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ステラ・ダラス Stella Dallas 1937 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】| バーバラ・スタンウィック

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泥にまみれても、娘には花の道を。映画史上最も切なく気高い「母の背中」

粗野で派手好きな母親ステラが、最愛の娘の幸せのために選んだのは、自分を『最低の母親』として演じ、身を引くことだった。バーバラ・スタンウィックの渾身の演技が、無償の愛の極致を描き出す、涙なしには語れないメロドラマの傑作。

ステラ・ダラス
Stella Dallas
(アメリカ 1937)

[製作] サミュエル・ゴールドウィン/メリット・ハルバード
[監督] キング・ヴィダー
[原作] オリーヴ・ヒギンズ・プローティ
[脚本] サラ・Y・メイソン/ヴィクター・ヒアマン/ハリー・ワグスタッフ・グリッブル/ガートルード・パーセル
[撮影] ルドルフ・マテ
[音楽] アルフレッド・ニューマン
[ジャンル] ドラマ

キャスト

バーバラ・スタンウィック
(ステラ・マーティン・ダラス)

ジョン・ボールズ (スティーヴン・ダラス)
アン・シャーリー (ローレル・ダラス)
バーバラ・オニール (ヘレン・モリソン)
アラン・ヘイル (エド・マン)
マージョリー・メイン (マーティン夫人)
ジョージ・ウォルコット (チャーリー・マーティン)
アン・シューメイカー (ミス・フィリブラウン)



受賞・ノミネートデータ

  • 1937年 第10回アカデミー賞
    • ノミネート:主演女優賞(バーバラ・スタンウィック)
    • ノミネート:助演女優賞(アン・シャーリー)
  • 評価
    • サイレント時代にも映画化されましたが、この1937年版はキング・ヴィダー監督の繊細な演出によって、単なる「お涙頂戴」を超えた、階級社会の残酷さと母性の崇高さを描く名作として不朽の地位を築いています。


ストーリー

野心家のステラ(バーバラ・スタンウィック)は、没落した上流階級の出身で現在は工場で働くスティーヴン(ジョン・ボールズ)と結婚する。しかし、派手好きで教養のないステラと、静かで品位を重んじるスティーヴンの価値観は次第にすれ違い、二人は別居することになる。

ステラの唯一の生きがいは、娘ローレル(アン・シャーリー)だった。彼女はローレルを上流階級の令嬢として育てることに心血を注ぎ、惜しみない愛情を注ぐ。しかし、ステラが良かれと思って着飾る派手な服や、粗野な言動は、皮肉にも成長したローレルの社交界での立場を危うくしてしまう。ステラは、自分が娘の幸せにとって「恥ずべき存在」になりつつあることを痛感する。

ステラは、娘を自分から引き離し、スティーヴンの再婚相手である気品ある女性ヘレン(バーバラ・オニール)のもとで暮らさせる決意をする。しかし、母を愛するローレルは、ステラの犠牲を察して戻ってこようとする。そこでステラは心を鬼にし、自堕落な男と付き合っているふりをし、「あんたなんてもう邪魔なのよ」と嘘をついて、わざとローレルを幻滅させ、父の家へと追い返す。

ラストシーン、豪邸で行われているローレルの華やかな結婚式。招待されていないステラは、激しい雨が降る夜の街角で、柵の外から窓越しにその幸せな光景を覗き見る。愛する娘が白馬の王子様と結ばれる瞬間を見届けた彼女は、警察官に立ち退きを命じられるが、その顔には悲しみではなく、やり遂げた者だけが浮かべる「最高の微笑み」があった。彼女は一人、泥濘の道を、満足げに歩み去っていくのだった。


エピソード・背景

  • バーバラ・スタンウィックの熱演
    彼女はこの役を演じるために、わざと不格好な歩き方を研究し、声のトーンも粗野に変えました。ラストシーンの表情だけで、観客の心を鷲掴みにする演技は、彼女のキャリアの中でも最高傑作の一つとされています。
  • アン・シャーリーの抜擢
    娘役を演じたアン・シャーリーは、当時「赤毛のアン」の主役でブレイクしたばかり。その清純な魅力が、ステラの泥臭い母性と見事なコントラストを生みました。
  • 階級の壁
    本作は、アメリカ社会における「階級」という見えない壁を鋭く描いています。ステラがどんなに頑張っても越えられない壁を、娘だけには越えさせようとする姿が、観る者の胸を打ちます。
  • ファッションの演出
    ステラが着る「趣味の悪い、派手すぎる服」は、彼女がいかに周囲から浮いているかを視覚的に際立たせる重要な装置となっています。


まとめ:作品が描いたもの

本作が描くのは、自己犠牲のさらに先にある「自己否定」という名の深い愛です。自分の存在そのものが娘の害になると悟った時、自らを「悪」として差し出すステラの決断は、美談という言葉では足りないほどの重みを持っています。

雨の中で窓を覗くラストシーンは、映画史に残る「最も美しい敗北」の瞬間です。何も持たず、誰にも知られず、ただ娘の幸せだけを抱いて去っていく彼女の姿は、どんな王侯貴族よりも気高く映ります。


〔シネマ・エッセイ〕

窓の向こうの光の中にいる娘と、暗い雨の中にいる母親。あの鉄柵は、二人の間に横たわる階級の差であり、決して交わることのない運命の境界線です。

ステラは、娘に軽蔑されることでしか娘を幸せにできないという、最も辛い道を選びました。彼女が最後に浮かべる微笑みは、自分が「母親」として完璧な役割を演じきったという勝利の証です。

バーバラ・スタンウィックの、あの涙を堪えながらも誇らしげな横顔。愛とは、時に「忘れ去られること」を受け入れる勇気なのだと、この映画を観るたびに教えられます。世界中の母親たちが、そしてかつて子供だったすべての人たちが、彼女の背中に向かって拍手を送りたくなるような、魂を揺さぶる名作です。

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