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白昼の決闘 Duel in the Sun 1946 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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灼熱のテキサスに燃え上がる、愛と憎しみの狂詩曲。セルズニックが『風と共に去りぬ』の再来を賭けた、絢爛豪華なる超大作西部劇。

広大なテキサスの大牧場を舞台に、情熱的な混血の娘パールを巡って対立する性格の異なる二人の兄弟。独占欲と野望、そして抗えない肉体の渇望が、一家を破滅的な血の決闘へと駆り立てる。製作デヴィッド・O・セルズニックが莫大な予算と最高のスタッフを投じ、西部劇の枠を超えた強烈なエロティシズムと色彩美で描き出した、伝説のスペクタクル・ロマン。

白昼の決闘
Duel in the Sun
(アメリカ 1946)

[製作]  デヴィッド・O・セルズニック
[監督]
キング・ヴィダー/オットー・ブロワー/シドニー・フランクリン/ウィリアム・ディータール/ウィリアム・キャメロン・メンジーズ/デヴィッド・O・セルズニック/ジョセフ・フォン・スターンバーグ
[原作]  ナイヴン・ブッシュ
[脚本]  デヴィッド・O・セルズニック/オリヴァー・H・P・ギャレット/ベン・ヘクト
[撮影]  リー・ガームス/レイ・レナハン/ハロルド・ロッソン
[音楽]  ディミトリー・ティオムキン
[ジャンル]  ウエスタン/ドラマ

キャスト

ジェニファー・ジョーンズ
(パール・チャヴェス)

ジョセフ・コットン
(ジェシー・マキャナレス)

グレゴリー・ペック
(ルート・マキャナレス)

ライオネル・バリモア (マキャナレス氏)
ハーバート・マーシャル (スコット・チャヴェス)

リリアン・ギッシュ
(ローラ・ベル・マキャナレス)

ウォルター・ヒューストン (シンキラー)
チャールズ・ビックフォード (サム・ピアース)
ハリー・キャリー (レム・スムート)
ジョーン・テッツェル (ヘレン・ラングフォード)
ティリー・ロッシュ (チャヴェスの妻)
バタフライ・マックィーン (ヴァシュティ)
スコット・マッケイ (シド)
オットー・クルーガー (ラングフォード)
シドニー・ブラックマー (恋人)
チャールズ・ディングル (ハーディ保安官)

受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1947第19回アカデミー賞主演女優賞(ジェニファー・ジョーンズ)ノミネート
1947第19回アカデミー賞助演女優賞(リリアン・ギッシュ)ノミネート

評価

『風と共に去りぬ』の成功を再現しようとしたセルズニックの執念が結実した一作です。リー・ガームスら名カメラマンたちが捉えた、燃えるような夕陽とテクニカラーの鮮烈な色彩は、観客の視覚を圧倒しました。ディミトリ・ティオムキンによる重厚で情熱的なスコアが、登場人物たちの激しい感情をさらに煽り立てます。

公開当時はその過激な内容から「Lust in the Dust(塵の中の情欲)」と揶揄されることもありましたが、現在ではキャンプな魅力と圧倒的なエネルギーを持つ、ハリウッド黄金期の贅を尽くしたエンターテインメントとして再評価されています。


あらすじ:荒野に咲いた毒の華

父親を亡くし、親戚の広大な牧場「スパニッシュ・ビット」に引き取られた美しい娘パール(ジェニファー・ジョーンズ)。牧場主マキャンレス(ライオネル・バリモア)とその妻ローラ(リリアン・ギッシュ)には、対照的な二人の息子がいた。

誠実で理知的な長男ジェシー(ジョセフ・コットン)と、野性的で放蕩者の次男ルート(グレゴリー・ペック)。パールは自分を正しく愛そうとするジェシーに惹かれながらも、ルートが放つ危険な魅力と強引な誘惑に抗うことができず、背徳的な関係に溺れていく。鉄道建設を巡る一家の対立と、パールを奪い合う兄弟の確執。逃れられない宿命の糸は、ついに灼熱の太陽の下での決戦へと結びついていく。


ルートによってジェシーとの仲を裂かれ、さらに彼の裏切りを知ったパールは、愛憎の果てに決着をつけるべく、岩山の山頂に陣取るルートのもとへ向かう。炎天下の荒野で、二人は銃を取り合い、お互いを撃ち抜く。

致命傷を負いながらも、死の間際になってようやく、自分たちがどれほど深く、呪わしいほどに愛し合っていたかを悟る二人。流れる血にまみれ、埃にまみれながら、パールはルートの体へと這い寄り、最後の抱擁を交わして共に息絶える。その死顔には、ようやく激情から解放されたかのような、哀しくも静かな安らぎが漂っていた。


エピソード・背景

  • セルズニックの支配
    完璧主義のセルズニックは監督のキング・ヴィダーと衝突し、ヴィダーは撮影終了前に降板。ディターレやスタンバーグなど多くの監督が断片的に演出し直すという異例の体制で完成されました。
  • ジェニファー・ジョーンズの体当たり
    当時セルズニックの愛人(後に妻)だった彼女は、聖女のようなイメージを覆すべく、土にまみれ、肌を露出した情熱的な演技を披露し、オスカー候補となりました。
  • グレゴリー・ペックの悪役
    「正義の味方」のイメージが強いペックが、卑劣で傲慢な悪党ルートを演じたのは極めて珍しく、彼のキャリアにおいても異色の輝きを放っています。
  • ティオムキンの大迫力スコア
    ディミトリ・ティオムキンは、100人近いオーケストラを使い、西部劇とは思えないほどドラマチックで官能的な音楽を創り上げました。
  • 撮影の三銃士
    リー・ガームスをはじめとする3人の名撮影監督が交代で担当。砂漠の熱気とキャラクターの欲望を、強烈な色彩のコントラストで描き出しました。
  • 豪華な脇役陣
    サイレント映画の女王リリアン・ギッシュや、名優ライオネル・バリモア、ウォルター・ヒューストンといった重鎮たちが、物語に深みと格式を与えています。
  • 巨額の宣伝費
    セルズニックは当時としては破格の宣伝費を投じ、賛否両論を巻き起こすことで爆発的なヒットを記録させました。

まとめ:作品が描いたもの

『白昼の決闘』は、西部劇という皮を被りながら、その実体は剥き出しの「本能」と「エゴ」のぶつかり合いを描いたメロドラマです。文明(ジェシー)と野性(ルート)の間で引き裂かれる個人(パール)の悲劇を通じて、理屈では説明できない人間の業の深さを浮き彫りにしました。

リー・ガームスらが映し出した、すべてを焼き尽くすような太陽の光。それは、理性を失うほど激しい恋に身を投じた者たちの末路を照らし出す、美しくも残酷なスポットライトでした。この物語は、ハリウッドが最も野心的で、最も過剰だった時代の空気を今に伝える、エネルギッシュなスペクタクルと言えるでしょう。


〔シネマ・エッセイ〕

リー・ガームスが捉える、地平線を真っ赤に染める夕映え。ディミトリ・ティオムキンの音楽が、激しい鼓動のように大地を揺らします。私たちは、ジェニファー・ジョーンズの野性味溢れる瞳の中に、社会の枠組みからはみ出してしまう、抗いがたい情熱の正体を見ます。

岩山を這い、愛する男を撃ち、そして抱きしめるラストシーン。あれほどまでに激しく、泥臭い「愛」の形が他にあるでしょうか。それはもはや決闘ではなく、二人の魂がひとつに溶け合うための、壮絶な儀式のようでした。

映画が終わった後、私たちの心に残るのは、砂塵の匂いと、耳の奥で鳴り止まない銃声の余韻です。白昼の太陽の下でさらけ出された人間の本性は、時代が変わっても色褪せることなく、私たちの内側に眠る「悪魔」をそっと揺さぶり続けているのです。

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