喝采の朝に賭ける夢。無名の少女が掴んだ、残酷なまでに眩しいスターの座
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田舎からニューヨークへやってきた女優志願の少女エヴァ。高慢なプロデューサーや劇作家との出会いを経て、代役という一度きりのチャンスを掴み取る。キャサリン・ヘプバーンに初めてのオスカーをもたらした、瑞々しくも激しいサクセス・ストーリー。
勝利の朝
Morning Glory
(アメリカ 1933)
[製作総指揮] メリアン・C・クーパー
[製作] パンドロ・S・バーマン
[監督] ローウェル・シャーマン
[原作] ゾエ・エイキンス
[脚本] ハワード・J・グリーン
[撮影] バートン・グレノン
[音楽] マックス・スタイナー
[ジャンル] ドラマ
[リメイク] 女優志願(1958)
[受賞] アカデミー賞主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)
キャスト

キャサリン・ヘプバーン
(エヴァ・ラヴレイス)

ダグラス・フェアバンクス・ジュニア
(ジョゼフ・シェリダン)
アドルフ・マンジュー (ルイ・イーストン)
メアリー・ダンカン (リタ・ヴァーノン)
C・オーブリー・スミス (ヘッジス)
ドン・アルヴァラード (ペピ)
フレッド・サントリー (シーモア)
リチャード・カール (ヘンリー・ローレンス)
受賞・ノミネートデータ
- 1933年 第6回アカデミー賞
- 受賞:主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)
- 評価
- キャサリン・ヘプバーンの映画出演3作目にして、最初の主演女優賞受賞作です。彼女の独特な喋り方や、脆さと強さが同居する演技は「ハリウッドに新風を吹き込んだ」と絶賛されました。一方で、当時の彼女の型破りな性格が業界内で反感を買っていたため、授賞式での拍手はまばらだったという、彼女らしい伝説も残っています。
ストーリー
バーモント州から、一旗揚げようとブロードウェイにやってきたエヴァ・ラヴレイス(キャサリン・ヘプバーン)。彼女は並外れた自信家で、演劇への情熱をマシンガントークでまくしたてる風変わりな少女だった。劇場のロビーでベテラン俳優ヘッジスと知り合った彼女は、そこから劇作家シェリダン(ダグラス・フェアバンクス・ジュニア)やプロデューサーのイーストン(アドルフ・マンジュー)との接点を持つ。
しかし、現実は甘くなく、端役さえ満足に得られない日々が続く。ある晩、イーストンの邸宅で開かれたパーティーに紛れ込んだエヴァは、酔った勢いでシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のバルコニーの場を独白。その神がかった演技は、その場にいた一同を圧倒する。そして運命の夜、新作舞台の主演女優リタが傲慢な態度で降板を宣言。イーストンは、控えの代役としてエヴァを舞台に立たせる決断を下す。
幕が上がると、エヴァは完璧な演技で観客を魅了し、舞台は大成功を収める。一晩にして「明日のスター」となったエヴァ。しかし、華やかな喝采の裏で、彼女はスターになることの孤独と、自分を支えてくれた人々との関係が変化していくことに気づく。
彼女を愛するようになったシェリダンは、彼女が「消耗品としてのスター」にならないよう願うが、エヴァは「たとえ一瞬で消える朝顔(モーニング・グローリー)のような運命だとしても、私はこの光の中にいたい」と決意を語る。名声を手に入れ、一人楽屋に残されたエヴァは、鏡に映る自分を見つめながら、勝利の朝を迎えるのだった。
エピソード・背景
- ヘプバーンの執念
彼女は原作の戯曲を読み、主役のエヴァ・ラヴレイスは「自分のためにある役だ」と確信。プロデューサーのパンドロ・S・バーマンに猛アタックして、当時すでにスターだったコンスタンス・ベネットから役を奪い取ったと言われています。 - 酔っ払いのシェイクスピア
パーティーでエヴァが『ロミオとジュリエット』を演じるシーンは、本作のハイライトです。実際に少しお酒が入っているかのような、夢見心地で狂気すら孕んだヘプバーンの演技は、現在でも「酔いどれ演技の最高峰」の一つに数えられます。 - 驚異のスピード撮影
本作はわずか18日間という短期間で撮影されました。ヘプバーンの圧倒的な集中力が、現場を牽引したと言われています。 - タイトルの意味
原題の『Morning Glory』は「朝顔」を意味します。朝に咲いて昼には萎んでしまう朝顔のように、一発屋で終わるかもしれないスターの儚さと、それでも咲き誇りたいという野心を象徴しています。 - リメイク作
1958年には、シドニー・ルメット監督、スーザン・ストラスバーグ主演で『女優志願(Stage Struck)』としてリメイクされました。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、単なる「シンデレラ・ストーリー」ではありません。夢を叶えるために必要な「図々しさ」や「犠牲」、そして頂点に立った瞬間に感じる「空虚さ」を鋭く切り取っています。エヴァ・ラヴレイスというキャラクターは、まさにキャサリン・ヘプバーンその人の野心と重なり、虚実皮膜の間に不思議な説得力を生み出しています。
〔シネマ・エッセイ〕
「私は死ぬまでスターでいるわ」――エヴァのセリフは、そのままヘプバーンの宣誓のようにも聞こえます。まだ何者でもなかった彼女が、この映画で初めてオスカー像を掴み取り、その後半世紀以上にわたって君臨し続けたことを考えると、本作は一つの「予言」だったのかもしれません。
ダグラス・フェアバンクス・ジュニアの都会的な甘さと、アドルフ・マンジューの冷徹なプロデューサー像。彼らに翻弄されながらも、最後には彼らを「観客」に変えてしまうエヴァの瞳。あの真っ直ぐな、少し怖いほどの眼差しこそが、銀幕の女王の誕生を告げるファンファーレだったのです。

