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アスファルト・ジャングル The Asphalt Jungle 1950 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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完璧な計画、避けられぬ破綻。巨匠ジョン・ヒューストンが冷徹に活写した、犯罪都市の光と影。

出所したばかりの老練な犯罪者ドックが企てた、宝石店強奪の完璧な計画。招集されたプロフェッショナルたちが挑む一夜の賭けは、裏切りと不運が重なり合い、やがて非情な破滅へと転がり落ちていく。

フィルム・ノワールの金字塔として知られ、マリリン・モンローの出世作ともなった、犯罪映画の歴史を塗り替えた傑作。

アスファルト・ジャングル
The Asphalt Jungle
(アメリカ 1950)

[製作] アーサー・ホーンブロウJr.
[監督] ジョン・ヒューストン
[原作] W・R・バーネット
[脚本] ジョン・ヒューストン/ベン・マドウ
[撮影] ハロルド・ロッソン
[音楽] ミクロス・ローザ
[ジャンル] クライム/ドラマ
[受賞]
ナショナル・ボード・オブ・レビュー (監督賞
ヴェネチア映画祭 (主演男優賞(サム・ジャフィ)

キャスト

スターリング・ヘイドン (ディックス・ハンドリー)
ルイス・カルハーン (アロンゾ・D・エメリッヒ)
ジーン・ヘイゲン (ドール・コノヴァン)
ジェームズ・ホィットモア (ガス・ミニシー)
サム・ジャッフェ (ドク・アーウィン・リーデンシュナイダー)
ジョン・マッキンタイア (ハーディ)
マーク・ローレンス (‘コビー’・コブ)
バリー・ケリー (ディートリッヒ)
アンソニー・カルーソ (ルイス・チャヴェリ)
テレサ・セリ (マリア・チャヴェリ)

マリリン・モンロー
(アンジェラ・フィンリー)


ウィリアム・デイヴィス (ティモンズ)
ドロシー・トゥリー (メイ・エメリッヒ)
ブラッド・デクスター (ボブ・ブラナム)
ジョン・マックスウェル (Dr.スワンソン)


受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1951第11回ヴェネツィア国際映画祭男優賞(スターリング・ヘイドン)受賞
1951第23回アカデミー賞監督賞/助演男優賞/脚本賞/撮影賞ノミネート

評価

「強奪映画(ハイスト・ムービー)」というジャンルの基礎を築いた記念碑的作品です。犯罪を単なる悪事としてではなく、冷徹な「ビジネス」の手順として克明に描き出した手法は、後の『黄金の七人』や『オーシャンズ11』など多くの作品に影響を与えました。

ジョン・ヒューストン監督のハードボイルドな演出と、スターリング・ヘイドンが見せる不器用な男の哀愁が絶妙に融合し、犯罪者の末路を冷徹かつ叙情的に捉えています。


あらすじ:緻密な計画と運命の軋み

刑務所を出たばかりの知能犯ドック(サム・ジャッフェ)は、周到に準備してきた100万ドルの宝石強奪計画を実行に移す。資金調達役の弁護士エメリッヒ(ルイ・カルハーン)を仲介に、腕利きの金庫破り、運転手、そしてタフな「壊し屋」ディクス(スターリング・ヘイドン)らプロフェッショナルを招集する。

深夜の宝石店。計画は寸分の狂いもなく進み、一行は見事に宝石を奪い去る。しかし、逃走の際に偶然居合わせた警備員の銃弾がメンバーの一人を傷つけ、完璧だったはずの歯車が狂い始める。さらに、裏で糸を引くエメリッヒの背信が発覚し、逃亡の道は次第に閉ざされていく。


警察の捜査網が狭まる中、メンバーは一人、また一人と倒れ、あるいは捕らえられていく。黒幕の弁護士エメリッヒは、不倫相手のアンジェラ(マリリン・モンロー)が警察の尋問に屈したことで追い詰められ、自ら命を絶つ。

重傷を負いながらも故郷の牧場を目指したディクスは、恋人のドール(ジーン・ヘイゲン)と共に、かつて父が所有していたケンタッキーの草原に辿り着く。しかし、そこで彼は力尽き、愛する馬たちの群れの中で静かに息を引き取った。非情なアスファルトのジャングルを逃れた男の最期は、皮肉にも彼が焦がれ続けた美しい故郷の土の上であった。



エピソード・背景

  • マリリン・モンローの鮮烈な登場
    当時無名に近かったモンローが、弁護士の若き愛人役で出演。わずかな登場シーンながら、その妖艶な魅力は観客と映画関係者を虜にし、スターへの階段を駆け上がるきっかけとなった。
  • 徹底したリアリズム
    ヒューストンは犯罪の手順をドキュメンタリータッチで撮影。金庫破りの緊張感溢れる描写は、観客に犯罪の現場を擬似体験させるほどのリアリティを持っていた。
  • スターリング・ヘイドンの重厚感
    寡黙で武骨なディクスを演じたヘイドンは、その存在感で「都会に馴染めない野性」を体現。ヴェネツィア国際映画祭で見事に男優賞に輝いた。
  • ミクロス・ローザの劇伴
    緊張感を高める音楽は、ノワール特有の都会的で退廃的な雰囲気を完璧に補完している。
  • 原作の力
    犯罪小説の名手W・R・バーネットの原作を、ヒューストンが自ら脚色。犯罪者の側から見た人間模様を、冷笑的ながらも愛情を持って描き出した。

まとめ:作品が描いたもの

本作は、冷たいアスファルトが敷き詰められた都市をジャングルに見立て、そこで生きる「捕食者」たちの生態と挫折を記録した物語でした。そこにあるのは、英雄的な犯罪者ではなく、社会の片隅で懸命にプロの仕事を遂行しようとする、どこか空虚な男たちの姿です。

完璧な計画ですら凌駕してしまう「偶然」と「不運」、そして人間の「欲望」という不確定要素。ジョン・ヒューストンは、それらを一滴の感傷も交えずに描き出すことで、犯罪映画に深遠な哲学を与えたのです。


〔シネマ・エッセイ〕

モノクロの映像に浮かび上がる、煙草の煙と男たちの厳しい表情。スターリング・ヘイドンのあの疲れたような、けれど何かに飢えたような瞳が、都会の夜に深く沈み込んでいきます。マリリン・モンローがソファに横たわる姿は、退廃的な空気の中で唯一の華やかさを放ちますが、それさえも破滅への導火線のように感じられます。

最後、草原に倒れ伏したディクスの姿を見ていると、彼が本当に求めていたのは宝石などではなく、コンクリートに覆われる前の、あの乾いた土の匂いだったのだと気づかされます。都会という巨大な檻の中で足掻き、そして敗れ去った男たちの挽歌。映画が終わった後も、冷たいアスファルトを叩く雨の音のような、乾いた寂しさが胸に残り続けてやみません。


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