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うたかたの恋 Mayerling 1936 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】| シャルル・ボワイエ | ダニエル・ダリュー

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暁の雪に消えた、高貴なる魂の心中。美しき悲劇の決定版

うたかたの恋

1889年、オーストリア皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー。歴史を揺るがした『マイヤーリング事件』を、シャルル・ボワイエとダニエル・ダリューの共演で描く。ハプスブルク家の黄昏の中に咲き、そして散った、世界で最も有名な悲恋の物語。

うたかたの恋
Mayerling
(フランス 1936)

[製作]  セイモア・メベンサル
[監督]  アナトール・リトヴァク
[原作]  クロード・アネ
[脚本]  ジョゼフ・ケッセル/イルマ・フォン・キューブ/マルセル・アシャール
[撮影]  アルマン・ティラール
[音楽]  アルトゥール・オネジェール/アン・メイ
[ジャンル]  ドラマ/恋愛/実話
[受賞]  NY批評家協会賞 外国語映画賞

キャスト

シャルル・ボワイエ
(ルドルフ皇子)

ダニエル・ダリュー
(マリー)

ジャン・ダックス (フランツ・ヨーゼフ皇帝)
ジャン・ドビュクール (ターフェ伯爵)
ガブリエル・ドルジア (エリザベート女王)
マルト・レーニエ (マリーの母エレーヌ)


受賞・ノミネートデータ

  • 1936年 ニューヨーク映画批評家協会賞
    • 受賞:外国語映画賞
  • 評価
    • アナトール・リトヴァク監督の出世作であり、数ある同テーマの映画化の中でも、本作の詩的な美しさと格調高さは群を抜いていると評されています。


ストーリー

19世紀末のウィーン。オーストリア皇太子ルドルフ(シャルル・ボワイエ)は、厳格な父皇帝との対立や、愛のない政略結婚に絶望し、放蕩に耽る日々を送っていた。

ある日、ルドルフは若く純真な男爵令嬢マリー(ダニエル・ダリュー)と出会う。彼女の清らかな瞳に「真実の愛」を見出した彼は、初めて孤独な魂を癒やしてくれる存在を得る。しかし、二人の関係はすぐに宮廷の知るところとなり、皇帝はマリーとの絶縁をルドルフに命じる。

自由も愛も許されない世界に絶望した二人は、死によって永遠に結ばれる道を選ぶ。

1889年1月、ウィーン郊外の狩猟小屋マイヤーリング。降りしきる雪の中、二人は誰にも邪魔されない最後の24時間を過ごす。そして夜明け前、ルドルフは安らかに眠るマリーの命を絶ち、自らも彼女のそばで拳銃の引き金を引く。翌朝、折り重なるようにして息絶えた二人の遺体が発見された。ハプスブルク家の崩壊を予感させるような、冷たくも美しい冬の朝の出来事だった。


エピソード・背景

  • ダニエル・ダリューの衝撃的な美しさ
    当時わずか18歳だった彼女は、この作品で一躍国際的なスターとなりました。彼女の透明感あふれる美しさと、恋を知った瞬間の輝くような瞳は、悲劇のヒロインとしての説得力を完璧なものにしています。彼女はこの後、フランス映画界の至宝として長く君臨することになります。
  • シャルル・ボワイエの哀愁漂う名演
    落ち着いた演技の中に、死へ傾斜していく男の危うさと孤独を滲ませたボワイエの演技は、世界中で絶賛されました。彼の深い眼差しは「ボワイエ・アイ」とも呼ばれ、観る者を虜にしました。
  • 詩的リアリズムの極致
    二人の身分が判明し、絶望へと向かうバレエ鑑賞のシーンなど、視覚的なオーバーラップを用いた演出が非常に効果的です。豪華なセットさえも二人の孤独を際立たせるために使われており、古典映画の美学が詰まっています。
  • 宝塚歌劇団への多大な影響
    日本では、この映画をベースに柴田侑宏が脚本を書き下ろし、宝塚歌劇団の看板演目として定着しました。「うたかたの恋」という邦題自体が、この物語の儚さを象徴する言葉として日本人に深く刻まれています。
  • 検閲を乗り越えた公開
    戦前の日本では上映禁止処分を受けましたが、戦後公開された際には、そのリリカルな表現が軍国主義からの解放を求めていた当時の日本人の心に深く刺さり、歴史的なヒットを記録しました。
  • リトヴァク監督の国際的評価
    この作品の成功により、リトヴァク監督はハリウッドに招かれ、『蛇の穴』や『追想』といった名作を手がけることになります。彼の持つ「ヨーロッパ的な憂い」がハリウッドの技術と融合するきっかけとなった重要な一作です。


まとめ:作品が描いたもの

本作が描くのは、強大な権力を持ちながらも、一人の人間としての自由と愛を奪われた男の悲哀です。ルドルフにとってマリーは、腐敗していく帝国の中で唯一見つけた「純粋な光」でした。心中という選択は、不自由な世界に対する最後の抵抗として、どこか聖なる儀式のように美しく描き出されています。


〔シネマ・エッセイ〕

マイヤーリングの森に、静かに降り積もる雪。あの冷たく静かな光景が、二人の情熱の最後を包み込むラストシーンは、映画史に残る美しさです。若きダニエル・ダリューの、何も疑わないような真っ直ぐな瞳。それを見つめるシャルル・ボワイエの、すべてを諦めたような深い眼差し。この二人の視線が交わるだけで、言葉以上の絶望と愛が伝わってきます。1930年代フランス映画特有の香りと共に、今なお私たちの胸を締め付ける傑作です

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