エンパイア・ステート・ビルで見失った約束、運命の悪戯に引き裂かれた二人の純愛。レオ・マッケリーが贈る、ロマンス映画の至高。

豪華客船で出会った遊び人の画家ニッキーと、元歌手のテリー。互いに婚約者がいながらも惹かれ合った二人は、半年後の独立記念日にエンパイア・ステート・ビルでの再会を誓う。しかし、約束の当日、過酷な運命が彼女の足跡を阻む。
ケーリー・グラントとデボラ・カーの気品溢れる演技が、切ないすれ違いを至福のラブストーリーへと昇華させた、ハリウッド黄金期を代表する名作。
めぐり逢い
An Affair to Remember
(アメリカ 1957)
[製作] ジェリー・ウォルド/レオ・マッケリー
[監督] レオ・マッケリー
[原作] レオ・マッケリー/ミルドレッド・クラム
[脚本] レオ・マッケリー/デルマー・デイヴィス/ドナルド・オグデン
[撮影] ミルトン・R・クラスナー
[音楽] ヒューゴ・フリードホーファー/ハリー・ウォーレン
[ジャンル] 恋愛/ドラマ
キャスト

ケーリー・グラント
(ニッキー・フェラント)

デボラ・カー
(テリー・マッケイ)
キャサリン・ネスビット (祖母ジャノー)
リチャード・デニング (ケネス・ブラッドリー)
ニーヴァ・パターソン (ロイス・クラーク)
ロバート・Q・ルイス (アナウンサー)
チャールズ・ワッツ (ネッド・ハサウェイ)
受賞・ノミネートデータ
| 受賞年 | 賞 | 部門 | 結果 |
| 1958 | 第30回アカデミー賞 | 撮影賞 | ノミネート |
| 1958 | 第30回アカデミー賞 | 衣裳デザイン賞 | ノミネート |
| 1958 | 第30回アカデミー賞 | 歌曲賞 | ノミネート |
| 1958 | 第30回アカデミー賞 | 作曲賞 | ノミネート |
評価
監督自らが手がけた1939年の『貴方をもっと好きになる』をセルフリメイクした作品であり、オリジナルを凌ぐロマンスの古典として語り継がれています。
前半の客船での軽妙でウィットに富んだ会話劇から、後半の涙を誘うドラマチックな展開への鮮やかな転換は、レオ・マッケリー監督の手腕の賜物です。
1993年の映画『めぐり逢えたら』でも重要なモチーフとして使われるなど、公開から半世紀以上を経ても「運命の恋」の象徴として多くの映画ファンに愛され続けています。
あらすじ:船上の恋、そして半年後の約束
欧州からニューヨークへ向かう豪華客船コンステレーション号。
世界的な遊び人として知られる画家ニッキー(ケーリー・グラント)は、元歌手のテリー(デボラ・カー)と運命的な出会いを果たす。
二人にはそれぞれ裕福な婚約者がいたが、船旅の間にニッキーの祖母を訪ねるなどして過ごすうち、真実の愛に目覚めていく。
ニューヨーク到着を前に、二人は「半年間、自分の力で生活を整え、それでも想いが変わらなければ再会しよう」と誓い合う。
再会の場所は、地上102階、天国に一番近い場所「エンパイア・ステート・ビル」の展望台。
期日は7月4日の独立記念日、午後5時。
ニッキーは看板描きの仕事をしながら画才を磨き、テリーもまた歌手としての自立を目指す。
そして約束の当日。ニッキーは展望台で彼女を待ち続けるが、テリーはビルを目前にして交通事故に遭い、意識を失ってしまう。
事故により歩けなくなったテリーは、ニッキーに同情されたくない一心で、消息を絶つ。
ニッキーは彼女が約束を破ったと思い込み、絶望と怒りを抱えながら日々を過ごす。
しかし、テリーへの想いを断ち切れない彼は、彼女の面影を投影した「白いショールを纏う女性」の絵を描き上げる。
クリスマスの夜。ニッキーはテリーの住所を突き止め、彼女の部屋を訪れる。
ソファに座ったまま動こうとしないテリーに対し、ニッキーは嫌味を言って立ち去ろうとするが、ふとした瞬間に、奥の部屋に自分が描いたあの絵が飾られているのを見つける。
テリーが事故に遭い、足が不自由になったために来られなかったことを悟ったニッキーは、彼女を強く抱きしめる。
二人の間に言葉は要らず、ただ再び巡り会えた奇跡を噛み締めながら、物語は感動の終幕を迎える。
エピソード・背景
- セルフリメイクの成功例
マッケリー監督は、自身の過去作をカラーのシネマスコープで撮り直すにあたり、より洗練されたセリフ回しと映像美を追求しました。結果として、カラー作品である本作が決定版となりました。 - ケーリー・グラントの気品
「歩く洗練」と称されたグラントは、本作でも軽やかなユーモアと深い哀愁を見事に演じ分けました。彼が着こなすスーツや仕草は、当時の男性たちの憧れの的となりました。 - 主題歌の魅力
劇中で流れる「An Affair to Remember (Our Love Affair)」は、名歌手ヴィック・ダモンが歌い、大ヒットを記録。映画のロマンチックな雰囲気を決定づける重要な要素となりました。 - デボラ・カーの歌声
歌手役のデボラ・カーですが、歌唱シーンはマーニ・ニクソンによって吹き替えられています。マーニは後に『王様と私』や『マイ・フェア・レディ』でも吹き替えを担当した伝説のゴーストシンガーです。 - エンパイア・ステート・ビルの聖地化
本作の影響で、エンパイア・ステート・ビルは「恋人たちの待ち合わせ場所」として世界的に有名になりました。バレンタインデーには多くのカップルが訪れる定番のスポットとなっています。 - アドリブの多用
レオ・マッケリー監督は、撮影現場で俳優たちの自発的な演技を重視し、多くのセリフが即興に近い形で生まれています。それが、船上シーンの自然な会話のテンポを生みました。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、華やかな社交界に身を置く男女が、利害や虚飾を捨てて「真実の自分」として愛し合おうとする姿を記録した物語でした。
すれ違いの悲劇を描きながらも、根底に流れるのは、相手を信じ抜くことの尊さと、自己犠牲を伴う深い慈しみです。
ニューヨークの摩天楼に消えた約束が、雪の降るクリスマスに奇跡として結実する。その王道とも言えるストーリー構成は、今もなお「ロマンス映画の教科書」として輝き続けています。
〔シネマ・エッセイ〕
オレンジ色の夕日が沈む船上、カクテルグラスを傾けながら交わされる、洒落た会話。ケーリー・グラントの少しはにかんだような笑みと、デボラ・カーの凛とした美しさ。彼らが交わした「半年後の約束」は、あまりにも純粋で、だからこそ事故という残酷な現実が胸を締め付けます。
展望台で時計を何度も見やり、人波が消えても立ち去れないニッキー。一方で、すぐ近くまで来ながら、一歩も動けなくなってしまったテリー。この「あと数メートル」の距離が、運命の深淵のように感じられます。
最後に、言葉を使わずにすべてが通じ合うあの瞬間。ショールを肩にかけたテリーを見つめるニッキーの瞳に宿る、怒りが驚きへ、そして深い愛へと変わっていく光。私たちはその奇跡を目の当たりにして、信じることの美しさを、もう一度思い出すのです。

