セブン
Se7en
(アメリカ 1995)
[製作総指揮] ダン・コルスラッド/アン・コペルソン/ジャンニ・ナナーリ/リン・ハリス/リチャード・サパースタイン
[製作] スティーヴン・ブラウン/フィリス・カーライル/ウィリアム・C・ギャリティ/ナナ・グリーンウォルド/アーノルド・コペルソン/ミシェル・プラット/サンフォード・パニッチ
[監督] デヴィッド・フィンチャー
[脚本] アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
[撮影] ダリウス・コンディ
[音楽] ヨハン・セバスチャン・バッハ
[ジャンル] スリラー/サスペンス/ミステリー
[受賞]
シカゴ批評家協会賞 撮影賞
ファンタスポルト賞 最優秀作品賞/脚本賞
ロンドン批評家協会賞 男優賞(モーガン・フリーマン)
MTV映画賞 作品賞/悪役賞(ケヴィン・スペイシー)
NY批評家協会賞 助演男優賞(ケヴィン・スペイシー) )
SF&ファンタジー&ホラー映画アカデミー賞 メイクアップ賞/脚本賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー 助演男優賞(ケヴィン・スペイシー)
キャスト

モーガン・フリーマン
(ウィリアム・サマセット刑事)

ブラッド・ピット
(デヴィッド・ミルズ刑事)
アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー (死体)
ダニエル・ザカパ (テイラー刑事)

グウィネス・パルトロウ
(トレイシー・ミルズ)
ジョン・カシーニ (デイヴィス巡査)
ボブ・マック (大食漢の犠牲者)
ピーター・クロンビー (Dr.オニール)
レグ・E・キャシー (検死官)

ケヴィン・スペイシー
(ジョン・ドウ)
チャールズ・ダットン (警官)
ストーリー
退職まであと7日に迫ったベテラン刑事サマセットと、野心溢れる若手刑事ミルズ。正反対の二人がコンビを組んだその日、凄惨な殺人事件が発生する。被害者は、バケツ一杯の食べ物を無理やり食べさせられて胃が破裂した肥満男性だった。
現場には、キリスト教の「七つの大罪」の一つである「暴食(GLUTTONY)」の文字が残されていた。その後も、弁護士が「強欲(GREED)」の文字と共に殺害されるなど、聖書の内容を模した連続殺人が続く。知的なサマセットは、これが単なる狂行ではなく、明確な思想を持った犯人による「説教」であることを確信し、ダンテの『神曲』などを手がかりに犯人の正体に迫っていく。
二人は執念の捜査の末、ついに犯人のアジトを突き止めるが、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。犯人は「怠惰(SLOTH)」「肉欲(LUST)」「高慢(PRIDE)」と、冷酷な儀式のように殺人を重ねていく。そんな中、犯人自らが血まみれの姿で警察署に出頭してくる。男の名はジョン・ドゥ。彼は残る二つの罪「嫉妬」と「憤怒」を完結させるための「最後の地」へ、二人を案内すると告げる。
サマセットとミルズは、ジョン・ドゥに導かれ、何もない荒野へと向かう。そこへ一台の宅配便のトラックが現れ、サマセットに一つの段ボール箱を届ける。箱の中身を確認したサマセットは、あまりの衝撃に絶叫し、ミルズに「銃を捨てろ!」と叫ぶ。箱の中に入っていたのは、ミルズが愛していた妻トレイシーの生首だった。
ジョン・ドゥは、平凡な生活を送るミルズに「嫉妬」し、彼の幸せを壊したのだと告げる。そして、自分が「嫉妬(ENVY)」の罪を背負ってミルズに殺されることで、ミルズに「憤怒(WRATH)」の罪を犯させ、七つの大罪による連続殺人計画を完成させようとしていた。
サマセットの必死の制止も虚しく、愛妻を殺された怒りに飲み込まれたミルズは、ジョン・ドゥの頭を撃ち抜く。犯人の目論見通り、最悪の形で計画は完結した。警察車両に連行されていく絶望したミルズの背中を見送りながら、サマセットはヘミングウェイの言葉を反芻する。「この世は素晴らしい。戦う価値がある。後半の部分には同意だ」と。
エピソード・背景
- ケヴィン・スペイシーの隠された名前
犯人役のケヴィン・スペイシーは、観客を驚かせるために、あえて映画のオープニングクレジットから名前を外していました。彼の突然の登場と、あの不気味なほどの冷静さは、映画史に残る悪役像を作り上げました。 - 監督デヴィッド・フィンチャーの執念
『エイリアン3』での挫折を経験したフィンチャーが、徹底的にこだわった映像美。雨が降り続く薄暗い街並みや、細部まで作り込まれた犯人の日記帳など、その異常なまでのディテールが作品の恐怖を底上げしています。 - 衝撃のラストシーンを巡る攻防
映画会社はあまりにも暗すぎる結末に難色を示し、「代わりに犬の首にするのはどうか」などの代替案を出しましたが、ブラッド・ピットが「あの結末じゃないなら出演しない」と突っぱねて、あの伝説のラストが守られました。 - モーガン・フリーマンの「静」の演技
激情に走るミルズに対し、サマセットは常に読書と知性で世界を捉えようとします。メトロノームを使って眠るシーンなど、彼の孤独と潔癖さが、この地獄のような物語の中での唯一の安らぎとなっていました。 - オープニングタイトルの革新性
カイル・クーパーによる、ノイズ混じりの不気味なオープニング映像は、その後の映画やドラマのタイトルデザインに多大な影響を与えました。 - 脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの経験
脚本家がニューヨークで暮らしていた際に感じた、都会の冷酷さや絶望感がこの物語の根底に流れています。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、単なるシリアルキラー・スリラーの枠を超え、「悪とは何か、そして希望は存在するのか」という究極の問いを観客に叩きつけます。犯人ジョン・ドゥが選んだ「七つの大罪」は、現代社会の至る所に溢れている無関心や傲慢さを象徴しており、彼はそれを極端な形で「矯正」しようとしました。
救いのない結末は、善が常に勝つというハリウッド的な神話を木っ端微塵に砕きます。しかし、最後にサマセットが語る「戦う価値がある」という言葉は、この暗黒の世界にあっても、絶望に身を投じるのではなく、それを直視しながら生きていく人間のわずかな意志の強さを象徴しています。観終わった後、重い沈黙と共に、自分たちが生きる世界の写し鏡を見せられたような衝撃が残る、サスペンス映画の最高到達点です。


