モル・フランダース
Moll Flanders
(アメリカ 1996)
[製作総指揮] モーガン・オサリヴァン
[製作] ペン・デンシャム/リチャード・バートン・ルイス/ジョン・ワトソン/ケヴァン・バーカー/テリー・クラーク/ティム・ハーバート
[監督] ペン・デンシャム
[原作] ダニエル・デフォー
[脚本] ペン・デンシャム
[撮影] デヴィッド・タッターソル
[音楽] マーク・マンシーナ
[ジャンル] ドラマ/文芸
キャスト

ロビン・ライト
(モル・フランダース)

モーガン・フリーマン
(ヒブル)

ストッカード・チャニング
(オルワーシー夫人)
ジョン・リンチ (ジョナサン・フィールディング)

ブレンダ・フリッカー
(マザワッティ夫人)
エイスリング・コーコラン (フローラ)
ジェラルディン・ジェームズ (エドナ)
ジム・シェリダン (神父)
ストーリー
18世紀、ロンドンのニューゲート監獄で処刑を待つ母親から産み落とされた少女モル。修道院で育てられた彼女は、高潔な精神と類まれな美貌を持って成長しますが、その美しさが災いし、周囲の男たちの欲望に翻弄されることになります。修道院を飛び出し、生きるために盗みや娼婦へと身を落とす彼女は、社会の底辺で絶望を味わいます。
そんな彼女を拾ったのが、野心家で強欲な娼館の主オールワーシー夫人でした。そこでモルは、物静かで知的な黒人の使用人ヒブルと出会います。ヒブルはモルの瞳の中に、どんな泥濘の中にいても消えない「誇り」を見抜き、彼女を陰ながら献身的に支え、生きる知恵を授ける精神的な支柱となります。
やがてモルは、貧しくも純粋な心を持つ画家と出会い、初めて真実の愛を知ります。彼との間に娘を授かり、平穏な幸せを掴みかけたのも束の間、夫は病に倒れて帰らぬ人となり、モルは再び困窮して最愛の娘とも引き裂かれてしまいます。しかし、彼女が再び監獄へ送られ、どん底に突き落とされても、ヒブルだけは彼女を見捨てませんでした。
ヒブルはモルがアメリカの新天地へと渡る手助けをし、さらに長い年月をかけて、彼女の娘を大切に育て守り続けました。物語の終盤、ヒブルは成長した娘を連れてアメリカへと渡り、ついにモルとの再会を果たします。過去の苦難すべてを乗り越え、母と娘、そして恩人であるヒブル。血の繋がりを超えた「家族」となった彼らは、自由な空気が流れる新天地で、二度と離れることのない幸福な人生へと踏み出し、物語は感動的な大団円を迎えます。
エピソード・背景
- モーガン・フリーマンの「守護神」的魅力
本作のヒブル役は、モーガンの真骨頂とも言える「賢者」の役割です。言葉数は少なくとも、その立ち居振る舞いだけでキャラクターの誠実さが伝わってきます。 - ロビン・ライトの熱演
当時『フォレスト・ガンプ』のジェニー役で注目を浴びたロビン・ライトが、少女から老境までを見事に演じ分け、運命に抗う女性の力強さを体現しました。 - 古典の新しい解釈
ダニエル・デフォーの原作小説は、もっと「悪女」としての側面が強いのですが、この映画版ではよりロマンチックでエモーショナルな、希望に満ちた物語へと再構築されています。 - 豪華な衣装と美術
18世紀ロンドンの不潔な路地裏から、絢爛豪華な貴族の屋敷まで、当時の階級社会を象徴する美術セットと衣装が非常に美しく、視覚的にも楽しめる作品です。 - ヒブルという名前の響き
「ヒブル」という名には、どこか聖書的な響きがあり、モルにとって彼が単なる使用人ではなく、迷える魂を導く存在であったことを示唆しています。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、どれほど不遇な環境に生まれても、どれほど人生のどん底を味わっても、人間としての尊厳と「愛する力」を失わなければ、人は何度でも立ち上がれることを教えてくれます。モルという一人の女性の人生は、当時の抑圧された女性たちの代弁者でもあります。
彼女を無条件で肯定し、導き続けたヒブルという存在は、人種や身分を超えた「究極の友情」の形であり、彼の無償の愛があったからこそ、モルは最後に救いを見出すことができました。残酷な現実の中に、一筋の美しいメロディが流れるような、心に深く刻まれるヒューマンドラマです。


