打撃王
The Pride of the Yankees
(アメリカ 1942)
[製作] サミュエル・ゴールドウィン
[監督] サム・ウッド
[原作] ポール・ギャリコ
[脚本] ジョー・スワリング/ハーマン・J・マンキーウィッツ
[撮影] ルドルフ・マテ
[音楽] リー・ハーライン
[ジャンル] 伝記/ドラマ
[受賞] アカデミー賞 編集賞
ゲイリー・クーパー
(ヘンリー・‘ルー’・ゲーリッグ)
テレサ・ライト
(エレノア・トウィッチェル・ゲーリッグ)
ベーブ・ルース (本人)
ウォルター・ブレナン (サム・ブレイク)
ダン・ドゥリア (ハンク・ハナマン)
エルザ・ジャンセン (ゲーリッグの母)
ルートヴィヒ・ストーセル (ポップ・ゲーリッグ)
ヴァージニア・ギルモア (マイラ・ティンスリー)
ビル・ディッキー (本人)
アーニー・アダムズ (ミラー・ハギンズ)
ピエール・ワトキン (トウィッチェル氏)
クレア・サンダース (ジュディ・ミニヴァー)
『打撃王』 は、1942年に公開されたアメリカの伝記スポーツドラマ映画。監督はサム・ウッドで、主演はゲイリー・クーパー。映画は、メジャーリーグベースボールの伝説的選手、ルー・ゲーリッグの人生を描いている。特にゲーリッグがALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された後の困難と、その中でも見せた不屈の精神を中心に描かれている。
物語は、ルー・ゲーリッグ(ゲイリー・クーパー)が貧しいドイツ系移民の家庭で育ち、野球選手として成功するまでの過程を描いている。幼少期から優秀なスポーツ選手だったゲーリッグは、やがてニューヨーク・ヤンキースのスター選手として名を馳せる。しかし、その成功の陰には彼の家族や妻エレノア(テレサ・ライト)の支えがあった。
中盤では、ゲーリッグが数々の試合で活躍し、連続出場記録を更新する一方で、体調の異変を感じ始める。そして、彼はALSと診断され、徐々に身体の自由を失っていく。この診断を受けたゲーリッグは、野球選手としてのキャリアを終える決断をするが、その過程で彼の真の人間性と不屈の精神が浮き彫りになる。
ゲイリー・クーパーの挑戦:
ゲイリー・クーパーは、ルー・ゲーリッグを演じる際、野球の経験がほとんどなかった。クーパーは右利きだったため、左打者のゲーリッグを演じるために多くの訓練を受けたが、結局一部のシーンはフィルムを反転させて撮影された。
ベーブ・ルースの出演:
実際にニューヨーク・ヤンキースで活躍したベーブ・ルースが映画に出演している。しかし、撮影時にルースは健康を損ない、急速な体重減少と肺炎に苦しんでいた。このため、彼の撮影スケジュールは非常に厳しいものとなった。
ルー・ゲーリッグの「ラッキーマン」スピーチ:
映画のクライマックスでは、ゲーリッグの有名な「ラッキーマン」スピーチが再現されている。このシーンは、実際のスピーチ映像を参考にして撮影され、映画の中でも最も感動的な場面となっている。
エレノア・ゲーリッグの関与:
ルー・ゲーリッグの妻エレノアは、映画の制作に積極的に関与し、脚本に対して多くの提案を行った。彼女は、夫の人格と遺産が正確に描かれることを強く望んでいた。
興行成績と評価:
『打撃王』は公開直後から大ヒットし、アメリカ国内での興行収入は非常に高かった。さらに、アカデミー賞では11部門にノミネートされ、批評家からも高い評価を受けた。
実在の選手たちの出演:
映画には、当時の実在のヤンキース選手たちが多数出演しており、その中にはゲーリッグの同僚であったビル・ディッキーやマーク・コーニッグも含まれている。これにより、映画はよりリアルで説得力のあるものとなった。
ゲーリッグ夫人役のテレサ・ライト:
テレサ・ライトはエレノア・ゲーリッグ役を演じ、この役で非常に高い評価を受けた。彼女の演技は映画に温かみと深みを加え、観客にゲーリッグ夫婦の絆を強く印象づけた。
サミュエル・ゴールドウィンの涙:
プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンは、当初この映画の制作に興味がなかったが、ゲーリッグのスピーチを映像で見た後に感動し、映画の制作を決定したとされている。
『打撃王』は、スポーツ映画としてだけでなく、ヒューマンドラマとしても高く評価されている。ゲイリー・クーパーの繊細で力強い演技が、ルー・ゲーリッグの複雑な感情と彼の人生の苦難を見事に表現しており、多くの観客の心を打った。映画は、ゲーリッグの不屈の精神と人間としての魅力を余すところなく描き、感動的な作品に仕上がっている。
特に、ゲーリッグの「ラッキーマン」スピーチを再現したシーンは映画史に残る名シーンとされており、この映画はスポーツ映画の枠を超えて、アメリカ文化における象徴的な作品となった。
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