若返り薬が生む大騒動を描くハワード・ホークス監督の爆笑スクリューボール・コメディ!

巨匠ハワード・ホークス監督が、ケーリー・グラントとジンジャー・ロジャース、そしてブレイク直前のマリリン・モンローを迎えて贈るナンセンス・コメディの傑作。
チンパンジーの戯れから生まれた奇跡の「若返り薬」をめぐり、知性あふれる大人たちが精神年齢だけ若返って巻き起こすドタバタ劇を、テンポよくコミカルに描き出す。
モンキー・ビジネス
Monkey Business
(アメリカ 1952)
[製作] ソル・C・シーゲル
[監督] ハワード・ホークス
[原作] ハリー・シーガル
[脚本] ベン・ヘクト/チャールズ・レダラー/I・A・L・ダイアモンド
[撮影] ミルトン・クラスナー
[音楽] リー・ハーライン
[ジャンル] SF/コメディ
キャスト

ケーリー・グラント
(バーナビー・フルトン)

ジンジャー・ロジャース
(エドウィナ・フルトン)
チャールズ・コバーン (オリヴァー・オクスリー)

マリリン・モンロー
(ロイス・ローレル)
ヒュー・マーロウ (ハンク・エントホィッスル)
アンリ・ルトンダル (ジェローム・リントン)
ロバート・コーンスウェイト (Dr.ゾルデック)
ラリー・キーティング (G・J・カルヴァリー)
ダグラス・スペンサー (Dr.ブルナー)
エスター・デイル (ラインランダー夫人)
ジョージ・ウィンスロウ (リトル・インディアン)
受賞・ノミネートデータ
| 受賞年 | 賞 | 部門 | 結果 |
| 1953 | 第10回ゴールデングローブ賞 | 主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門:ジンジャー・ロジャース) | ノミネート |
評価
スクリューボール・コメディの第一人者ハワード・ホークス監督による、スピード感溢れる展開が光る一作です。
大スターのケーリー・グラントとジンジャー・ロジャースが、体当たりで無邪気な子供時代へと退行するギャップ演技を見事に体現しています。さらに、社長秘書役で登場するマリリン・モンローの圧倒的な華やかさとコミカルな魅力も合わさり、ハリウッド黄金期の娯楽映画として高い評価を得ています。
あらすじ
製薬会社で若返り秘薬の研究に没頭する生真面目な化学者バーナビー・フルトン博士(ケーリー・グラント)。研究は難航していたが、実験用のチンパンジーが調合室から脱出し、偶然薬品を混ぜ合わせてウォーターサーバーへ投げ込んでしまう。
そうとは知らずにサーバーの水を飲んだバーナビーは、一瞬にして心が10代の思春期へと若返ってしまう。メガネを外し、スポーツカーを購入した彼は、社長秘書のロイス(マリリン・モンロー)を連れ出してドライブやスケートへ繰り出す大騒ぎを引き起こす。
薬効が切れて疲れ果てたバーナビーだったが、事情を知らない妻エドウィナ(ジンジャー・ロジャース)も同じ水を飲んでしまい、今度は彼女がワイルドな女学生のように若返って暴走を始めてしまうのだった。
夫の昔の嫌疑に嫉妬したエドウィナは新婚旅行先へ車を走らせ、追ってきたバーナビーとホテルで破天荒な喧嘩を繰り広げる。翌朝、薬が切れてお互い我に返るものの、製薬会社の幹部たちが研究室に集まり、サーバーに奇跡の薬が混ざっていることを知らずに皆でコーヒーを淹れて飲んでしまう。
今度は大勢の大人たちが一斉に幼児化し、社長や役員たちが水鉄砲を掛け合う大混乱に陥る。バーナビー自身も無邪気なインディアンごっこに興じて近所の子供たちと暴れ回るが、時間が経つにつれて全員が無事に元の落ち着いた大人へと戻っていく。
若返り薬の現物はうやむやのまま消滅し、失われた若さを無理に追うのではなく、今の年齢を尊重して愛し合うことの大切さを悟ったバーナビーとエドウィナは、穏やかな日常へと戻っていくのだった。
エピソード・背景
- マリリン・モンローの憧れだったケーリー・グラント
少女時代に不遇な環境で育ったマリリン・モンローは、部屋の壁に憧れの大スターとしてケーリー・グラントの写真を貼っていました。本作で共演を果たした際、彼女は夢が叶ったと大変喜んだと言われています。 - 撮影現場でのマリリンの私生活の苦悩
スクリーンでは輝かしい笑顔を見せているマリリンでしたが、撮影当時は流産や結婚生活の破綻といった個人的な大きな悲しみに直面していました。それでも過酷な状況を乗り越えて演じ切り、共演者やスタッフからそのプロ意識を称賛されました。 - 伝説のスポーツカーと大物女優のオークション
劇中で若返ったバーナビーが乗り回す赤いスポーツカー(1952年製MG TDロードスター)は、撮影時にケーリー・グラントが誤って柵に衝突させて傷をつけた逸話があります。後に女優デビー・レイノルズが買い取り、2011年のオークションで約21万ドルで落札され話題となりました。 - 当初の主演候補はダニー・ケイだった
企画の初期段階では、主人公の博士役としてコメディアンのダニー・ケイが検討されていました。最終的にハワード・ホークス監督の信頼が厚いケーリー・グラントへ白羽の矢が立ち、名作『赤ちゃん教育』を思わせるメガネの学者役が誕生しました。 - 役名「ロイス・ローレル」に隠された喜劇への敬意
マリリン・モンロー演じる秘書の役名「ローラ・ローレル(Lois Laurel)」は、往年の伝説的喜劇コンビ「ローレル&ハーディ」のスタン・ローレルの実娘の名前にちなんで命名されたものです。
まとめ
大人の知性と子供の無邪気さが交錯する、ハリウッド黄金期ならではの洗練されたコメディ名品です。テンポよく繰り出される笑いの裏に「年を重ねることの素晴らしさ」という心温まるメッセージが込められており、観る者を爽快な気分にさせてくれます。
〔シネマ・エッセイ〕
スクリーンに広がるのは、いたずら好きなチンパンジーが一滴の薬品を落としたことから始まる滑稽な大騒動です。生真面目な学者や気品ある妻が、理性を投げ打って無邪気な子供のように駆け回る姿に、思わず笑みがこぼれてしまいます。
スポーツカーを飛ばし、水鉄砲で戯れる彼らの眼差しには、大人がいつの間にか忘れてしまった眩しい情熱が宿っているかのようです。若さという眩しい幻影に振り回されながらも、最後には互いの愛おしい皺や歩んできた歳月を愛おしむ夫婦の佇まい——。
「若さとは年齢ではなく、心をいかに開いているかだ」という温かい教訓が、ドタバタ劇の残像とともに深く胸に染み入るのです。

