ヴィンセント・プライス
Vincent Price

1911年5月27日、アメリカ・ミズーリ・セントルイス生まれ。1993年10月25日、カリフォルニア・ロサンゼルスで死去(肺ガン)。享年82歳。本名ヴィンセント・レナード・プライス・ジュニア。身長193cm。イエール大で学んだ後、俳優になる。ホラー映画の悪役スター。美食家・シェフであり、料理本を執筆したりした。
今回ご紹介するのは、ベルベットのような美声と貴族的な気品、そして誰にも真似できない「恐怖の美学」で銀幕を支配した怪奇スター、ヴィンセント・プライスです。
彼は、ホラー映画の金字塔として知られる一方で、美術史の学位を持ち、料理研究家としても名を馳せた、ハリウッド屈指の教養人(ルネサンス・マン)でした。
名門エール大学を卒業後、舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、その圧倒的な存在感でヒッチコックやオットー・プレミンジャーといった巨匠たちに愛されました。彼が演じる悪役は、単なる恐怖の対象ではなく、どこか哀愁と皮肉に満ちた、知的な色気を放っていました。その多才な生涯は、まさに「表現」という名の芸術そのものでした。
恐怖を芸術に変えた、銀幕の貴公。ヴィンセント・プライス、美と怪奇の肖像
ヴィンセント・プライスの魅力は、残酷な行いさえも優雅に見せてしまう、唯一無二の気品にあります。
190cmを超える長身と、一度聴いたら忘れられない深みのある声。彼は、恐怖映画というジャンルに「格調」という新たな息吹を吹き込みました。しかし、素顔の彼は、ボランティアで美術館の運営に携わり、家庭では温かい料理を振る舞う、誰からも愛される紳士でした。スクリーンで見せる「冷酷な怪人」と、実生活での「慈愛に満ちた文化人」。その鮮やかなコントラストこそが、彼を永遠のアイコンたらしめている理由なのです。
- ✦ PROFILE & BACKGROUND
- 🏆 主な功績・活動
- 1. 疑惑の社交界:ローラ殺人事件
- 2. 恐怖の芸術家:肉の蝋人形
- 3. ポー文学の具現化:アッシャー家の惨劇
- 4. 残酷な信念:ウィッチファインダー・ジェネラル
- 5. 最後の温もり:シザーハンズ
- 📜 ヴィンセント・プライスを巡る知られざるエピソード集
- 📝 まとめ:美と恐怖の境界線を歩んだ映画人生
- 1939 28歳
- 1943 32歳
- 1944 33歳
- 1945 34歳
- 1946 35歳
- 1947 36歳
- 1948 37歳
- 1949 38歳
- 1950 39歳
- 1951 40歳
- 1952 41歳
- 1953 42歳
- 1954 43歳
- 1955 44歳
- 1956 45歳
- 1958 47歳
- 1959 48歳
- 1960 49歳
- 1961 50歳
- 1962 51歳
- 1963 52歳
- 1964 53歳
- 1965 54歳
- 1967 56歳
- 1968 57歳
- 1969 58歳
- 1970 59歳
- 1971 60歳
- 1972 61歳
- 1973 62歳
- 1974 63歳
- 1975 64歳
- 1982 71歳
- 1983 72歳
- 1986 75歳
- 1987 76歳
- 1988 77歳
- 1989 78歳
- 1990 79歳
- 1991 78歳
✦ PROFILE & BACKGROUND
- 本名:ヴィンセント・レナード・プライス・ジュニア
- 生涯:1911年5月27日 ~ 1993年10月25日(享年82歳)
- 出身:アメリカ・ミズーリ州セントルイス
- 背景:祖父はベーキングパウダーの発明家で富豪。名門エール大学で美術史を学び、ロンドンのコートールド美術研究所でも研究を続けたエリートでした。1935年にロンドンで舞台デビューし、その後ハリウッドへ。初期は二枚目俳優として活躍しましたが、1950年代以降「ホラー映画の帝王」としての地位を確立しました。
- 功績:ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに「映画」と「テレビ」の2つの星を刻んでいます。1959年にはグラミー賞(最優秀朗読アルバム部門)にノミネートされるなど、その声の魅力も高く評価されました。
🏆 主な功績・活動
| 年 | 出来事 | 備考 |
| 1944 | 『ローラ殺人事件』公開 | 疑惑のプレイボーイ役で強烈な印象を残す |
| 1953 | 『肉の蝋人形』公開 | 3D映画のヒットと共にホラーの象徴へ |
| 1957 | ヴィンセント・プライス美術館 設立 | 教育のために数千点の美術品を寄贈 |
| 1960 | エドガー・アラン・ポー・シリーズ開始 | ロジャー・コーマン監督との黄金コンビ |
| 1982 | マイケル・ジャクソン『スリラー』ナレーション | 世界で最も有名な「笑い声」を披露 |
1. 疑惑の社交界:ローラ殺人事件
オットー・プレミンジャー監督によるフィルム・ノワールの傑作です。
プライスは、殺害された(と思われた)美女ローラを取り巻く、傲慢で寄生的なプレイボーイ、シェルビーを演じました。彼の持つ知的な風貌と、どこか不誠実さを感じさせる甘い喋り方が、物語のミステリアスな雰囲気を一層引き立てました。怪奇俳優として開花する前の、彼の二枚目俳優としてのポテンシャルの高さを見せつけた一作です。
2. 恐怖の芸術家:肉の蝋人形
彼の「怪奇スター」としての運命を決定づけた、記念碑的作品です。
火災によって自らの芸術品と美貌を失い、復讐に燃える蝋人形師ジャロッドを演じました。親切な紳士の仮面の下に、狂気と恨みを隠し持つ複雑なキャラクター造形。1950年代の3D映画ブームを牽引したこの大ヒット作により、彼はハリウッドにおける「恐怖のマスター」としての地位を不動のものにしました。
3. ポー文学の具現化:アッシャー家の惨劇
ロジャー・コーマン監督による「エドガー・アラン・ポー・シリーズ」の第一弾。
崩壊に向かう名門の当主ロデリック・アッシャーを演じ、病的なまでの鋭敏さと、血筋から逃れられない絶望を見事に表現しました。このシリーズは計8作作られ、プライスはそのほとんどに主演。文学的な香りのするホラーという独自のジャンルを確立し、世界中のファンを熱狂させました。
4. 残酷な信念:ウィッチファインダー・ジェネラル
17世紀のイギリスに実在した魔女狩り将軍、マシュー・ホプキンスを演じた異色作です。
いつもの皮肉めいたユーモアを一切排し、権力を笠に着て人々を追い詰める冷酷非情な男をシリアスに熱演。プライス自身も、この作品を自らの最高傑作のひとつに挙げています。暴力と狂気が渦巻く中での彼の冷徹な佇まいは、観客に真の恐怖を植え付けました。
5. 最後の温もり:シザーハンズ
ティム・バートン監督が、自らの憧れであるプライスに捧げた、彼の映画人生のラストを飾る作品です。
人造人間エドワードを創り出した心優しい発明家を演じました。病魔に侵されながらの撮影でしたが、エドワードに人間の心を教え、愛おしそうに見つめる彼の眼差しは、そのままプライスの温かな人間性を映し出しているかのようでした。彼が息を引き取るシーンは、映画ファンにとって涙なしには見られない、偉大なる俳優への最後の手向けとなりました。
📜 ヴィンセント・プライスを巡る知られざるエピソード集
1. コーラル・ブラウンとの「劇場での出会い」
3番目の妻となった女優のコーラル・ブラウンとは、1973年のホラー映画『血ぬられた墓標(シアター・オブ・ブラッド)』の共演で出会いました。劇中では彼が彼女を殺害する役でしたが、現実ではその瞬間に恋に落ちたという、怪奇スターらしいロマンチックな(?)逸話が残っています。二人は1974年に結婚し、彼女が1991年に亡くなるまで、お互いのユーモアと知性を愛し合う最高の夫婦でした。
2. 教育を支えた「移動美術館」
彼は無類の美術愛好家であり、その知識は専門家をも凌ぐものでした。「美術は一部の特権階級のものではなく、万人のためのものであるべきだ」という信念を持ち、シアーズ百貨店と提携して、安価で本物の美術品を一般家庭に普及させるプロジェクトを推進しました。また、1957年にはイースト・ロサンゼルス・カレッジに自らの膨大なコレクションを寄贈し、今も彼の名を冠した美術館が学生たちの学びを支えています。
3. 料理界の巨匠としての顔
俳優業と同じくらい情熱を注いだのが料理でした。妻メアリー・グラントと共に著した『A Treasury of Great Recipes』は、世界中の名門レストランのレシピを家庭向けに再現したもので、今や料理本のバイブル的な名著として知られています。テレビの料理番組にも出演し、エプロン姿で優雅に包丁を振るう彼の姿は、ホラー映画の役柄とは正反対の親しみやすさで視聴者を魅了しました。
4. マイケル・ジャクソンとの『スリラー』秘話
世界で最も売れたアルバム『スリラー』のナレーションは、わずか2回のテイクで完了したと言われています。彼はこの仕事に対し、当初は「ちょっとしたアルバイト」程度の認識でしたが、完成した曲が世界的な社会現象となったことに驚き、同時にその成功を非常に喜んでいました。あの有名な不気味な笑い声は、彼の録音スタジオでの即興から生まれたものでした。
5. 「恐怖の三人衆」の深い友情
ボリス・カーロフ、ピーター・ローレ、そしてヴィンセント・プライス。ホラー映画を象徴するこの三人は、公私ともに非常に仲が良かったことで知られています。撮影現場では互いに冗談を言い合い、観客を怖がらせるための演出を協力して練り上げました。彼らは「怪奇俳優」というレッテルを逆手に取り、それを一流のエンターテインメントへと昇華させた同志でした。
6. ティム・バートンからのラブレター
若き日のティム・バートンは、プライスに心酔しており、彼を主人公にした短編アニメーション『ヴィンセント』を制作しました。プライスはこの作品でナレーションを務め、自分の過去の役柄やパブリックイメージを愛をもって茶化すバートンの才能に深く感銘を受けました。これが後の『シザーハンズ』での共演へと繋がり、新旧の鬼才が手を取り合った美しい師弟関係が築かれました。
📝 まとめ:美と恐怖の境界線を歩んだ映画人生
ヴィンセント・プライスは、そのベルベットの歌声と貴族的な立ち振る舞いをもって、ホラー映画という闇の世界に知性とエレガンスという光を灯した俳優でした。
その歩みは、教養溢れる文化人としての矜持を持ちながら、あえて「悪役」や「怪人」という仮面を被ることで、人間の心の奥底にある滑稽さや悲しさを描き出すという、非常に贅沢で知的なプロセスでもありました。コーラル・ブラウンとの愛や美術、料理への情熱といった彩り豊かな私生活と、銀幕での不気味な活躍――その鮮やかな対比は、彼が人生そのものをひとつの完成された芸術作品として楽しんでいた証でもあります。
82歳で幕を閉じたその生涯は、シザーハンズの発明家が残した慈愛に満ちた記憶のように、恐怖の中にさえ美しさが宿ることを教えてくれた、ひとつの偉大なる芸術家としての映画人生でした。
[出演作品]
1939 28歳
女王エリザベス The Private Lives of Elizabeth and Essex
恐怖のロンドン塔 Tower of London
透明人間2 The Invisible Man Returns
1943 32歳
1944 33歳
ウィルソン Wilson
1945 34歳
1946 35歳
1947 36歳
1948 37歳
凸凹フランケンシュタインの巻 Bud Abott and Lou Costello Meet Frankenstein
1949 38歳
1950 39歳
1951 40歳
替え玉殺人計画 His Kind of Woman
1952 41歳
犯罪都市 The Las Vegas Story
1953 42歳
1954 43歳
雪原の追跡 Dangerous Mission
豪傑カサノヴァ Casanova’s Big Night
1955 44歳
四十人の女盗賊 Son of Sinbad
1956 45歳
愛のセレナーデ Serenade
1958 47歳
1959 48歳
ビッグ・サーカス The Big Circus
ティングラー/背すじに潜む恐怖 The Tingloer
ザ・バット The Bat
1960 49歳
1961 50歳
空飛ぶ戦闘艦 Master of the World
1962 51歳
女を売る街 Confessions of an Opium Eater
第三の脱獄 Convicts 4
1963 52歳
オルラ/血の連続殺人 Diary of a Madman
恐怖の夜 Twice-Told Tales
1964 53歳
黒猫の棲む館 The Tomb of Ligeia
1965 54歳
深海の軍神 The City Under the Sea
1967 56歳
金脈を追う男たち・ジャッカルズ The Jackals
1968 57歳
猛烈なる復讐 More Dead Than Alive
1969 58歳
呪われた棺 The Oblong Box
1970 59歳
バンシーの叫び Cry of the Banshee
バンパイアキラーの謎 Scream and Scream Again
1971 60歳
怪人ドクター・ファイブス The Abominable Dr. Phibes
The Hilarious House of Frightenstein (TV ナレーター)
1972 61歳
怪人ドクター・ファイブスの復活 Dr. Phibes Rises Again
1973 62歳
シェイクスピア連続殺人 血と復讐の舞台 Theatre of Blood
刑事コロンボ/毒のある花 Clumbo: Lovely But Lethal (TV)
1974 63歳
マッド・ハウス Madhouse
探偵スヌープ姉妹/青ひげさんお気の毒! The Snoop Sisters: Black Day for Bluebeard (TV)
1975 64歳
怒りの凶弾 Journey into Fear
1982 71歳
ヴィンセント Vincent
1983 72歳
ヘンゼルとグレーテル Hansel and Gretel
魔人館 House of the Long Shadows
スプラッターハウス/笑激の館 Bloodbath at the House of Death
1986 75歳
ミッドナイト・ゾーン Escapes
1987 76歳
魔性の囁き/悪夢と幻想の四章 From a Whisper to a Scream / The Offspring
八月の鯨 The Whales of August
1988 77歳
ゾンビコップ Dead Heat
1989 78歳
1990 79歳
泥棒と靴屋 The Thief and the Cobbler(声)




































