リチャード・ファーンズワース
Richard Farnsworth

1920年9月1日、アメリカ・カリフォルニア・ロサンゼルス生まれ。
2000年10月6日、アメリカ・ニューメキシコ・リンカーンで死去(自殺)。享年80歳。
身長182cm。
乗馬の技術を生かし、ロイ・ロジャースやゲイリー・クーパー等スターのスタントマンとして40年の間活躍した後、本格的に俳優となる。
「カムズ・ア・ホースマン」「ストレイト・ストーリー」でオスカーにノミネート。
癌を患い、銃で自ら生涯の幕を閉じた。
今回は、54年間もの間スタントマンとして映画界を裏から支え、60歳を過ぎてから俳優として遅咲きの花を咲かせたリチャード・ファーンズワースをご紹介します。
その穏やかな眼差しと、刻まれた深い皺に人生の年輪を感じさせる「ハリウッドでもっとも愛されたカウボーイ」。病魔と闘いながらも、自身の美学を貫き通した彼の静かな、しかし情熱的な歩みを辿ります。
静寂に宿る不屈の魂。リチャード・ファーンズワース、荒野を愛した真のジェントルマン
10代でポロの選手からスタントの道へ進んだ彼は、映画史に残る数々の大作で、主演俳優の影となり落馬し、荒野を駆け抜けました。リチャード・ファーンズワースの人生は、派手な脚光を浴びることよりも「馬と共にあり、プロの仕事を完遂する」という職人気質に貫かれていました。
転機は還暦を目前にした『カムズ・ア・ホースマン』。スタントマン出身ゆえの無駄のない動きと、にじみ出る誠実さが観客を魅了し、異例の快進撃が始まりました。末期ガンの激痛を隠しながら、最期まで「本物の芝居」を追求した彼の、気高くも切ない軌跡を見ていきましょう。
- ✦ PROFILE & BACKGROUND
- 🏆 主な功績・活動
- 🏅 受賞・ノミネート歴
- 1. 職人の矜持:カムズ・ア・ホースマン(1978)
- 2. 紳士的な強盗:グレイ・フォックス(1982)
- 3. 静かなる遺作:ストレイト・ストーリー(1999)
- 📜 リチャード・ファーンズワースを巡る知られざるエピソード集
- 📝 まとめ:荒野に沈む夕日のように、気高く消えた名優
- 1937 年 17 歳
- 1938 年 18 歳
- 1939 年 19 歳
- 1948 年 26 歳
- 1949 年 29 歳
- 1950 年 30 歳
- 1953 年 33 歳
- 1955 年 35 歳
- 1956 年 36 歳
- 1960 年 40 歳
- 1966 年 46 歳
- 1969 年 49 歳
- 1970 年 50 歳
- 1971 年 51 歳
- 1972 年 52 歳
- 1973 年 53 歳
- 1974 年 54 歳
- 1976 年 56 歳
- 1977 年 57 歳
- 1978 年 58 歳
- 1980 年 60 歳
- 1981 年 61 歳
- 1983 年 63 歳
- 1984 年 64 歳
- 1985 年 65 歳
- 1986 年 66 歳
- 1990 年 70 歳
- 1991 年 71 歳
- 1994 年 74 歳
- 1999 年 79 歳
✦ PROFILE & BACKGROUND
- 本名:リチャード・ウィリアム・ファーンズワース
- 生涯:1920年9月1日 ~ 2000年10月6日(享年80歳)
- 死因:自死(末期ガンの激痛に耐えかね、ニューメキシコ州の自宅にて銃で自ら命を絶つ)
- 出身:アメリカ / カリフォルニア州ロサンゼルス
- ルーツ・家庭環境:
- 父リチャード:エンジニア。息子が7歳の時に他界。
- 母フローレンス:夫の死後、女手一つでリチャードと姉、妹を育て上げた強い母。
- 妻マーガレット:1947年に結婚した元ダンサー。1985年に先立たれるまで、彼のスタント時代から俳優への転身を献身的に支えた。
- 子供たち:息子ダイヤモンド(スタントマン)と娘ミッシーを授かり、家族仲は非常に良好であった。
- 背景:大恐慌時代に育ち、10代で馬の扱いに長けていたことから映画界入り。ゲイリー・クーパーのスタントを長く務めた。
- 功績:スタントマンからオスカー候補の俳優へと登り詰めた極めて稀な例。1999年には史上最高齢(当時79歳)でアカデミー主演男優賞にノミネートされる。
🏆 主な功績・活動
| 公開年 | 出来事 | 備考 |
| 1937 | 『マルクス一番乗り』でスタントデビュー | 17歳。ここから約40年に及ぶスタントマン生活が開始 |
| 1978 | 『カムズ・ア・ホースマン』で俳優として注目 | 58歳。アカデミー助演男優賞に初ノミネートされる |
| 1982 | 『グレイ・フォックス』主演 | カナダの伝説の列車強盗を演じ、数々の賞を受賞 |
| 1999 | 『ストレイト・ストーリー』主演 | 79歳。末期ガンを隠して撮影に臨み、世界中を涙させる |
| 2000 | 銃による自死 | 激痛と麻痺に侵される中、尊厳を守るため自ら人生の幕を引く |
🏅 受賞・ノミネート歴
| 年度 | 対象作品 | 賞 | 部門 | 結果 |
| 1979 | カムズ・ア・ホースマン | アカデミー賞 | 助演男優賞 | ノミネート |
| 1979 | カムズ・ア・ホースマン | ゴールデングローブ賞 | 助演男優賞 | ノミネート |
| 1983 | グレイ・フォックス | ゴールデングローブ賞 | 主演男優賞 (ドラマ) | ノミネート |
| 1990 | チェイス (TV映画) | エミー賞 | 助演男優賞 (ミニシリーズ) | ノミネート |
| 2000 | ストレイト・ストーリー | アカデミー賞 | 主演男優賞 | ノミネート |
| 2000 | ストレイト・ストーリー | ゴールデングローブ賞 | 主演男優賞 (ドラマ) | ノミネート |
1. 職人の矜持:カムズ・ア・ホースマン(1978)
セリフのないスタントマンとして生きてきた彼が、初めて「俳優」として世界に認められた作品です。老いたカウボーイを演じた彼は、その存在感だけで「西部劇の終焉」を体現しました。
アカデミー助演男優賞へのノミネートは、ハリウッドの裏方たちに希望を与える快挙でした。彼自身の長年の下積みが、演技という形で見事に昇華された瞬間です。
2. 紳士的な強盗:グレイ・フォックス(1982)
33年間の刑務所生活を終えた実在の老強盗、ビル・マイナーを演じました。
映画『大列車強盗』に触発されて再び強盗を始めるという皮肉な物語ですが、ファーンズワースは彼を「粗暴な犯罪者」ではなく「礼儀正しく、時代の変化に取り残されたロマンチスト」として魅力的に演じました。
カナダのアカデミー賞と言われるジニー賞で主演男優賞を受賞するなど、彼の代表作の一つとなりました。
3. 静かなる遺作:ストレイト・ストーリー(1999)
デヴィッド・リンチ監督が、実在の老人アルヴィン・ストレイトの旅を描いた感動作です。
時速8kmの芝刈り機で、仲違いした兄に会うためにアイオワからウィスコンシンまで500kmを旅する老人の姿は、世界中の観客の心を打ちました。
撮影当時、彼はすでに骨への転移を伴う末期ガンに侵されており、足に麻痺が出ていました。劇中の「杖をつく姿」や「痛みに耐える表情」の多くは演技ではなく現実のものでしたが、彼はスタッフにさえその病状を明かさず、完璧に役を演じきりました。
📜 リチャード・ファーンズワースを巡る知られざるエピソード集
1. ゲイリー・クーパーの「影」として
彼は名優ゲイリー・クーパーのスタントを10年以上務めました。クーパー本人が「リチャードがいなければ私のカウボーイ像は完成しなかった」と絶賛するほどの信頼関係を築いていました。また、『十戒』ではチャールトン・ヘストンの戦車操縦のスタントも務めるなど、数々の大作の陰には常に彼の姿がありました。
2. 俳優転身のゴシップとマックィーン
50代後半まで俳優になる気は全くありませんでしたが、親友のスティーヴ・マックィーンから「君の顔には物語がある。スタントを引退して俳優になるべきだ」と強く勧められたことが転機となりました。しかし、いざ俳優に転身すると、その圧倒的な存在感に「なぜ今まで隠れていたのか」と業界中が驚愕したといいます。
3. 撮影現場での「沈黙の闘病」
『ストレイト・ストーリー』の撮影中、彼はガンの激痛で夜も眠れない状態でした。しかし、撮影を遅らせることを嫌い、監督や共演者に心配をかけないよう、現場では常に穏やかな笑みを絶やしませんでした。デヴィッド・リンチ監督は後に「彼はこの映画そのものだった。彼以上の忍耐と気高さを持つ人間に会ったことがない」と語っています。
4. 死の決断と「尊厳」
2000年10月、病状が悪化し、下半身の麻痺で馬に乗ることもできなくなった彼は、自身のニューメキシコ州の牧場で銃により自ら人生を閉じました。これは「馬に乗れないカウボーイであってはならない」という彼なりの美学と、家族に介護の苦労をかけたくないという最後の配慮だったとされています。
5. 「スタントマン」を誇りに
俳優として2度のオスカー候補になっても、彼は生涯「私は本職の俳優ではない。馬に乗るのが好きなスタントマンだ」と言い続けました。授賞式のタキシード姿よりも、牧場でのデニムとカウボーイハットを何より愛した、飾らない私生活を貫きました。
6. 79歳での「初」主演男優賞ノミネート
アカデミー主演男優賞に79歳でノミネートされた記録は、長らく史上最高齢でした。スタントマン出身者が演技部門の頂点に挑んだこのニュースは、ハリウッドの「年功序列」や「格差」といった古びたイメージを打破する象徴的な出来事として、今も語り継がれています。
📝 まとめ:荒野に沈む夕日のように、気高く消えた名優
リチャード・ファーンズワースは、派手な演技やスキャンダルとは対極にある、沈黙と誠実の表現者でした。
50年以上のスタント生活で培われた強靭な肉体と、その裏側にある繊細な感受性が、彼にしか出せない「老い」の美しさを生み出しました。最期の決断は衝撃的ではありましたが、それは彼が自分自身の人生のハンドルを、最期まで離さなかったことの証でもあります。銀幕の中で芝刈り機にまたがり、ゆっくりと進む彼の姿は、効率ばかりを求める現代において、人生で本当に大切なものは何かを静かに問いかけています。
[出演作品]
1937 年 17 歳
マルクス一番乗り A Day at the Races(スタント)
1938 年 18 歳
マルコ・ポーロの冒険 The Adventures of Marco Polo(スタント)
1939 年 19 歳
1948 年 26 歳
1949 年 29 歳
猿人ジョー・ヤング Mighty Joe Young
1950 年 30 歳
快傑ダルド The Flame and the Arrow
1953 年 33 歳
乱暴者〈あばれもの〉 The Wild One(スタント)
1955 年 35 歳
捨身の一撃 A Lawless Street
1956 年 36 歳
1960 年 40 歳
1966 年 46 歳
テキサス Texas Across the River
砦の29人 Duel at Diablo
1969 年 49 歳
悪党谷の二人 The Good Guys and the Bad Guys
ペンチャーワゴン Paint Your Wagon
1970 年 50 歳
モンテ・ウォルシュ Monte Walsh
1971 年 51 歳
11人のカウボーイ The Cowboys
西部無法伝 Skin Game
1972 年 52 歳
ワイルド・アパッチ Ulzana’s Raid
ロイ・ビーン The Life and Times of Judge Roy Bean
1973 年 53 歳
1974 年 54 歳
ブレージングサドル Blazing Saddles
1976 年 56 歳
イカサマ貴婦人とうぬぼれ詐欺師 The Duchess and the Dirtwater Fox
1977 年 57 歳
続・男と女 Un autre homme, une autre chance
ルーツ Roots (TV)
1978 年 58 歳
カムズ・ア・ホースマン Comes a Horseman
1980 年 60 歳
トム・ホーン Tom Horn
ベトナム帰りのすごい奴/それでも奴にはかなわない Ruckus
レザレクション/復活 Resurrection
1981 年 61 歳
ローン・レンジャー The Legend of the Lone Ranger
1983 年 63 歳
1984 年 64 歳
1985 年 65 歳
チェイス Chase (TV)
跳べ!シルベスター Sylvester
赤毛のアン Anne of Green Gables (TV)
1986 年 66 歳
プラネット・オブ・ファイヤー Space Rage
1990 年 70 歳
黄昏のチャイナタウン The Two Jakes
ミザリー Misery
1991 年 71 歳
地獄のハイウェイ Highway to Hell
1994 年 74 歳
1999 年 79 歳
ストレイト・ストーリー The Straight Story
NY批評家協会賞主演男優賞















