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生きるべきか死ぬべきか To be or Not to be 1942 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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舞台はナチス占領下のポーランド。芝居の力で独裁者を欺く、命懸けの爆笑コメディ。

ナチス占領下のワルシャワを舞台に、売れない劇団員たちが持ち前の演技力と変装術を駆使して、国家の危機を救うべくナチスと渡り合う。巨匠エルンスト・ルビッチが戦時下で放った、不謹慎なまでの笑いの中に鋭い風刺と知性を込めた、洗練されたブラック・コメディの最高傑作。

生きるべきか死ぬべきか
To be or Not to be
(アメリカ 1942)

[製作] アレクサンダー・コルダ/エルンスト・ルビッチ
[監督] エルンスト・ルビッチ
[原作] エルンスト・ルビッチ/メルキオール・レンギェル
[脚本] エドウィン・ジャスタス・メイヤー
[撮影] ルドルフ・マテ
[音楽] ウェルナー・R・ヘイマン/ミクロス・ローザ
[ジャンル] コメディ/ドラマ/戦争

キャスト

キャロル・ロンバード
(マリア・トゥーナ)

ジャック・ベニー (ジョゼフ・トゥーラ)
ロバート・スタック (スタニスラフ・ソビンスキー)
フェリックス・ブレサール (グリーンバーグ)
ライオネル・アトウィル (ロウィッチ)
スタンリー・リッジス (アレクサンダー・シレツキー)
シグ・ルーマン (エアハート大佐)
トム・ドゥーガン (ブロンスキー)
チャールズ・ハルトン (ドボシュ)
ジョージ・リン (俳優)


受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1943第15回アカデミー賞作曲賞(劇・喜劇映画)ノミネート
  • 評価
    • 公開当時は、現実にナチスが猛威を振るっていた時期であり、その悲劇を喜劇の題材にしたことに対して「悪趣味である」という批判も浴びました。しかし、ルビッチ独自の「ルビッチ・タッチ」と呼ばれる洗練された演出、緻密なプロット、そして独裁を痛烈に笑い飛ばす精神は、後に「喜劇映画の最高峰の一つ」として絶対的な評価を得るに至りました。メル・ブルックスによるリメイク版(1983年)も作られるなど、時代を超えて愛される一作です。


あらすじ:ハムレットの台詞とスパイの影

1939年、ドイツ軍侵攻直前のポーランド・ワルシャワ。劇団の看板役者ジョセフ・トゥーラ(ジャック・ベニー)は、自信家だが少し間抜けな男。彼の妻マリア(キャロル・ロンバード)は美貌の女優で、夫が舞台で「生きるべきか死ぬべきか」と独白を始めると、それを合図に若い空軍中尉ソビンスキー(ロバート・スタック)を楽屋に招き入れるという密かな浮気(?)を楽しんでいた。

そこへナチスの侵攻が始まり、ワルシャワは占領される。ロンドンへ逃れたソビンスキーは、レジスタンスの情報をナチスに売ろうとするスパイ、シレツキー教授(スタンリー・リッジス)の存在に気づく。教授の陰謀を阻止し、故郷の仲間を救うため、ソビンスキーはワルシャワへ潜入。ジョセフとマリア、そして劇団員たちは、小道具の制服と磨き上げた演技力を武器に、ヒトラーやゲシュタポ幹部に成りすましてナチスを煙に巻く大作戦を開始する。


劇団員たちは、自分たちの劇場の地下室をゲシュタポ本部に仕立て上げ、教授の暗殺に成功する。さらに、ジョセフは本物のゲシュタポ幹部「集中キャンプのエアハルト」に化けて追っ手をかわすが、あわやというところで正体がバレそうになる。しかし、劇団でヒトラー役を演じていた役者が本物そっくりの姿で現れ、ナチスの兵士たちを威厳ある(しかし滑稽な)命令で翻弄。

最後には、ヒトラーの専用機を乗っ取るという大胆不敵な方法で、劇団員一同とソビンスキーは無事にイギリスへ脱出する。ロンドンの舞台で再び「生きるべきか死ぬべきか」を演じるジョセフだったが、客席に座っていたソビンスキーが再び席を立つのを見て、彼は相変わらずの驚きと困惑の表情を見せるのであった。


エピソード・背景

  • キャロル・ロンバードの遺作
    本作の公開直前、主演のキャロル・ロンバードは戦時公債の販売活動からの帰路、飛行機事故で急逝しました。彼女のコメディエンヌとしての輝きが最高潮に達した作品であり、観客はその死を悼みつつ彼女の名演に酔いしれました。
  • 「集中キャンプのエアハルト」
    劇中でナチスの幹部が自らを「集中キャンプのエアハルト」と呼び、ジョセフが「彼はキャンプをやり、私たちは芝居をやる(He’s doing to Poland what we’re doing to Shakespeare)」というブラックなセリフを吐きます。これは当時のハリウッドでも相当に際どい風刺でした。
  • ルビッチの信念
    批判に対しルビッチは、「ナチスの非人間性を告発するのに、笑いほど強力な武器はない」という姿勢を貫きました。
  • ジャック・ベニーの代表作
    テレビやラジオのスターだったベニーにとって、この少し自惚れの強いジョセフ役は生涯最高の映画出演となりました。
  • フェリックス・ブレサートの熱演
    脇役のユダヤ人俳優グリーンバーグが、劇中でシャイロックの「ユダヤ人に目はないのか」という『ヴェニスの商人』の台詞を、ナチスの兵士を前にして語るシーンは、単なる喜劇を超えた感動を呼びました。
  • 緻密な脚本構成
    浮気相手が席を立つタイミングと劇の台詞が見事に物語の伏線として機能しており、脚本の完成度は驚異的です。
  • アドルフ・ヒトラーへの揶揄
    冒頭でヒトラーがワルシャワの街角に現れるシーン(実は変装した役者)など、独裁者の威厳を徹底的にコメディの道具として使い倒しています。


まとめ:作品が描いたもの

『生きるべきか死ぬべきか』は、絶望的な状況下にあっても、人間の知性とユーモアがいかに力強い抵抗手段になり得るかを証明した作品です。ルビッチ監督は、戦争という悲劇を背景にしながらも、軽妙なステップを踏むようなテンポで、権威の滑稽さと芸人の意地を描き出しました。

役者たちが自分の役柄に固執したり、偽物のヒゲを気にしたりする「舞台裏」のドタバタが、国家の命運を分けるサスペンスと見事に合致する様は、まさに映画術の極致。どんなに暗い時代であっても、笑うことを忘れない人間の尊厳を、華やかな「ルビッチ・タッチ」が鮮やかに救い上げているのです。


〔シネマ・エッセイ〕

「ハイル・ヒトラー!」という挨拶が、これほどまでに可笑しく、そして皮肉に響く映画が他にあるでしょうか。舞台の上でハムレットを演じていたはずの人々が、今度はナチスの制服に身を包み、命を懸けた最大の「即興劇」を演じる。そのスリリングな滑稽さは、どんなシリアスな反戦映画よりも深く心に突き刺さります。

キャロル・ロンバードの優雅な微笑みが、一抹の哀しみとともに画面いっぱいに広がります。彼女が選んだ最後の役が、独裁者を笑い飛ばす勇敢な女優であったことに、運命的な美しさを感じずにはいられません。

「生きるべきか死ぬべきか」という問いへの答えを、ルビッチは「笑って生き抜くこと」に求めたのかもしれません。幕が下りた後、私たちの胸に残るのは、不条理な暴力に屈しない人間の、自由で軽やかな精神の輝きなのです。

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