アン・ミラー
Ann Miller

1923年4月12日、アメリカ・テキサス・チレノ生まれ。
2004年1月22日、アメリカ・カリフォルニア・ロサンゼルスで死去(肺がん)。享年80歳。
身長170cm。
11歳の時「赤毛のアン」の端役でスクリーン・デビュー。
タップ・ダンサー女優としてミュージカル&ダンス映画で活躍。
今回は、ハリウッド黄金時代のミュージカル界において「タップダンスの女王」として君臨した、マシンガンのような足さばきを持つ女優、アン・ミラーをご紹介します。
彼女は、1分間に500回以上もタップを踏むと言われた伝説的な技術と、天真爛漫な明るさ、そして誰もが目を奪われる見事な美脚で世界中を虜にしました。しかし、そのまばゆい笑顔の裏側には、私生活での壮絶な悲劇や、スタジオとの契約に縛られた苦悩など、スクリーンからは想像もできないドラマが隠されていました。
1分間に刻む情熱。アン・ミラー、タップに捧げた不屈の人生
アン・ミラーの魅力は、何といってもパワフルで正確無比なタップダンスです。
彼女は、どんなに激しいダンスを踊っていても、常に完璧な笑顔を絶やしませんでした。そのエネルギーは観客に勇気を与え、ミュージカル映画に欠かせない存在となりました。
一方で、彼女の私生活は波乱万丈で、結婚生活での暴力や最愛の子供の喪失など、深い闇を経験しています。それでも彼女は、タップシューズを履けば最高のエンターテイナーとして立ち上がり続けました。その姿は、まさにプロフェッショナルの鏡と言えるでしょう。
✦ PROFILE & BACKGROUND
- 本名:ジョニー・ルシール・コリアー
- 生涯:1923年4月12日 ~ 2004年1月22日(享年80歳)
- 出身:アメリカ・テキサス州ヒューストン
- 背景:幼い頃に父親が失踪し、母親を養うために9歳からダンスの道へ。年齢を偽ってナイトクラブで踊っていたところを見出され、13歳でRKOと契約しました。その後MGMに移籍し、ミュージカル映画の黄金期を支える大スターとなりました。
- 功績:1分間に500回以上のタップを踏むという記録を持ち、タップダンスの技術を芸術の域まで高めました。
1. ミュージカル映画の金字塔:踊る大紐育(ニューヨーク)
ジーン・ケリーやフランク・シナトラと共演した、MGMミュージカルを代表する傑作です。 アンが演じた人類学者のクレアは、都会的で知的、かつ情熱的な女性。博物館でのダンスシーン「Prehistoric Man」で見せる彼女のタップは、あまりに速く、当時の録音技術では音が重なって聞こえてしまうため、後から音を別撮りしたという伝説が残っています。彼女の弾けるような魅力が、ニューヨークの街並みと見事に調和した一作です。
2. 華麗なるタップの饗宴:イースター・パレード
ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアという二大スターの競演作で、アンはアステアの元パートナー役を演じました。 アステアとのダンスシーンはもちろん、ソロで見せる「Shakin’ the Blues Away」は、彼女のキャリアの中でも屈指の名パフォーマンス。長い脚を自在に操り、重力を感じさせない軽やかなステップは、共演したアステアさえも感嘆させたと言われています。
3. 妖艶な大人の魅力:キス・ミー・ケイト
シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を劇中劇として描いた名作ミュージカル。 アンは勝ち気でセクシーな女優役を演じ、持ち前のコメディセンスと圧倒的なダンスを披露しました。特に、テーブルの上で踊りまくる「Too Darn Hot」のシーンは、彼女のダイナミックなタップの魅力が凝縮されています。3D映画として製作された本作で、彼女のステップはスクリーンの外まで飛び出すような迫力を放っていました。
🎭 アン・ミラーを巡る珠玉のエピソード集
1. 悲劇を乗り越えた「笑顔の仮面」
彼女の最初の結婚生活は、夫からの激しい暴力に晒されるという地獄のようなものでした。妊娠中だった彼女は、夫に階段から突き落とされ、背骨を骨折し、お腹の子供を失うという悲劇に見舞われました。しかし、彼女はそのわずか数週間後、コルセットで体を固め、激痛に耐えながら『イースター・パレード』の撮影に臨みました。スクリーンで見せるあの輝くような笑顔の裏に、これほどの苦痛が隠されていたことは、当時の誰も知りませんでした。
2. 自称「宇宙人との交信」?
晩年の彼女は、自分が過去にエジプトの女王だったなどの「前世」や「占星術」に深く傾倒し、独特のスピリチュアルなキャラクターでも知られるようになりました。これを「風変わりだ」と笑う人もいましたが、過酷な現実を生き抜いてきた彼女にとって、それは自分を守るための精神的な支柱だったのかもしれません。
3. 「カツラ」と「メイク」へのこだわり
彼女は完璧なスター像を維持することに非常に敏感でした。特にボリュームのあるカツラと、つけまつげを多用した濃いメイクは彼女のトレードマーク。晩年まで「人前に出る時は完璧なアン・ミラーでなければならない」という信念を貫き、自宅の中でも常にフルメイクで過ごしていたという逸話があります。
4. 契約に縛られた「万年2番手」の葛藤
MGMという巨大スタジオに所属していた彼女は、その実力を認められながらも、主役は常にジュディ・ガーランドなどのトップスターに回され、自分は「主役を食う助演」というポジションに甘んじることが多くありました。本人はこれに不満を感じることもありましたが、結果として彼女が登場するシーンが映画の中で最も印象的になることが多く、ファンからは絶大な支持を得ていました。
5. ブロードウェイでの劇的な復活
映画の時代が終わり、一度は忘れ去られかけた彼女でしたが、1979年にブロードウェイ・ミュージカル『Sugar Babies』でカムバック。50代とは思えないパワフルなタップを披露し、再び大ブームを巻き起こしました。彼女は生涯現役を貫き、「タップこそが私の人生」という言葉を体現し続けました。
📝 まとめ:リズムに命を刻んだ不屈の女王
アン・ミラーは、どんなに冷たい雨が降る人生の中でも、タップの音で虹をかけてみせた女性です。
私生活での批判やゴシップを寄せ付けないほどの圧倒的なパフォーマンス、そして悲劇を隠し通したプロ根性。彼女が刻んだステップの一つ一つには、単なる技術を超えた「生きる力」が宿っていました。彼女のタップは、今もなおミュージカル映画を愛する人々の心の中で、明るく力強いリズムを刻み続けています。
[出演作品]
1934 年 11 歳
紅雀(赤毛のアン) Anne of Green Gables
1935 年 12 歳
お人好しの仙女 The Good Fairy
1936 年 13 歳
デビル・オン・ホースバック The Devil on Horseback
1937 年 14 歳
靴を脱いだ女 The Life of the Party
ステージ・ドア Stage Door
新人豪華版 New Faces of 1937
1938 年 15 歳
処女読本 Having Wonderful Time
ラジオシティ・レヴェルズ Radio City Revels
我が家の楽園 You Can’t Take It With You
ルーム・サーヴィス Room Service
ターニッシュド・エンジェル Tarnished Angel
1940 年 17 歳
女学生の恋 Too Many Girls
ヒット・パレード1941 Hit Parade of 1941
メロディ・レンチ Melody Ranch
1941 年 18 歳
タイム・アウト・フォー・リズム Time Out for Rhythm
ゴー・ウエスト、ヤング・レディ Go West, Young Lady
1942 年 19 歳
綱渡りディジーの災難 True to the Army
プライオリティズ・オン・パレード Priorities on Parade
1943 年 20 歳
Reveille with Beverly
What’s Buzzin’, Cousin?
1944 年 21 歳
ヘイ、ルーキー Hey, Rookie
セイラーズ・ホリデー Sailor’s Holiday
ジャム・セッション Jam Session
カロライナ・ブルース Carolina Blues
1945 年 22 歳
イーディ・ワズ・ア・レディ Eadie Was a Lady
イヴ・ニュウ・ハー・アップルズ Eve Knew Her Apples
1946 年 23 歳
恋のブラジル The Thrill of Brazil
1948 年 25 歳
The Kissing Bandit
1949 年 26 歳
1950 年 27 歳
ウォッチ・ザ・バーディ Watch the Birdie
1951 年 28 歳
テキサス・カーニバル Texas Carnival
ブロードウェイへの2枚の切符 Two Tickets to Broadway
1952 年 29 歳
ラブリー・トゥ・ルック・アット Lovely to Look At
1953 年 30 歳
キス・ミー・ケイト Kiss Me Kate
スモール・タウン・ガール Small Town Girl
1954 年 31 歳
我が心に君深く Deep in My Heart
1955 年 32 歳
艦隊は踊る Hit the Deck
1956 年 33 歳
The Opposite Sex
グレート・アメリカン・パスタイム The Great American Pastime
1976 年 53 歳
名犬 ウォン・トン・トン Won Ton Ton, The Dog Who Saved Hollywood
1984 年 61 歳
ザッツ・ダンシング That’s Dancing
1993 年 70 歳
ザッツ・エンタテインメント PART3 That’s Entertainment! III





