恋の狙い撃ちは百発百中?野生児アニーが恋と興行に駆ける、陽気でパワフルな西部劇ミュージカル。

実在の女性射撃手アニー・オークリーの波乱万丈な半生を、アーヴィング・バーリンの名曲にのせて映画化。粗野な野生児アニーが、花形射撃手フランクに恋をしたことから始まる、笑いと涙の恋の射撃大会。
ベティ・ハットンの圧倒的なエネルギーと、『ショウほど素敵な商売はない』などのスタンダードナンバーが炸裂する、MGMミュージカル黄金期の傑作。
アニーよ銃をとれ
Annie Get Your Gun
(アメリカ 1950)
[製作] ロジャー・イーデンス/アーサー・フリード
[監督] ジョージ・シドニー/バスビー・バークリー/チャールズ・ウォルターズ
[原作] ドロシー・フィールズ
[脚本] シドニー・シェルダン
[撮影] チャールズ・ロシャー
[音楽] ロジャー・イーデンス/アーヴィング・バーリン
[ジャンル] ミュージカル/ウエスタン
[受賞] アカデミー賞 作曲賞
キャスト

ベティ・ハットン
(アニー・オークリー)
ハワード・キール (フランク・バトラー)
ルイス・カルハーン (バッファロー・ビル・コディ)
J・キャロル・ネイシュ (シティング・ブル)
キーナン・ウィン (チャーリー・ダヴェンポート)
ビニー・ヴェヌータ (ドリー・テイト)
クリントン・サンドバーグ (フォスター・ウィルソン)
ジェームズ・H・ハリソン (マック)
ブラッド・モロー (リトル・ジェイク)
スーザン・オーディン (ジェシー)
ダイアン・ディック (ネリー)
受賞・ノミネートデータ
| 受賞年 | 賞 | 部門 | 結果 |
| 1951 | 第23回アカデミー賞 | ミュージカル映画音楽賞 | 受賞 |
| 1951 | 第23回アカデミー賞 | 美術賞/撮影賞/編集賞 | ノミネート |
| 1951 | 第8回ゴールデングローブ賞 | 主演女優賞(ベティ・ハットン) | ノミネート |
評価
ブロードウェイの大ヒット舞台を映画化した本作は、視覚的な豪華さと耳に残る楽曲の素晴らしさで、公開当時から絶大な支持を集めました。主演のベティ・ハットンによる、型破りでエネルギッシュなパフォーマンスは、まさに彼女の代名詞とも言える輝きを放っています。
男女のプライドをかけた「Anything You Can Do」の掛け合いなど、ミュージカル映画ならではの楽しさが凝縮されており、娯楽映画としての完成度は極めて高い一作です。
あらすじ:恋の照準は、憧れの花形スター
オハイオの田舎で、家族のために猟をして暮らす野生児アニー(ベティ・ハットン)。彼女は類まれな射撃の才能を持っていた。ある日、町へやってきた移動興行「バッファロー・ビルのワイルド・ウエスト・ショウ」の花形射撃手フランク(ハワード・キール)に一目惚れしたアニーは、彼に近づきたい一心で興行に加わる。
アニーはまたたく間にスターへと成長し、座長からも重宝されるが、自尊心の強いフランクは、自分を凌ぐ腕前を見せ始めたアニーに対して複雑な感情を抱き、ついには彼女の前を去ってしまう。
欧州公演を終えて凱旋したアニーは、別の興行に身を置いていたフランクと再会する。二人は再び射撃で対決することになるが、アニーの養父となった部族の首長シッティング・ブル(J・キャロル・ネイシュ)は、アニーに「女が勝てば男を失う」と諭す。
アニーはフランクへの愛を優先し、わざと的を外して彼に勝ちを譲る。フランクは彼女の深い愛と真心に気づき、二人は固く抱き合った。最後は二人揃ってショウの看板スターとして、華やかなフィナーレを迎える。
エピソード・背景
- 主演交代のドラマ
当初はジュディ・ガーランドで撮影が進められていたが、彼女の体調不良により降板。代役に抜擢されたベティ・ハットンが、そのプレッシャーを跳ね除ける熱演を見せた。 - 名曲の宝庫
音楽を担当したアーヴィング・バーリンによる楽曲は、今や誰もが知る名曲ばかり。特に「There’s No Business Like Show Business」は、興行界の非公式なアンセムとなっている。 - 実在のアニー・オークリー
実際の彼女も非常に謙虚で、夫フランクと長年連れ添った仲睦まじい夫婦として知られていた。 - ハワード・キールのデビュー
本作はMGMの看板スターとなるハワード・キールの実質的なデビュー作。その豊かなバリトンボイスは観客を魅了した。 - カラー映像の鮮やかさ
1950年代初頭のテクニカラーによる色彩設計が、西部の衣装やショウの舞台装置を鮮烈に際立たせている。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、一人の女性が才能と恋の間で揺れ動きながら、自らの幸せを掴み取るまでの物語を記録した、愛すべきエンターテインメントでした。アニーが歌う「Anything You Can Do(あなたにできることは、私にもできる)」という歌詞には、当時の女性たちの自立心と逞しさがユーモアと共に込められています。
最後には愛のために一歩引くという、現代の視点からは賛否ある結末ながら、それを補って余りある多幸感が、この映画を特別なものにしているのです。
〔シネマ・エッセイ〕
泥だらけの顔をして、誰よりも大きな声で歌い出すベティ・ハットン。彼女の放つ熱量は、画面を突き抜けてこちらの心まで明るく照らしてくれます。ハワード・キールとの息の合った二重唱を聴いていると、古き良きハリウッドが持っていた、無条件に人を元気づけるパワーを再確認させられます。
あえて銃の照準をずらすことで、愛する男の手を取るアニー。その潔い選択に、少しばかりの寂しさを感じつつも、彼女の満面の笑みを見ると、それもまた一つの「勝利」の形なのだと思えてくるから不思議です。
「ショウほど素敵な商売はない」。幕が下りた後の静寂の中で、そのフレーズがいつまでも耳の奥で踊り続けてやみません。時代が変わっても色褪せない、弾けるような歌声と輝きが、ここには溢れています。

