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嵐が丘 Wuthering Heights 1939 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】| ローレンス・オリヴィエ

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荒野に轟く愛の絶叫。死をも超越する、二つの魂の復讐と激情

嵐が丘(字幕版)

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イングランドの荒涼とした嵐が丘を舞台に、身分違いの恋に引き裂かれた男女の執念を描く。ローレンス・オリヴィエの野性味溢れる存在感が、愛を憎しみに変えた男の悲劇を鮮烈に刻みつける文芸映画の至宝。

嵐が丘
Wuthering Heights
(アメリカ 1939)

[製作] サミュエル・ゴールドウィン
[監督] ウィリアム・ワイラー
[原作] エミリー・ブロンテ
[脚本] ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー
[撮影] グレッグ・トーランド
[音楽] アルフレッド・ニューマン
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 撮影賞
NY批評家協会賞 作品賞

キャスト

ローレンス・オリヴィエ
(ヒースクリフ)

マール・オベロン
(キャシー・リントン)

デヴィッド・ニーヴン
(エドガー・リントン)


フローラ・ロブソン (エレン・ディーン)
ヒュー・ウィリアムズ (ヒンドリー)
ジェラルディン・フィッツジェラルド (イザベラ・リントン)
ドナルド・クリスプ (Dr.ケネス)
レオ・G・キャロル (ジョゼフ)
マイルズ・マンダー (ロックウッド)


受賞・ノミネートデータ

  • 第12回アカデミー賞(1940年)
    • 受賞:撮影賞(白黒)
    • ノミネート:作品賞、監督賞(ウィリアム・ワイラー)、主演男優賞(ローレンス・オリヴィエ)、助演女優賞(ジェラルディン・フィッツジェラルド)、脚色賞、作曲賞、美術賞
  • 評価
    • エミリー・ブロンテの古典小説を、巨匠ウィリアム・ワイラーが映画化。原作の持つ不気味なほどの情熱を格調高い映像で再現し、ニューヨーク映画批評家協会賞では作品賞を受賞するなど、批評家からも極めて高い評価を得ました。


あらすじ

ヨークシャーの荒野に立つ屋敷「嵐が丘」。主人のアンショーは、旅先で拾った身寄りのない少年ヒースクリフを連れ帰り、実の娘キャシー(マール・オベロン)と共に育てる。二人はやがて強く惹かれ合うようになるが、父の死後、跡を継いだ兄ヒンドリーはヒースクリフを激しく虐待し、厩番の身分へと追い落とす。

キャシーはヒースクリフを愛しながらも、隣家の裕福で洗練された青年エドガー・リントン(デヴィッド・ニーヴン)からの求婚に心が揺れる。彼女が「ヒースクリフと結婚すれば私の地位が下がる」と漏らすのを聞いてしまったヒースクリフは、絶望し、嵐の夜に姿を消す。数年後、莫大な富を築いて紳士として帰還したヒースクリフが見たのは、リントンと結婚したキャシーの姿だった。

ヒースクリフは復讐のため、エドガーの妹イザベラ(ジェラルディン・フィッツジェラルド)を誘惑して結婚し、嵐が丘を買い取ってかつての宿敵たちを支配していく。しかし、彼の執念の根底にあるのはキャシーへの狂おしいほどの愛だった。すれ違う心に身を削り、病に倒れたキャシーは、ヒースクリフの腕の中で「あなたの魂から離れたくない」と告げて息を引き取る。その十数年後、死期を悟ったヒースクリフは、雪の夜にキャシーの幻影を追って荒野へ消える。翌朝、寄り添って歩く二人の霊魂の姿が、かつての思い出の場所に見えるのだった。


エピソード・背景

  • ワイラーとオリヴィエの衝突
    舞台出身のローレンス・オリヴィエは当初、映画的な抑えた演技を求めるワイラー監督と激しく対立しました。しかし、この指導が後のオリヴィエを偉大な映画俳優へと成長させたと後に本人が回想しています。
  • 原作の「半分」の物語
    原作は二世代にわたる壮大な物語ですが、映画ではキャシーの死とヒースクリフの最期に焦点を絞り、前半部分をメインに構成されています。これにより、二人の恋愛悲劇としての純度が高められました。
  • 撮影賞受賞
    撮影監督のグレッグ・トーランドは、奥行きのある「ディープ・フォーカス」に近い手法を使い、荒野の陰影を見事に捉えました。この映像美は、後の『市民ケーン』の先駆けとも言われています。
  • マール・オベロンの美貌
    主演のマール・オベロンは、そのエキゾチックな美しさで、誇り高くも壊れやすいキャシーを見事に演じきりました。
  • ハリウッド製のイギリス荒野
    実際にイギリスで撮影されたのではなく、カリフォルニア州の丘陵地に1000トンものヒースの根を植え、ヨークシャーの荒野を完璧に作り上げました。
  • ラストシーンの挿入
    監督はヒースクリフが絶望の中で死ぬ幕切れを希望していましたが、製作者の意向で二人の幽霊が幸せそうに歩む救いのあるラストシーンが付け加えられました。


まとめ:作品が描いたもの

本作が描き出すのは、社会的な地位や道徳さえも焼き尽くす「絶対的な愛」の恐ろしさと美しさです。ヒースクリフにとって、キャシーは恋人である以上に自分自身の魂の一部であり、彼女を失うことは自己の崩壊を意味していました。

「私はヒースクリフよ」というキャシーの台詞に象徴されるように、二人の関係は共依存を超えた運命的な融合として描かれています。愛が憎しみへと反転し、周囲の人々を巻き込んで破滅へと向かう過程は凄惨ですが、その果てに訪れる死後の再会は、この世のしがらみから解放された唯一の救いとして、観る者の心に深い余韻を残します。


【シネマ・エッセイ】

荒野の風が吹き荒れる音とともに、キャシーの名前を呼ぶヒースクリフの絶叫が聞こえてくるようです。ローレンス・オリヴィエのあの鋭く、それでいて悲しみに満ちた眼差しは、一度観たら忘れられません。

自分のプライドや安定のために愛を裏切ってしまったキャシーの弱さも、それゆえに狂気に走るヒースクリフの毒々しさも、すべてがこの「嵐が丘」という呪われた地の一部であるかのように感じられます。映像の陰影が、二人の心の闇と情熱を雄弁に物語っています。

死が二人を分かつのではなく、死によってしか二人は一つになれなかった。その残酷なまでの純愛に接すると、日常の悩みさえも吹き飛んでしまうような圧倒的なエネルギーを感じます。文芸映画の枠を超えた、魂の記録とも呼べる傑作です。

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