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奥様は魔女 I Married a Witch 1942

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三百年の時を超えた復讐が、甘い恋の魔法に変わる時。

魔女裁判で火刑に処された父娘の霊が、現代に蘇り復讐を誓う。しかし、標的の若き政治家に飲ませるはずの惚れ薬を、魔女自身が飲んでしまったからさあ大変。ヴェロニカ・レイクの小悪魔的な魅力が弾ける、ロマンティック・ファンタジーの元祖にして傑作。

奥様は魔女
I Married a Witch
(アメリカ 1942)

[製作] ルネ・クレール/プレストン・スタージェス
[監督] ルネ・クレール
[原作] ノーマン・マットソン/ソーン・スミス
[脚本] ロバート・ビロッシュ/マルク・コヌリー/アンドレ・リゴー/ダルトン・トランボ
[撮影] テッド・テツラフ
[音楽] ロイ・ウェッブ
[ジャンル] コメディ/恋愛/ファンタジー

キャスト

フレドリック・マーチ
(ジョナサン・ウーリー/ナサニエル/サミュエル/ウォレス)

ヴェロニカ・レイク
(ジェニファー)

ロバート・ベンチリー (Dr.ダドリー・ホワイト)

スーザン・ヘイワード
(エステル・マスターソン)

セシル・ケラウェイ (ダニエル)
エリザベス・パターソン (マーガレット)
ロバート・ウォーウィック (J・B・マスターソン)

受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1943第15回アカデミー賞作曲賞(劇映画)ノミネート
  • 評価
    • フランスから亡命した巨匠ルネ・クレールが、ハリウッドでその洒脱な才能を存分に発揮した一作です。当時、片目を隠す髪型「ピーカブー・バング」で一世を風靡したヴェロニカ・レイクの美しさと、ファンタジックな特撮が見事に融合。後の大ヒットTVシリーズ『奥様は魔女』のインスピレーションの源泉になったことでも知られ、軽妙なユーモアと洗練された映像美は、今なお色褪せない「大人のための童話」として高く評価されています。


あらすじ:煙の中から現れた復讐者

1672年のニューイングランド。魔女として処刑されたジェニファー(ヴェロニカ・レイク)と父ダニエル(セシル・ケラウェイ)は、自分たちを告発したウーリー家の一族に「代々の当主が不幸せな結婚をする」という呪いをかける。

三百年後の現代。落雷によって封印を解かれた父娘の霊は、知事候補のウォレス・ウーリー(フレドリック・マーチ)を破滅させるべく、煙の中から肉体を持って現れる。

ジェニファーは、ウォレスを自分に熱狂させて政略結婚を台無しにするため、惚れ薬を用意する。しかし、手違いでその薬を自分自身が飲んでしまい、ターゲットであるはずのウォレスを心から愛してしまう。復讐を促す頑固な父を尻目に、ジェニファーは人間の女性として、愛するウォレスを支えようと奮闘し始める。


知事選の当日、父ダニエルはウォレスを落選させようと魔術で邪魔をするが、ジェニファーの深い愛がそれを阻む。ジェニファーは自ら魔力を捨てる覚悟を決め、人間としてウォレスと結婚する。父ダニエルの霊は酒瓶の中に封じ込められ、ウーリー家の呪いは愛の力によって解かれた。

数年後。知事となったウォレスとジェニファーの間には子供が生まれ、幸せな家庭を築いていた。しかし、彼らの幼い娘がほうきに乗ろうとする仕草を見せ、ジェニファーが優しくそれをたしなめるシーンで物語は幕を閉じる。魔女の血筋は、ささやかな幸せの中に受け継がれていくのだった。


エピソード・背景

  • ヴェロニカ・レイクの魅力
    彼女のトレードマークである長い金髪と神秘的なムードは、人間離れした「魔女」役に完璧にマッチしていました。本作の成功により、彼女の「ピーカブー・バング」スタイルはさらに社会現象を巻き起こしました。
  • 主演二人の不仲説
    劇中では愛し合う二人ですが、フレドリック・マーチはヴェロニカの演技経験の少なさを嫌い、撮影現場では一触即発の状態だったという有名なエピソードがあります。しかし、ルネ・クレール監督の巧みな演出がその緊張感を隠し、素晴らしいケミストリーへと昇華させました。
  • 『奥様は魔女』への影響
    1960年代のTVシリーズ『Bewitched(奥様は魔女)』のプロデューサーは、本作のファンタジックな設定を土台にしたことを認めています。
  • 革新的な特撮
    煙の中から実体化するシーンや、透明な体ですり抜ける演出などは、当時の技術の枠を集めたものであり、観客を驚かせました。
  • ルネ・クレールの亡命時代
    ナチス占領下のフランスを離れ、アメリカで製作した本作には、ヨーロッパ的なエスプリとハリウッドの娯楽性が絶妙なバランスで共存しています。
  • サスペンスからコメディへ
    当初はシリアスな怪談話として企画されていましたが、監督の交代により、明るくロマンティックなコメディへと方向転換されました。
  • 豪華な脇役
    ウォレスの婚約者役として、後に名女優となる若き日のスーザン・ヘイワードが出演しており、その高飛車な演技が作品にアクセントを与えています。


まとめ:作品が描いたもの

『奥様は魔女』は、復讐という暗い情熱が、愛という温かな魔法に屈する過程を鮮やかに描いた物語です。ジェニファーという魔女は、魔力を使うことよりも、愛する人のために朝食を作ったり、笑顔を見せたりすることに本当の喜びを見出していきます。

この作品が今も愛されるのは、単に魔法の不思議さを描くだけでなく、人間が誰かを愛する時に生み出す「奇跡」を信じさせてくれるからです。ルネ・クレールが映し出す夢のような世界観は、日常の中にこそ、最高の魔法が隠されていることを教えてくれます。


〔シネマ・エッセイ〕

立ち上る紫煙の中から、ヴェロニカ・レイクがゆっくりと姿を現す。その一瞬で、世界は現実の重力から解き放たれ、甘美な空想の世界へと塗り替えられます。彼女の髪が片目を隠すたび、私たちは彼女が次にどんな魔法をかけるのか、息を呑んで見守ってしまうのです。

堅物の政治家が、魔女の仕掛けた罠に落ちるのではなく、彼女の純粋な愛に包まれていく。その滑稽で愛おしい物語の裏には、戦火の絶えない当時の時代背景とは対照的な、平和への祈りのような穏やかさが流れています。

ほうきに乗れなくても、呪文を唱えられなくても、愛する人と食卓を囲むだけで人生は輝き出す。酒瓶の中で文句を言う頑固な父親さえも、最後には二人の幸せを認めざるを得ない。そんな優しいエンディングに、私たちは映画が持つ本当の魔法を知るのです。

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