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月夜の宝石 Les Bijoutiers du clair de lune 1957 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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情熱の太陽と漆黒の月夜が交錯するアンダルシア。愛と逃避行の果てに眩しく輝く、過激な純愛。

名匠ロジェ・ヴァディム監督が、『素直な悪女』に続き当時の妻であり「セックス・シンボル」として世界中を魅了していたブリジット・バルドーを主演に迎えて描いたロマンチック・サスペンス。

アルベール・ヴィダリーの小説『月光の宝石商人』を原作に、野性的な美しさをもつ少女と、復讐に燃える青年の命がけの逃避行を描く。

スペイン・アンダルシアの荒々しくも美しい自然美と、ジョージ・オーリックによる抒情的な音楽、そしてバルドーの官能的で無垢な魅力が光る愛欲と情熱のドラマ。

月夜の宝石
Les Bijoutiers du clair de lune
(フランス・イタリア 1957)

[製作] ラウール・レヴィ
[監督] ロジェ・ヴァディム
[原作] アルベール・ヴィダリー
[脚本] ジャック・レミ/ロジェ・ヴァディム/ピーター・ヴィエルテル
[撮影] アルマン・ティラール
[音楽] ジョルジュ・オーリック
[ジャンル] クライム/スリラー/ドラマ

キャスト

ブリジット・バルドー
(ウルシュラ)

アリダ・ヴァリ
(フロレンティーン)

スティーヴン・ボイド (ランベール)
ペペ・ニエト (リベラ伯爵)

マルチ・フレスノ (コンチータ)

評価

ロジェ・ヴァディム監督特有の、シニカルでありながら甘美で官能的な演出スタイルが遺憾なく発揮された作品です。 それまでのバルドー作品が見せた無邪気なコメディ要素から一転し、シリアスで愛欲に満ちた逃避行を描くことで、彼女の新たな女優としてのポテンシャルを引き出しました。名撮影監督アルマン・ティラールによるアンダルシアの荒涼とした白壁の町並みや月夜のコントラストも高く評価されています。

あらすじ:アンダルシアの地に降り立った少女

修道院を出たばかりの可憐で無垢な少女ウルシュラ(ブリジット・バルドー)は、叔母フロレンティーン(アリダ・ヴァリ)と、その夫リベラ伯爵(ペペ・ニエト)が暮らすスペイン・アンダルシアの田舎町へとやってくる。その途上、彼女は地元警察に追われていた貧しい青年ランベルト(スティーヴン・ボイド)と出会い、一目で彼に心を奪われる。

しかし、ランベルトは妹を自死に追いやったリベラ伯爵への復讐に燃えており、さらに伯爵夫人である叔母フロレンティーンと密かに愛人関係を結んでいた。

ある夜、フロレンティーンと密会していたランベルトはリベラ伯爵に見つかり、激しい揉み合いの末に誤って伯爵を刺し殺してしまう。叔母の愛人であることを知りながらも、ランベルトへの愛を抑えきれないウルシュラは、彼をかくまい、二人で警察の手を逃れて荒野へと危険な逃避行に出かけるのだった。

警察の激しい包囲網が迫るなか、乾いた岩場や暗い洞窟を彷徨う二人。過酷な逃亡生活の中で、最初はウルシュラを利用しようとしていたランベルトも、身を挺して自分を愛し支えてくれる彼女のひたむきで野性的な純真さに心を打たれ、本気で愛し合うようになる。

二人はジブラルタルから海外へ脱出することを計画するが、復讐と嫉妬に狂った叔母フロレンティーンが警察に密告し、追い詰められていく。

ついにジブラルタル近くの町で警察に包囲された二人。ランベルトはウルシュラを巻き込むまいと彼女を押しのけ、一人で逃亡を図ろうとするが、無情にも警官隊の銃砲が弾け飛ぶ。撃ち抜かれたランベルトのもとへ、ウルシュラは叫びながら駆け寄る。血を流し息絶えていくランベルトを強く抱きしめ、ウルシュラは彼の唇に最期の口づけを交わす。太陽が降り注ぐ広場で、愛する者を失った彼女の悲痛な叫びがどこまでも響き渡るのだった。


エピソード・背景

  • BB(ブリジット・バルドー)現象の最高潮
    『素直な悪女』(1956年)で世界的スターとなったブリジット・バルドーの絶頂期に制作された作品。彼女のファッションや髪型、自由奔放で官能的な立ち振る舞いは世界中の若者に強烈な影響を与えました。
  • ロジェ・ヴァディム監督との離婚直後の撮影
    監督のロジェ・ヴァディムとバルドーは1957年に離婚したばかりでしたが、映画監督と女優(ミューズ)としての信頼関係は継続しており、二人のタッグ作として本作が制作されました。
  • ハリウッドスター、スティーヴン・ボイドの起用
    のちに『ベン・ハー』(1959年)のメッサーラ役で大ブレイクする北アイルランド出身の俳優スティーヴン・ボイドが相手役を務めました。アメリカ資本も入ったことで、より国際的な規模の制作となりました。
  • 名優アリダ・ヴァリの圧倒的存在感
    『第三の男』や『夏の嵐』で知られる名女優アリダ・ヴァリが、欲望と嫉妬に狂う叔母フロレンティーン役を好演。若く野生味溢れるバルドーと、成熟した陰のあるヴァリの対比がドラマに深みを与えています。
  • 全編スペイン・アンダルシアでのロケーション
    コルドバやロンダなど、スペイン南部の雄大な自然や白壁の町並み、月夜の陰影を捉えたロケーション撮影が作品の美しさを際立たせています。
  • 原題『Les Bijoutiers du clair de lune』の意
    原題を直訳すると「月光の宝石商人たち」となります。荒涼とした月夜の影で密かに愛を紡ぐ二人の逃亡者を、闇の中で輝く宝石になぞらえた詩的で魅力的なタイトルです。

まとめ:作品が描いたもの

道徳や社会的立場を軽々と飛び越え、ただ一人の男への情熱に身を投じる少女の「過激なまでの純愛」を描いたラブロマンスです。アンダルシアの光と影、暴力と官能が交錯する世界観の中で、愛することの代償と美しさを残酷なまでに描き出しています。

〔シネマ・エッセイ〕

白く眩しい太陽が照りつけるアンダルシアの岩場と、青く静まり返った月夜のコントラスト。スクリーンの端々から漂うのは、スペインの乾いた風と、逃げ場のない二人の身体から立ち上る生々しい情熱の匂いです。

この作品のグラマラスで狂おしいドラマを支えているのは、主演ブリジット・バルドーが見せる野性味溢れる身体表現と表情のディテールです。裸足で乾いた大地を駆け抜けるしなやかな足取り、乱れた金髪の間から射すような強い視線で男を見つめる瞳の輝き。彼女は単なる「官能的な美少女」にとどまらず、愛する男のためなら死をも恐れない情念の強さを、弾けるような躍動感で見事に表現しています。対するスティーヴン・ボイドも、過去の復讐心に囚われ荒んだ男の険しい眼差しが、バルドーの無垢な愛に触れて柔らかな熱を帯びていく変化を、絞り出すような低い声のトーンとともに味わい深く体現しています。

ラスト、警察の弾丸に倒れた男に駆け寄り、血に濡れた胸に顔をうずめるバルドー。その瞳に浮かぶ絶望と、涙をぬぐい去った後に見せる狂おしいほどの気高さ。愛する者と永遠に重なり合ったその最期の姿は、月光の下で一瞬だけ輝いた密やかな宝石のように、いつまでも胸に鮮烈な余韻を残します。

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