紅塵
Red Dust
(アメリカ 1932)
[製作] ヴィクター・フレミング/ハント・ストロンバーグ
[監督] ヴィクター・フレミング
[原作] ウィルソン・コリソン
[脚本] ジョン・リー・メイヒン/ドナルド・オグデン・スチュワート
[撮影] ハロルド・ロッソン
[ジャンル] 恋愛/ドラマ
クラーク・ゲーブル
(デニス・カーソン)
ジーン・ハーロウ
(ヴァンティン)
ジーン・レイモンド (ゲイリー・ウィリス)
メアリー・アスター
(バーバラ・ウィリス)
ドナルド・クリスプ (ギドン )
タリー・マーシャル (マッカーグ(マック))
フォレスター・ハーヴェイ (ライミー)
ウィリー・ファン (ホイ)
「紅塵」は、ヴィクター・フレミング監督によるアメリカのドラマ映画で、クラーク・ゲーブル、ジーン・ハーロウ、メアリー・アスターが主演している。
この作品は、エキゾチックなインドシナのゴムプランテーションを舞台に、人間関係の複雑さと情熱を描いた物語である。
物語は、デニスが経営するインドシナのゴムプランテーションで展開する。
デニスは荒々しいが魅力的な男で、厳しい自然環境の中でたくましく生きている。彼のプランテーションに、逃げるようにしてやってきた女性ヴァンティンが加わり、二人の関係が物語の中心となる。
ヴァンティンは最初はデニスと対立するが、次第に彼の男らしさと魅力に惹かれていき、デニスも彼女の自由奔放な性格と美貌に心を奪われる。
しかし、デニスの元にゲイリーという若い技師とその妻バーバラが到着し、物語はさらに複雑になる。
バーバラは優雅で上品な女性で、デニスは彼女に惹かれるようになる。
ヴァンティンはデニスの心がバーバラに向いていることを察し、二人の関係に亀裂が生じる。
デニスはバーバラへの感情と、ヴィアンとの情熱的な関係の間で葛藤する。
撮影地の工夫:
映画の舞台はフランス領インドシナだが、実際の撮影はカリフォルニア州のジャングルセットで行われた。制作チームはリアリティを追求するため、熱帯の雰囲気を再現した。
ハーロウの即興演技:
ジーン・ハーロウは多くのシーンで即興演技を行い、その自然な魅力が映画の成功に寄与した。特に水桶でシャワーを浴びるシーンは有名で、彼女のキャラクターを象徴している。
化学反応:
クラーク・ゲーブルとジーン・ハーロウの強烈な化学反応は、観客に強い印象を与え、その後も二人は複数の映画で共演することとなった。
コード前の自由:
映画はヘイズ・コード(製作倫理規定)が厳格に施行される前に制作され、より大胆なテーマやセリフ、シーンが含まれている。
脚本の変更:
原作となった舞台劇からの脚本の変更が行われ、映画向けによりダイナミックなストーリー展開となった。
興行的成功:
「紅塵」は公開後、大ヒットとなり、特に都市部での興行成績が良かった。これにより、MGMはハーロウとゲーブルの人気を再確認することとなった。
ハーロウのキャリア:
この映画の成功により、ジーン・ハーロウはハリウッドのトップスターとしての地位を確立し、彼女のキャリアにおいて重要な作品となった。
ヴィクター・フレミングの監督スタイル:
フレミングは俳優たちに自由な演技を奨励し、即興を取り入れることで、自然な演技を引き出した。これが映画のリアリティと魅力を高めた。
セットデザイン:
ゴム農園のセットは非常に詳細に作り込まれており、当時の観客にとって異国情緒あふれる舞台となった。
後のリメイク:
「紅塵」はその後、1953年に「モガンボ」としてリメイクされ、クラーク・ゲーブルは再び主演を務めた。このリメイク版も成功し、オリジナルの影響力を示している。
映画の成功の要因の一つは、その時代としては珍しい、率直で生々しい人間関係の描写にある。特に、ハーロウのヴァンティンとメアリー・アスターが演じるバーバラとの対比が鮮やかであり、二人の女性キャラクターが織りなす感情のぶつかり合いがドラマを盛り上げている。フレミングの監督手腕も見逃せないポイントで、彼はシンプルながら効果的なシーン構成で観客の興味を引きつけている。
映画のビジュアルもまた印象的で、東南アジアのジャングルやゴム農園の風景がエキゾチックな雰囲気を醸し出している。これが、キャラクターたちの感情や行動に影響を与える背景として効果的に機能している。また、映画は当時の社会的・文化的背景を反映しつつも、現代の観客にとっても理解しやすいテーマを扱っている。
全体として、「紅塵」はその時代を象徴する映画であり、ジャン・ハーロウとクラーク・ゲーブルの化学反応が特に光っている。物語のテンポと感情の起伏が巧みに描かれており、観る者に強い印象を残す作品だ。クラシック映画ファンにとっては必見の作品であり、1930年代のハリウッドの魅力を堪能できる。
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