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ローマの休日 Roman Holiday 1953

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たった一日の自由と、永遠に刻まれた恋。永遠の都ローマに咲いた、あまりにも美しく切ない夢物語。

名匠ウィリアム・ワイラー監督が、映画史に燦然と輝く永遠のロマンチック・コメディの金字塔。

ヨーロッパ歴訪中の王女と、一獲千金を狙うアメリカ人新聞記者が、永遠の都ローマを舞台に繰り広げるたった一日限りの密やかな恋模様を描く。

本作で一躍世界的スターとなりアカデミー主演女優賞に輝いたオードリー・ヘプバーンの可憐な魅力と、グレゴリー・ペックの包容力あふれる演技、そして名所を彩る美しいモノクローム映像が融合した不朽の名作。

ローマの休日
Roman Holiday
(アメリカ 1953)

[製作] ウィリアム・ワイラー/ロバート・ワイラー
[監督] ウィリアム・ワイラー
[脚本] イアン・マクラレン・ハンター(ダルトン・トランボ)/ジョン・ダイトン
[撮影] フランツ・プラナー/アンリ・アルカン
[音楽] ジョルジュ・オーリック
[ジャンル] 恋愛/コメディ
[受賞]
アカデミー賞 主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)/衣装デザイン賞/脚本賞
英国アカデミー賞 主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)
ゴールデン・グローブ賞 主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)
NY批評家協会賞 主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)

キャスト

オードリー・ヘプバーン
(アン王女/アーニャ・‘スミッティ’・スミス)

グレゴリー・ペック
(ジョー・ブラッドリー)

エディ・アルバート (アーヴィング・ラドヴィッチ)
ハートリー・パワー (ヘネシー)
ハーコート・ウィリアムズ (大使)
マーガレット・ローリングス (ヴェルベール伯爵夫人)
トゥリオ・カルミナティ (プロフノ将軍)
パオロ・カーリーニ (マリオ・デラーニ)
クラウディオ・エルメリ (ジョヴァンニ)



受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1954第26回アカデミー賞主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)受賞
1954第26回アカデミー賞原案賞(ダルトン・トランボ)受賞
1954第26回アカデミー賞衣裳デザイン賞(白黒部門)受賞
1954第26回アカデミー賞作品賞 / 監督賞 / 助演男優賞 / 脚色賞 他ノミネート
1954第11回ゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞(ドラマ部門)受賞
1954第7回英国アカデミー賞最優秀英国女優賞(オードリー・ヘプバーン)受賞

評価

ロマンチック・コメディというジャンルの頂点として、半世紀以上経った今なお世界中で愛され続けている傑作です。 新人女優だったオードリー・ヘプバーンの気品と可憐さを極限まで引き出したウィリアム・ワイラー監督の手腕と、ユーモアの中にも切なさを忍ばせた脚本の完成度が高く評価され、映画史に残る数々の名シーンを生み出しました。

あらすじ:王女の逃亡と運命の出会い

ヨーロッパ各国の親善訪問で多忙な日々を送る某国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)は、過密なスケジュールと自由のない生活に嫌気がさし、訪問先のローマでパニックを起こしてしまう。鎮静剤を打たれたものの、夜中に大使館を抜け出して街へ飛び出したアンは、薬効で街頭のベンチでうとうと眠り込んでしまう。

通りかかったアメリカ人の新聞記者ジョー・ブラッドリー(グレゴリー・ペック)は、泥酔者だと思い込んで彼女を介抱し、自分のアパートへ連れ帰って寝かせる。翌朝、彼女が逃亡中の「アン王女」であることに気づいたジョーは、スクープ写真を撮って一獲千金を狙おうと画策。友人のカメラマン・アーヴィング(エディ・アルバート)を呼び寄せ、身分を隠したアンに「ローマ案内」を申し出る。

髪を短くヘプバーンカットにし、ジェラートを食べ、スクーター「ヴェスパ」で街を駆け抜けるアン。生まれて初めての自由を満喫する彼女と、そんな彼女の純粋さに惹かれていくジョーの間に、いつしか本気の恋心が芽生え始めていく。

夜、サンタンジェロ城近くの船上パーティに繰り出した二人だったが、アンを探す秘密警察が現れ、大立ち回りの喧嘩に発展する。川へ飛び込んで危機を脱した二人は、濡れた体を寄せ合い、お互いへの抑えきれない愛を確信する。

しかし、自分の立場と責任を自覚しているアンは、「12時になったら魔法が解けるシンデレラ」のように、涙を飲んで大使館へ戻る決意をする。ジョーのアパート前での別れ際、二人は固く抱き合い、決して叶わない恋に無言の別れを告げる。

ジョーは彼女を守るため、特大スクープとなる記事と写真の掲載を棄て、真実を伏せることを決意する。

翌日、記者会見の場。王女として公務の場に戻ったアンの前に、記者として立ち会うジョーとアーヴィングの姿があった。アーヴィングは「ローマの思い出に」と密かに撮影していた写真をアンに手渡す。記者からの「訪問国の中でどこが一番印象深かったか」という質問に対し、側近の制止を振り切ったアンは、ジョーを真っ直ぐ見つめながら「ローマです。何と言ってもローマです。この街の思い出を、私は生涯大切にするでしょう」と答える。

会見が終わり、すべての記者が去った無人の大広間。ジョーは一人残され、彼女が去っていった扉を静かに見つめた後、足音を響かせながら一人歩み去っていくのだった。


エピソード・背景

  • オードリー・ヘプバーンのシンデレラ・ストーリー
    当時無名に近かったオードリーのスクリーンテストを見たワイラー監督は、演技が終わった後の彼女の自然体でチャーミングな素顔に一目惚れし、即座に主演に抜擢しました。本作一作で彼女はハリウッドのトップスターへと駆け上がりました。
  • グレゴリー・ペックの紳士的な気配り
    当初、クレジットはトップスターであるグレゴリー・ペック単独の予定でした。しかし、撮影中にオードリーの才能を確信したペックは、「彼女は本作で必ずアカデミー賞を獲る。彼女の名前も自分と同等に上に連名で出すべきだ」とプロデューサーに強く掛け合い、連名クレジットが実現しました。
  • 「真実の口」シーンの有名なアドリブ
    観光名所「真実の口」でジョーが手を引き抜くと手がなくなっているという超有名なシーン。これはペックがワイラー監督と示し合わせた仕掛けで、オードリーには知らせていませんでした。彼女が見せた素の驚きと悲鳴、そして安堵の笑みは本物のリアクションです。
  • 冷戦下のブラックリストとダルトン・トランボ
    原案を手掛けた名脚本家ダルトン・トランボは、当時ハリウッドの「赤狩り(ハリウッド・テン)」によって追放されていました。そのため友人名義(イアン・マクレラン・ハンター)で発表されアカデミー賞を受賞。トランボの名誉が正式に回復され、遺族にオスカー像が贈られたのは死後の1993年(作品賞クレジット改訂は2011年)のことでした。
  • オール・ロケーション撮影がもたらした空気感
    当時のハリウッド映画としては異例の、全編イタリア・ローマでのオール・ロケーション撮影が敢行されました。スペイン広場、トレヴィの泉、コロッセオなど、本物のローマの町並みが持つ歴史的気品が作品の魅力を一層高めています。
  • スクーター「ヴェスパ(Vespa)」の世界的大ヒット
    劇中でアンとジョーが二人乗りでローマの街を駆け抜けたイタリアのスクーター「ヴェスパ」は、映画の公開とともに世界中で空前の大ヒットを記録。ポップカルチャーのアイコンとしての地位を確立しました。

まとめ:作品が描いたもの

立場や身分を超えた二人の人間が、たった一日だけ共有した最高に輝かしい「真実の愛」を描いた永遠のラブロマンスです。自分の責任と立場を受け入れる大人への成長と、一生消えることのない甘く切ない記憶の尊さを、洗練されたユーモアと気品あふれる映像で描き出しています。

〔シネマ・エッセイ〕

陽光に煌めく噴水、石畳を跳ねるスクーターのエンジン音、そして夜のテヴェレ川に映る美しい月影。スクリーンのあらゆる瞬間から立ち上るのは、胸がすくような開放感と、やがて訪れる別れを予感させる甘酸っぱい切なさです。

この不滅のロマンを完成させているのは、主演ふたりの細やかな身体表現と、視線が織りなす演技のディテールです。オードリー・ヘプバーンは、束縛に満ちた靴を脱ぎ捨てる所作や、髪をバッサリ切った後の晴れやかな瞳の輝きで、自由を得た少女の歓喜を可憐に表現しています。また、ジョーのアパートで強がりながらもどこか心細そうに見せる表情の揺れには、王女としての気品と等身大の儚さが同居しています。

対するグレゴリー・ペックも、最初は下心から浮かべていた硬い微笑みが、彼女の無垢さに触れるにつれて優しく柔らかな眼差しへと変わっていく過程を、包容力あふれる低い声のトーンとともに味わい深く体現しています。

ラストシーン、気品ある王女の仮面を被りながらも、ジョーと目を合わせる一瞬だけに宿るアンの潤んだ瞳。そして、誰もいなくなった会見場に静かに一人残り、彼女の去った扉を長い見つめた後に、ゆっくりと歩み出すジョーの重みのある足取り。言葉を超えて交わされた二人の「永遠の誓い」は、映画史上で最も美しく気高い余韻として、いつまでも観る者の心に残り続けます。

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