象ですが、元の3人の男の名前が入ったタイトルの方が、映画のドタバタ感をよく表しています。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、運命のいたずらに翻弄される男女を描きながらも、その根底にあるのは「友情と独占欲」の滑稽なバランスです。一人の女性を聖母かミューズのように崇める男たちが、実は彼女の手のひらで転がされているに過ぎないという構図は、ロマンティック・コメディでありながら鋭い人間観察の物語でもあります。
誰が誰と結ばれるかという結果以上に、恋によって化けの皮が剥がれていく男たちの姿が愛おしく、最後には「恋も友情も、結局はままならないものだ」という、軽やかで少しほろ苦い真理に辿り着きます。ロンドンの街並みとアイスランドの大自然を背景に、90年代らしいポップな感性で「自分探しと恋の行方」を綴った、爽快感あふれる一作です。


