オリヴィア・デ・ハヴィランド
Olivia de Havilland

1916年7月1日、日本・東京都生まれ。
2020年7月26日、フランス・パリで永眠。享年104歳。
本名オリヴィア・メアリー・デ・ハヴィランド。
身長160cm。
父は英国教授で弁護士、母は元女優。
一つ違いの妹はジョーン・フォンテイン。
ノルマンディーのハヴェルランド家の末裔。
幼い頃に両親が離婚し、カリフォルニアに渡る。
「風と共に去りぬ」のメラニー役を好演した。
「女相続人」でオスカーを獲得。
今回は、ハリウッド黄金期において「最も気高く、最も勇敢な伝説」として知られ、104歳という天寿を全うした大女優、オリヴィア・デ・ハヴィランドをご紹介します。
彼女は『風と共に去りぬ』の聖女メラニー役で世界的な慈愛の象徴となりましたが、その素顔は非常に意志の強い「戦う女性」でした。俳優の権利を守るために巨大スタジオを相手取って裁判を起こし、歴史的な勝利を収めた(通称「デ・ハヴィランド法」)エピソードは、今の映画界の基礎を作った功績として語り継がれています。
妹ジョーン・フォンテインとの世紀の不仲説や、二度のアカデミー賞受賞など、その人生はまさに「凛とした強さ」に彩られた100年のドラマでした。
気高き聖女、そして不屈の闘士。オリヴィア・デ・ハヴィランド、104年の軌跡
オリヴィア・デ・ハヴィランドの魅力は、見る者を包み込むような温かい微笑みと、その奥に秘められた鋼のような精神力のコントラストにあります。
彼女は、初期にはエロール・フリンの相手役として「守られる美女」の典型でしたが、自らの才能を証明するために果敢に役の幅を広げ、複雑な心理描写を必要とする難役に次々と挑戦しました。
私生活では常にエレガントで、読書や詩を愛する教養人でありながら、理不尽なシステムには決して屈しない。その高潔な生き方は、後世の俳優たちにとっての永遠の模範となっています。
✦ PROFILE & BACKGROUND
- 本名:オリヴィア・メアリー・デ・ハヴィランド
- 生涯:1916年7月1日 ~ 2020年7月26日(享年104歳)
- 出身:日本・東京(父が特許弁護士として東京に赴任していたため、聖路加国際病院で誕生)
- 背景:幼少期にカリフォルニアへ移住。舞台『真夏の夜の夢』での熱演が認められ映画界へ。1939年の『風と共に去りぬ』で不動の地位を築きます。1950年代以降はフランス・パリに移住し、ヨーロッパの気品を纏った大女優として尊敬を集め続けました。
- 功績:アカデミー主演女優賞を2度受賞(1946年、1949年)。2017年には、101歳で大英帝国勲章「デイム」の称号を授与されました。
🏆 主な受賞リスト
| 年 | 賞名 | 部門 | 対象作 |
| 1946 | アカデミー賞 | 主演女優賞 | 遥かなる我が子 |
| 1948 | ベネチア国際映画祭 | 女優賞 | 蛇の穴 |
| 1949 | アカデミー賞 | 主演女優賞 | 女相続人 |
| 1949 | ニューヨーク映画批評家協会賞 | 女優賞 | 女相続人 |
| 1952 | ゴールデングローブ賞 | 主演女優賞 | 謎の佳人レイチェル |
| 1986 | ゴールデングローブ賞 | 助演女優賞(TV部門) | アナスタシア/光・ゆらめいて |
1. 慈愛と芯の強さの体現:風と共に去りぬ
スカーレット・オハラとは対照的な、純粋で思慮深く、揺るぎない愛を持つ女性メラニー・ハミルトンを演じました。
ともすれば退屈になりがちな「善人」という役どころを、オリヴィアは深い知性と内に秘めた強靭な意志を持って演じ、作品に道徳的な重みを与えました。彼女の存在があったからこそ、スカーレットの激しさが際立ち、物語が単なる愛憎劇を超えた人間ドラマへと昇華されました。彼女自身、このメラニー役を生涯誇りに思い、「彼女こそが真のスカーレットよりも強い女性だった」と語っています。
2. 醜いアヒルの子の悲劇と復讐:女相続人
莫大な遺産を相続する予定ながら、内気で不器用なため父に疎まれる娘キャサリンを演じました。
前半の、愛を求めて怯えるような震える演技から、後半、冷酷な復讐者へと変貌を遂げるまでの変化は圧巻の一言です。自らの美貌を完全に封印し、孤独な女性の魂の叫びを表現したこの演技で、彼女は2度目のアカデミー賞を受賞。彼女が「美しき添え物」ではなく、映画史に名を残す偉大な「性格俳優」であることを証明した金字塔的な作品です。
3. 社会問題への果敢な挑戦:蛇の穴
精神病院の劣悪な環境と、心の病に苦しむ女性の姿をリアルに描いた衝撃作です。
オリヴィアは、自身のアイデンティティを見失い、混濁した意識の中で戦う主人公を、ノーメイクに近い状態で熱演しました。当時はタブー視されていた精神疾患というテーマに真っ向から取り組み、リアリティを追求するために実際に病院を視察するなど、徹底した役作りを行いました。この作品での彼女の演技は、当時のアメリカ社会に大きな反響を呼び、精神医療の改善を促すきっかけの一つになったとも言われています。
📜 オリヴィア・デ・ハヴィランドを巡る知られざるエピソード集
1. 映画界を変えた「デ・ハヴィランド法」
1940年代当時、スタジオは俳優を「所有物」のように扱い、休業期間を契約期間に上乗せして拘束し続けることができました。オリヴィアはこれに異を唱え、ワーナー・ブラザースを提訴。周囲からは「キャリアが終わる」と忠告されましたが、彼女は見事勝利。これにより、俳優の契約期間は暦通り7年までとする法律が確立され、現代の「フリーエージェント」の先駆けとなりました。
2. 妹ジョーン・フォンテインとの「100年戦争」
実の妹ジョーンもまたアカデミー賞女優でしたが、二人は幼少期から激しいライバル関係にありました。1941年のアカデミー賞では二人同時にノミネートされ、妹が先に受賞したことで溝はさらに深まりました。長年、公の場でも無視し合い、2013年にジョーンが亡くなるまで和解することはありませんでしたが、オリヴィアは妹の訃報に接し、「深い悲しみに暮れている」と静かにコメントを残しました。
3. エロール・フリンとの「叶わぬ恋」
映画史上最高のスクリーン・カップルと言われたエロール・フリン。オリヴィアは後に「彼を深く愛していた」と告白していますが、フリンの私生活が奔放すぎたため、自制心の強い彼女は決して一線を越えることはありませんでした。フリンが亡くなった際、彼女は「私の心の一部は、彼と共に逝ってしまった」と語っており、その清らかな思慕はファンの間で今も語り草となっています。
4. 出生の地・日本への愛
東京で生まれたオリヴィアは、幼少期に離れた後も日本に対して特別な親近感を持っていました。100歳のお祝いの際にも、自身が東京生まれであることを誇らしく語り、東日本大震災の折には、被災した人々へ向けて心のこもった温かいメッセージを贈ってくれました。彼女の慈愛に満ちた精神には、どこかオリエンタルな優雅さが漂っていました。
5. パリでの「デイム」としての生活
1950年代にフランス人ジャーナリストと結婚して以来、彼女はパリに居を構えました。ハリウッドの喧騒から離れ、セーヌ川のほとりで優雅に老いを重ねる彼女の姿は、まさに生きた伝説。100歳を過ぎても自転車に乗り、毎日シャンパンを嗜み、届くファンレターには自ら万年筆で返信を書くという、凛とした生活を最期まで貫きました。
6. 101歳での「名誉毀損裁判」
101歳の時、ドラマ『フュード/確執 ベティvsジョーン』での自身の描かれ方が不当だとして、製作会社を提訴しました。最高裁まで争い、結果的に敗訴はしましたが、「自分の名誉と真実のために戦う」という彼女の闘志は100歳を超えても全く衰えていませんでした。その不屈の精神こそが、彼女を104年という長い人生の勝者にしたのです。
📝 まとめ:100年の時を越えて輝く、至高のダイヤモンド
オリヴィア・デ・ハヴィランドは、ハリウッドが黄金期から現代へと変貌する過程を、最も気高く見届けた証人でした。
彼女が演じたメラニーのような深い優しさと、実生活で見せた法廷闘争のような鋭い強さ。その両方を持ち合わせていたからこそ、彼女は単なる「過去のスター」に留まらず、時代を切り拓く「開拓者」であり続けました。彼女が戦って勝ち取った自由は、今を生きるすべての俳優たちの権利として息づいています。
104歳で静かにその生涯を閉じるまで、彼女は常に自分らしくあることを大切にしました。派手なスキャンダルや過度な自己主張を避け、誠実に役と向き合い、自らの人生を丁寧に生きた彼女の姿は、時代が変わっても色褪せない価値を持っています。彼女の作品を観るたびに、私たちは「本当の強さとは、静かな誠実さの中にある」ということを、そっと思い出させてくれるはずです。
[出演作品]
1935 19歳
真夏の夜の夢 A Midsummer Night’s Dream
ブラウンの怪投手 Alibi Ike
頑張れキャグニイ The Irish in Us
1936 20歳
1937 21歳
Call It a Day
恋愛合戦 It’s Love I’m After
The Great Garrick
1938 22歳
Hard to Get
1939 23歳
太平洋の翼/海の荒鷲 Wings of the Navy
女王エリザベス The Private Lives of Elizabeth and Essex
風と共に去りぬ Gone with the Wind
犯人は誰だ Raffles
1940 24歳
My Love Came Back
1941 25歳
Hold Back the Dawn
壮烈第七騎兵隊 The y Died with Their Boots On
1942 26歳
男性 The Male Animal
1943 27歳
Thank Your Lucky Stars
カナリヤ姫 Princess O’Rourke
陽気な女秘書 Gvernment Girl
1946 30歳
まごころ Devotion
The Well-Groomed Bride
1948 32歳
1949 33歳
アカデミー賞主演女優賞
ゴールデン・グローブ賞主演女優賞
ニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞
1952 36歳
1955 39歳
王女アナ・メンドーサ That Lady
見知らぬ人でなく Not as a Stranger
1956 40歳
恋は巴里で The Ambassador’s Daughter
1958 42歳
1959 43歳
Libel
1962 46歳
Light in the Piazza
1964 48歳
不意打ち Lady in a Cage
1966 50歳
昼酒 Noon Wine (TV)
1970 54歳
冒険者 The Adventurers
1972 56歳
Pope Joan
埋められた女 The Screaming Woman (TV)
1977 61歳
1978 62歳
スウォーム The Swarm
1979 63歳
The Fifth Musketeer
ルーツ2 Roots: The Next Generations (TV)
1981 65歳
The Love Boat (TV)
1982 66歳
殺人は容易だ Murder is Easy (TV)
ロイヤル・ロマンス/ダイアナ世紀の恋 The Royal Romance of Charles and Diana (TV)
1986 70歳
南北戦争物語 藍と自由への大地 North and South II (TV)
アナスタシア/光・ゆらめいて Anastasia: The Mystery of Anna (TV)
ゴールデングローブ賞助演女優賞
1988 72歳
The Woman He Loved (TV)
2009 93歳
I Remember Better When I Paint(ナレーション)




















