オズの魔法使
The Wizard of Oz
(アメリカ 1939)
[製作] マーヴィン・ルロイ/アーサー・フリード
[監督] ヴィクター・フレミング/リチャード・ソープ/キング・ヴィダー
[原作] ライマン・フランク・ボーム
[脚本]
ノエル・ラングレー/フロレンス・ライアソン/エドガー・アラン・ウルフ/アーヴィング・ブレチャー/ウィリアム・H・キャノン/ハーバート・フィールズ/アーサー・フリード/ジャック・ヘイリー/E・Y・ハーバーグ/サミュエル・ホフェンスタイン/バート・ラー/ジョン・リー・メイヒン/ハーマン・J・マンキーウィッツ/ジャック・ミンツ/オグデン・ナッシュ/シド・シルヴァーズ
[撮影] ハロルド・ロッソン
[音楽] ハーバート・ストザート/ハロルド・アーレン
[ジャンル] ファミリー/ファンタジー/アドベンチャー/ミュージカル
[受賞] アカデミー賞 オリジナル作曲賞/歌曲賞
キャスト
ジュディ・ガーランド
(ドロシー・ゲイル)
フランク・モーガン (マーヴェル教授)
レイ・ボルガー (ハンク)
バート・ラー (ジーク)
ジャック・ヘイリー (ヒッコリー)
ビリー・バーク (グリンダ)
マーガレット・ハミルトン (ミス・アルミラ・グルチ)
チャーリー・グレープウィン (ヘンリー・ゲイル叔父)
パット・ウォルシ (ニッコ)
クララ・ブランディック (エミリー伯母)
概要
『オズの魔法使(The Wizard of Oz)』は、ヴィクター・フレミング監督によるファンタジー映画で、ライマン・フランク・ボームの児童文学を原作とした作品。ドロシー(ジュディ・ガーランド)が愛犬トトと共にオズの国で冒険し、友達と出会いながら家に帰る方法を探す物語。映画史に残る美しい映像、音楽、特撮技術で、多くの人に愛されるクラシック映画となった。
ストーリー
ドロシーはカンザスの農場で愛犬トトと共に暮らしていたが、ある日、竜巻に巻き込まれ、家ごとオズの国に飛ばされてしまう。家が偶然「東の悪い魔女」を押しつぶし、その死によってドロシーは魔法の国の住人たちから歓迎される。彼女は「北の良い魔女」グリンダから「東の悪い魔女」の赤い靴を与えられ、家に帰る方法を探すよう助言される。
家に帰るには「オズの魔法使い」に会う必要があると聞き、エメラルドの都を目指して黄色いレンガ道を歩き始める途中で、脳を欲しがるカカシ、心を求めるブリキの木こり、勇気を望む臆病なライオンと出会い、彼らも願いを叶えてもらうため同行することに。
旅の途中、彼らは「西の悪い魔女」から執拗に追われるが、協力し合いながら様々な困難を乗り越える。そして、エメラルドの都にたどり着き、オズの魔法使いに会うが、彼は「西の悪い魔女」を倒さない限り願いを叶えられないと言う。
一行は魔女の城に乗り込み、最後の戦いでドロシーが水をかけると魔女は溶けて消滅する。帰還後、魔法使いが実は普通の人間だったことが判明するが、彼の助言とグリンダの魔法で、ドロシーは自分自身の力でカンザスに帰れることを学ぶ。物語は、家族と再会したドロシーが「どこにも我が家ほど素晴らしい場所はない」と気づき、幸せに暮らす結末で幕を閉じる。
エピソード
- ドロシー役には当初、シャーリー・テンプルが検討されていたが、最終的にジュディ・ガーランドが選ばれた。
- 映画はその時代としては先進的なテクニカラーを使用しており、特にオズの国のカラフルな描写が際立っている。
- 映画で歌われる「虹の彼方に」(Over the Rainbow)は、アカデミー賞歌曲賞を受賞し、ガーランドの代表曲となった。
- ヴィクター・フレミングが最終的な監督を務めたが、製作初期には他の監督も関与していた。
- 映画には当時としては画期的な特殊効果が多く使用されており、特に竜巻のシーンは印象的。
- 原作に忠実ながら、映画独自のアレンジとして冒頭のカンザスのシーンはセピア調、オズの国はテクニカラーで撮影された。
- ドロシーの愛犬トトは実際にはテリーという名の犬で、映画の成功後に非常に人気となった。
- 特にカカシ、ブリキの木こり、ライオンのキャラクターは、細部にわたる衣装とメイクが観客の記憶に残る。
- ドロシーが履いている赤いルビーの靴は、映画独自のアイテムであり、原作では銀の靴だった。
- 映画のセリフやシーンは広く知られ、アメリカ文化の一部となっている。
- 映画は6部門にノミネートされ、2つの賞を受賞した。
- テレビ放送の普及により、映画は1950年代以降さらに人気を高めた。
- 1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、文化的、歴史的、芸術的に重要な作品として認められている。
- エメラルド シティの馬はゼラチン パウダーで着色されていたため、馬がそれを舐め始める前に、関連するシーンを急いで撮影する必要があった。
- 有名な「Surrender Dorothy」の空に文字を書くシーンは、水の入ったタンクと、長い注射針の先に取り付けられた小さな魔女の模型を使って行われた。注射器にはミルクが入れられ、注射針の先がタンクに入れられ、下から撮影しながら文字が逆さまに書かれた。
- ジュディ・ガーランドは、撮影当時16歳で思春期前の子供の役を演じていたため、若く胸が平らに見えるように、胴体に痛みを伴うコルセットのような器具を着用しなければならなかった。
- 「幽霊の森」のシーンでは、翼のある猿を演じる俳優数名が、彼らを吊るしていたピアノ線が切れ、サウンドステージの床に数フィート落下して負傷した。
- 「西の悪い魔女」を演じたマーガレット・ハミルトンは特殊効果のミスで火傷を負い、撮影が一時中断された。
- 映画全体で唯一のロケ地映像は、オープニングタイトルの上の雲である。
- 有名な「ポピー畑」のシーン(ドロシーと臆病ライオンが眠るシーン)で、カメラショットに使われた「雪」は、アスベストの健康被害が数年前から知られていたにもかかわらず、100%工業用グレードのクリソタイルアスベストで作られていた。
- ドロシーがカンザスに帰る結末は、映画版オリジナルの解釈で「夢オチ」とされているが、原作では現実の冒険として描かれている。
『オズの魔法使』は、そのビジュアルの魅力、キャッチーな音楽、そして魅力的なキャラクターによって、1939年の公開以来、映画史における不朽の名作として評価され続けている。ジュディ・ガーランドの象徴的なパフォーマンスと、「虹の彼方に」を含む楽曲は、世代を超えて多くの人々に愛されている。ヴィクター・フレミングの監督下での演出と、当時としては画期的な特殊効果が、この映画を鮮やかで夢幻的な作品に仕上げている。『オズの魔法使』は、ファンタジー映画の金字塔として、今もなお世界中のファンを魅了し続けている。
感想
ドロシーの冒険は、子どもの頃に誰しもが持つ「家を飛び出して未知の世界を探検したい」という願望と、「結局は家が一番安心できる場所」という気づきを繊細に描いていて共感できる。
色彩や音楽が本当に美しく、特に「虹の彼方に」は心が震える。
ドロシーが一歩ずつ成長していく姿を見ていると、自分も一緒に勇気をもらえる気がする作品。
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