我が家の楽園
You Can’t Take It with You
(アメリカ 1938)
[製作] フランク・キャプラ
[監督] フランク・キャプラ
[原作] ジョージ・S・カウフマン/モス・ハート
[脚本] ロバート・リスキン
[撮影] ジョゼフ・ウォーカー
[音楽] ディミトリー・ティオムキン
[ジャンル] コメディ/恋愛
[受賞] アカデミー賞 監督賞/作品賞
キャスト
ジーン・アーサー
(アリス・シカモア)
ライオネル・バリモア
(マーティン・ヴァンダーホフ)
ジェームズ・スチュワート
(トニー・カービー)
エドワード・アーノルド (アンソニー・P・カービー)
ミッシャ・オア (ボリス・コレンコフ)
アン・ミラー
(エシー・カーマイケル)
スプリング・バイントン (ペニー・シカモア)
サミュエル・S・ハインズ (ポール・シカモア)
ドナルド・ミーク (ポピンズ)
H・B・ワーナー (ラムジー)
概要
『我が家の楽園』(You Can’t Take It with You)はフランク・キャプラが監督を務めたロマンティック・コメディ。
舞台劇を原作に、自由奔放なシンカービー家と堅物なキルカー家の価値観の衝突を描く。
愛や家族、幸せの真髄をユーモラスに問いかけた作品で、第11回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞。
ストーリー
物語の舞台はニューヨーク。大企業の頭取カービー氏の息子トニーと、気さくで自由な家庭に育ったアリス・シカモアが恋に落ちる。
アリスの家族は一風変わっており、祖父ヴァンダーホフを中心に、それぞれが好きなことを追求している。例えば、父は花火作り、母は戯曲執筆、妹はバレエと、それぞれが独特の趣味に没頭している。
一方、トニーの家族はビジネス中心の堅実な生活を重んじており、アリスの家庭とは正反対。トニーはアリスと結婚したいと願うが、アリスは価値観の違いが問題になることを恐れていた。
ある日、トニーは両親をアリスの家に連れて行き、家族同士の顔合わせを試みるが、思わぬドタバタ劇が発生。堅物のカービー氏はシカモア家の奔放さに困惑し、対立が深まる。
一方で、アリスの祖父ヴァンダーホフは、カービー氏に「金や地位では得られない幸せの本質」を説き、次第に彼の心を動かしていく。
エピソード
- 『我が家の楽園』は、第11回アカデミー賞で作品賞と監督賞を含む2部門を受賞した。
- キャプラはこの映画で彼のテーマである「普通の人々の人間性とユーモア」を強調している。
- 映画はジョージ・S・カウフマンとモス・ハートによる同名の舞台劇を原作としており、劇もピューリッツァー賞を受賞している。
- ヴァンダーホフ役のライオネル・バリモアは、本作で自由で哲学的なキャラクターを見事に演じ、高い評価を得た。
- 映画は大恐慌後のアメリカ社会を背景にしており、その影響が作品全体に感じられる。
- 映画の多くはスタジオセットで撮影され、細かい小道具や雑多な装飾でシカモア家の風変わりな家が特に印象的に作られている。
- 本作のタイトル「You Can’t Take It with You」は、「死後に財産は持っていけない」ということわざから取られている。
- 映画は舞台劇に比べてラブストーリーの要素が強調されている。
- クライマックスの家族の絆を強調する場面は、キャプラが独自に追加した要素で、原作には存在しない。
- ジェームズ・スチュワートは後にジーン・アーサーについて「彼女は私が一緒に仕事をした中で最高の女優だった。彼女ほどのユーモアと才能を持つ人は他にはいなかった」と回想している。
また、アン・ミラーは後にインタビューで、本作に携わった女性全員がジェームズ・スチュワートに憧れていたと語った。
『我が家の楽園』は、フランク・キャプラの監督としての手腕が光る作品であり、個人の自由と幸福の追求という普遍的なテーマをユーモラスに描いている。映画は、ジーン・アーサーとジェームズ・スチュワートの素晴らしい演技、風変わりな家族の温かさとユーモアが交錯するストーリーで、観客に深い感銘を与えた。
感想
シカモア家の自由奔放な生き方は見ていて本当に楽しいし、どこか羨ましさも感じた。
家族みんなが好きなことを追求しながら、他人を否定しない姿勢は現代でも共感できる。
一方で、アリスの葛藤には現実味があり、恋愛や結婚で直面する「相手の家族との違い」が丁寧に描かれているのも良かった。
物語全体に温かさとユーモアが溢れていて、観た後に心が軽くなる作品だった。現代社会にも通じる価値観が詰まっている映画だと思う。
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