バルカン超特急
The Lady Vanishes
(イギリス 1938)
[製作] エドワード・ブラック
[監督] アルフレッド・ヒッチコック
[原作] エセル・リーナ・ホワイト
[脚本] シドニー・ギリアット/フランク・ローンダー
[撮影] ジャック・コックス
[音楽] ルイス・レヴィ/セシル・ミルナー
[ジャンル] アクション/コメディ/ミステリー/スリラー
[受賞] NY批評家協会賞 監督賞
マーガレット・ロックウッド (アイリス・マチルダ・ヘンダーソン)
マイケル・レッドグレーヴ (ギルバート・レッドマン)
ポール・ルーカス (Dr.ハーツ)
デイム・メイ・ホィッティ (ミス・フロイ)
セシル・パーカー (エリック)
リンデン・トレイヴァーズ (マーガレット)
ノーントン・ウェイン (カルディコット)
バジル・レッドフォード (チャーターズ)
メアリー・クレア (イザベル)
アルフレッド・ヒッチコック
(駅の男)
『バルカン超特急』は1938年に公開されたイギリスのサスペンス・スリラー映画。監督はアルフレッド・ヒッチコックで、主演はマーガレット・ロックウッドとマイケル・レッドグレーヴ。映画は、ヨーロッパを横断する列車の中で起こる謎の失踪事件を描く。
物語は、架空のバルカン半島の国で休暇を楽しむイギリス人旅行者たちから始まる。若い女性アイリス・ヘンダーソン(マーガレット・ロックウッド)は、帰国するために列車に乗り込む。彼女は列車で年配の女性ミス・フロイ(メイ・ウィッティ)と知り合うが、途中でミス・フロイが突然姿を消してしまう。
アイリスは他の乗客たちにミス・フロイの行方を尋ねるが、誰も彼女を見たことがないと主張する。絶望的になったアイリスは、彼女が幻覚を見たのではないかと疑われるが、同じくイギリス人の音楽学者ギルバート・レドマン(マイケル・レッドグレーヴ)が彼女の話に耳を傾ける。
アイリスとギルバートは共にミス・フロイの行方を探し始めるが、列車内では奇妙な出来事が続き、二人は次第に陰謀の中心に巻き込まれていく。中盤では、彼らが列車内で出会う他のキャラクターたちの真意が次第に明らかになり、物語はサスペンスと謎が深まっていく。
ヒッチコックの転機:
『バルカン超特急』はアルフレッド・ヒッチコックのキャリアにおける重要な転機であり、この映画の成功が彼のハリウッド進出のきっかけとなった。
原作:
映画はエセル・リナ・ホワイトの小説「The Wheel Spins」を原作としているが、映画化に際して大きく脚色されている。
撮影場所:
映画の多くはロンドンのゲインズボロー・スタジオで撮影されたが、列車のシーンはリアルな演出のために特殊なセットが使われた。
サスペンスの構成:
ヒッチコックは映画の序盤でキャラクターの設定に時間をかけ、中盤からサスペンスを一気に高める構成を採用している。
キャスティング:
マーガレット・ロックウッドとマイケル・レッドグレーヴはこの映画での共演をきっかけに広く知られるようになった。
ユーモアの要素:
サスペンスの中にユーモラスなシーンが織り交ぜられており、これが映画の魅力を増している。
視覚的演出:
ヒッチコック特有のカメラワークや視覚的な演出が随所に見られ、緊張感を高めている。
戦争の影:
映画は第二次世界大戦前夜に制作されており、国際的な緊張感が背景にある。
ミス・フロイのキャラクター:
ミス・フロイ役のメイ・ウィッティは、彼女の温かみのある演技で観客に強い印象を与えた。
列車内のセット:
リアルな列車内のセットは、物語の臨場感と緊張感を高めている。BGM:
リアルな効果を得るために、ヒッチコックは、最初と最後以外にはBGMは不要だと主張した。その他の音楽は、ホテルの外でミュージシャンが歌っている音楽、ミス・フロイの音楽、ギルバート(マイケル・レッドグレーブ)が口ずさむ「ボギー大佐行進曲」、ホテルの部屋でギルバートが指揮するダンスミュージック、そしてアイリス(マーガレット・ロックウッド)が電車でギルバートに会うときのダンスミュージックだけである。
マイケル・レッドグレーヴ:
マイケル・レッドグレーヴは、彼が演じるギルバートと同じくケンブリッジ大学に通っていた。彼は聖歌隊員でもあり、キャリアの早い段階で歌のレッスンを受けていた。このことは、彼が「力強い声」を持っているというギルバートの発言にさらなる信憑性を与えている。
トリュフォー:
フランソワ・トリュフォーは、この映画がヒッチコックの映画の中で一番のお気に入りであり、ヒッチコックの作品を最もよく表している作品だと主張した。
オーソン・ウェルズ:
オーソン・ウェルズはこの映画を11回見たと伝えられている。
『バルカン超特急』は、ヒッチコックの卓越した演出技法と、巧妙なストーリーテリングが絶妙に融合した作品として評価されている。マーガレット・ロックウッドとマイケル・レッドグレーヴのケミストリー、テンポの良い脚本、サスペンスとユーモアのバランスが見事に取れている。特に、狭い列車内という閉ざされた空間での緊張感の構築は、ヒッチコックの演出力の真骨頂とされている。
この映画は、サスペンス映画の名作として今なお高い評価を受けており、ヒッチコックの代表作の一つとして位置づけられている。
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