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地の果てを行く La Bandera 1935 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】| ジャン・ギャバン | アナベラ

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過去を捨て、砂漠に散る。男たちの友情と宿命が交錯する傑作サスペンス

地の果てを行く(字幕版)

殺人を犯し、偽名でスペイン外人部隊に身を投じたピエール。過酷な砂漠の行軍と、正体を追う執拗な刑事の影。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督とジャン・ギャバンが放つ、フランス映画『詩的リアリズム』の幕開けを告げる衝撃作。

地の果てを行く
La Bandera
(フランス 1935)

[製作]   モーリス・ジュバン
[監督]  ジュリアン・デュヴィヴィエ
[原作]  ピエール・マッコルラン
[脚本]  ジュリアン・デュヴィヴィエ/シャルル・スパーク
[撮影]  ジュール・クリュージェ
[音楽]  ジャン・ウィネル/ロラン・マニュエル
[ジャンル] サスペンス/ドラマ

キャスト

ジャン・ギャバン
(ピエール・ジリース)

アナベラ
(アイシャ・ラ・スラウィ)

ロベール・ル・ヴィーガン (フェルナンド・リュカ)
ガストン・モド (軍団兵ミュラー)
レイモンド・エーモス (マルセル・ミュロ)
ピエール・ルノワール (ウェラー隊長)
マーゴ・ライオン (ブレッドボード)
シャルル・グランヴァル (セゴビア人)
レーヌ・ポーレット (ロジータ)
ヴィヴィアーヌ・ロマンス (バルセロナの娘)
ヘスス・カストロ=ブランコ (軍曹)
ロバート・オザンヌ (タトゥーの人)
リス・ラグレネ (シメオン)
ルイ・フロレンシー (ゴリエ)
リトル・ジャッキー (軍団兵ウェーバー)



受賞・ノミネートデータ

  • 1935年 フランス映画批評家協会賞
    • 受賞:作品賞
  • 評価
    • 本作の成功により、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督と主演ジャン・ギャバンのコンビは黄金時代を築くことになります。当時のフランス映画界に「暗黒街」や「逃亡者」といったハードボイルドな情緒を持ち込み、称賛を集めました。その虚無的で美しいラストシーンは、今なお語り草となっています。


ストーリー

パリで殺人を犯したピエール(ジャン・ギャバン)は、バルセロナへと逃亡する。路頭に迷った彼は、過去を問わない「スペイン外人部隊」に入隊し、モロッコの辺境の駐屯地へと送られる。そこで彼は、底抜けに明るいミュラー(ガストン・モド )と、どこか謎めいたリュカ(ロベール・ル・ヴィーガン)の二人と友情を結ぶ。

しかし、リュカの正体はピエールを追う刑事であった。彼はピエールが自白するのを虎視眈々と狙いながら、友人として振る舞う。過酷な訓練と砂漠の熱気、そして美しい現地の女性アイシャ(アナベラ)との恋。ピエールはつかの間の安らぎを得るが、リュカの執拗な視線と、迫り来る反乱軍の影が彼を追い詰めていく。

部隊にモロッコ反乱軍の総攻撃が仕掛けられる。ピエールの仲間たちは次々と命を落とし、最後にはピエールとリュカの二人だけが砦に取り残される。死を悟ったピエールは、ついにリュカに自分が犯人であることを告白するが、リュカは「もうそんなことはどうでもいい、今はただの戦友だ」と告げる。

激しい戦闘の末、ピエールは敵の弾に倒れる。救援部隊が到着したとき、そこには戦死したピエールの遺体と、生き残ったリュカの姿があった。リュカは、ピエールをパリへ連行するという刑事としての職務を果たすことはできなかったが、一人の男としての友情を守り抜いた。砂漠の風の中に、名もなき兵士たちの軍旗(ラ・バンデラ)だけが翻っていた。


エピソード・背景

  • ジャン・ギャバンのアイコン化
    本作でギャバンが演じた「不器用だが義理堅い逃亡者」というキャラクターは、彼の決定的なイメージとなり、後の『望郷』などへ繋がる「アンチ・ヒーロー」の原型となりました。
  • 外人部隊のリアリズム
    実際のスペイン外人部隊の協力を得て、モロッコでのロケを敢行。焼け付くような砂漠の質感や、兵士たちの荒々しい生活感が、スタジオ撮影では出せない圧倒的なリアリティを作品に与えています。
  • デュヴィヴィエの演出術
    運命に抗えない男たちの悲哀を、光と影のコントラストを強調した映像で描く手法は、後の「フィルム・ノワール」にも多大な影響を与えました。
  • ピエール・マコルランの原作
    原作は放浪の作家として知られるマコルランの小説。デュヴィヴィエは脚本も手がけ、原作の持つ「絶望的なロマンチズム」を見事に映像化しました。
  • 音楽の役割
    ジャン・ウィエネルによる哀愁漂う音楽が、孤独な男たちの心情を雄弁に物語っており、映画の格調を一段と高めています。
  • 友情と裏切りの物語
    刑事でありながら犯人と友情を結んでしまうリュカの葛藤は、本作のもう一つの大きなテーマであり、単なる逃亡劇に終わらない深い人間ドラマを生み出しています。


まとめ:作品が描いたもの

『地の果てを行く』が描くのは、過去から逃げ続ける男が、最終的に「死」という形で行き着く心の平安です。外人部隊という閉鎖的な空間の中で、階級や前科を超えて結ばれる男たちの連帯感は、当時の不安定な欧州情勢に対する一つの理想像でもありました。

「地の果て」まで逃げても逃げ切れない宿命の虚しさと、その果てに見せる男の意地。フランス映画黄金期の幕開けにふさわしい、骨太で叙情的な名作です。


〔シネマ・エッセイ〕

砂漠の地平線を見つめるジャン・ギャバンの、あの険しくもどこか哀しげな表情。それだけで、彼が背負ってきた過去の重さが伝わってきます。言葉を交わさずとも、一杯の酒や一本の煙草で通じ合う男たちの友情には、現代の映画が失ってしまった「静かな熱量」があります。

最後に翻る軍旗のカットは、個人の罪や名前さえも飲み込んでしまう大きな運命の象徴のようです。絶望的な状況であればあるほど、人間の持つ尊厳が光り輝く。デュヴィヴィエ監督が切り取ったその一瞬の輝きは、公開から90年以上経った今でも、少しも色褪せることはありません。

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