黒蘭の女
Jezebel
(アメリカ 1938)
[製作] ウィリアム・ワイラー
[監督] ウィリアム・ワイラー
[原作] オーウェン・デイヴィス
[脚本] クレメント・リプリー/ジョン・ヒューストン/エイベム・フィンケル/ロバート・バックナー
[撮影] アーネスト・ホラー
[音楽] マックス・スタイナー
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 主演女優賞(ベティ・デイヴィス)/助演女優賞(フェイ・ベインター)
ヴェネツィア映画祭 特別賞
ベティ・デイヴィス
(ジュリー・マースデン)
ヘンリー・フォンダ
(プレストン・ディラード)
ジョージ・ブレント (バック・カントレル)
マーガレット・リンゼイ (エイミー・ブラッドフォード・ディラード)
ドナルド・クリスプ (Dr.リヴィンストン)
フェイ・ベインター (ベル・マッセイ伯母)
リチャード・クロムウェル (テッド・ディラード)
ヘンリー・オニール (テオフォラス・ボガーダス)
スプリング・バイントン (ケンドリック夫人)
ジョン・ライテル (ジャン)
ゴードン・オリヴァー (ディック・アレン)
ジャネット・ショー (モリー・アレン)
テレサ・ハリス (ゼット)
マーガレット・アーリー (ステファニー・ケンドリック)
『黒蘭の女』は1938年に公開されたアメリカの歴史ドラマ映画。監督はウィリアム・ワイラーで、主演はベティ・デイヴィスとヘンリー・フォンダ。この映画は、アメリカ南部の上流階級の女性ジュリー・マースデンが、自らのプライドと行動によって引き起こす波紋を描いた物語。
物語の舞台は1850年代のニューオーリンズ。ジュリー・マースデン(ベティ・デイヴィス)は、美しく魅力的だが、気まぐれで自己中心的な性格。彼女はフィアンセのプレストン・”プレス”・デュランシー(ヘンリー・フォンダ)を愛しているが、彼の期待に応えられない行動をしがち。
物語の中盤では、ジュリーが南部の伝統に反して赤いドレスを着て社交界に登場する事件が起きる。この出来事はプレストンをはじめとする周囲の人々を驚かせ、彼女の行動は社会的なスキャンダルを引き起こす。プレストンはジュリーの行動に失望し、彼女との関係を見直すことを決意する。
ベティ・デイヴィスの演技:
ベティ・デイヴィスはジュリー役で第11回アカデミー賞主演女優賞を受賞した。彼女の強烈な演技は映画の成功に大きく貢献した。
実際の病気の描写:
映画には、ペストを思わせる病気のエピソードが含まれており、これは当時のニューオーリンズの現実を反映している。
ベティ・デイヴィスとウィリアム・ワイラーの関係:
この映画は、デイヴィスとワイラー監督の2度目のコラボレーション作品であり、彼らは後に『我が道を往く』(The Letter)でも再共演した。
赤いドレスのシンボリズム:
ジュリーが赤いドレスを着るシーンは、彼女の反抗的な性格と自己破壊的な傾向を象徴している。
映画のセット:
映画の多くのシーンは実際のロケーションではなく、スタジオセットで撮影された。
時代背景の忠実な再現:
衣装やセットデザインは1850年代のニューオーリンズを忠実に再現しており、時代の雰囲気をリアルに伝えている。
デイヴィスの役作り:
ベティ・デイヴィスは役作りのために、南部の社交界についてのリサーチを行い、その文化とエチケットを学んだ。
映画のタイトル:
タイトルの『Jezebel』は、聖書の悪名高い女性キャラクターに由来しており、ジュリーの破壊的な性格を象徴している。
デイヴィスのアプローチ:
デイヴィスはジュリーのキャラクターに対して、彼女の欠点を隠さず、むしろ強調するアプローチを取った。
恋愛関係:
ベティ・デイヴィスとウィリアム・ワイラーは不倫関係になった。撮影クルーは、彼が口紅を塗ったまま彼女の楽屋から出てくるのを何度も目撃した。夫のハーモン・ネルソンは主にニューヨークで働いていたため(彼らの結婚生活は破綻していた)、デイヴィスはワイラーの家で何晩も過ごし、夕食を作ったり、映画について語り合ったり、愛し合ったりした。
ウィリアム・ワイラーとの口論の後、ベティ・デイヴィスはヘンリー・フォンダと不倫関係になり、撮影現場での緊張が高まった。フォンダの妊娠中の妻からの電話を受けて、彼女は関係を解消した。
ベティ・デイヴィスは撮影終了後、何日も泣き続けたが、それには理由があった。彼女は自身のキャリアの中で最もやりがいのある芸術的経験を終えただけでなく、ウィリアム・ワイラーの子供を妊娠していたのだ。
オスカー像:
ベティ・デイヴィスのオスカー像は2001年7月19日、クリスティーズのオークションで5万7800ドルで落札された。落札者はスティーブン・スピルバーグで、彼はすぐにそれをアカデミーに寄贈した。
45テイク:
ベティ・デイヴィスは、鞭で乗馬スカートを持ち上げるシーンを完璧に再現するのに45回のテイクを要したと言われている。
赤いドレス:
ジュリーの赤いドレスは実際にはブロンズ色だった。なぜなら、ブロンズ色は赤よりも白黒フィルムでよく映えるからである。
ワイラーの才能:
ベティ・デイヴィスは、ウィリアム・ワイラーが特別な監督であることを悟った。デイヴィスが階段を降りてくるシーンを観たのだ。彼女はワイラーがなぜそのシーンを30回も撮影することにしたのか理解できず、このシーンに非常に苛立っていた。しかし、ラッシュを観て、ワイラーが一瞬の無頓着な表情を捉えたテイクを見つけた。その表情は彼女のキャラクターを完璧に言い表していた。それ以来、彼女はワイラーが望むテイクを何度でも喜んで受け入れた。
アカデミー賞:
2人の女優がアカデミー賞を受賞した初めての映画。主演女優賞はベティ・デイヴィス、助演女優賞はフェイ・ベインター。
神経質な癖:
撮影中、ウィリアム・ワイラーはベティ・デイヴィスに神経質な癖をやめるよう何度も注意し、腰をくねらせたり頭を動かしすぎたりすると怒鳴りつけた。ある場面では、頭を動かさないように首に鎖を巻き付けると脅したほどだった。その結果、彼女が抑えていた身振りは以前の演技よりもはるかに力強くなった。
権利:
オリジナルのブロードウェイ作品が失敗に終わったため、ワーナー・ブラザースは映画の権利を非常に安い価格で購入することができた。
『黒蘭の女』は、その強烈なキャラクター描写と感情的な深みで高く評価されている。ベティ・デイヴィスの圧倒的な演技は映画のハイライトであり、彼女のジュリーは複雑で魅力的なキャラクターとして観客に強い印象を与える。
ウィリアム・ワイラーの確かな演出と、時代設定を忠実に再現したプロダクションデザインが、物語の世界観を豊かに描き出している。
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