ウォンテッド
Wanted
(アメリカ・ドイツ・ロシア 2008)
[製作総指揮] ゲイリー・バーバー/ロジャー・バーンバウム/アダム・シーゲル/マーク・シルヴェストリ
[製作] ブレア・ブレアード/クリス・カーライル/サリー・フレンチ/JGジョーンズ/ジャレッド・レボフ/ジム・レムリー/マーク・ミラー/デヴィッド・ミンコウスキー/ジェイソン・ネッター/マーク・プラット/イアン・スミス/マシュー・スティルマン
[監督] ティムール・ベクマンベトフ
[原作] マーク・ミラー/JG・ジョーンズ
[ストーリー] マイケル・ブラント/デレク・ハース
[脚本] マイケル・ブラント/デレク・ハース/クリス・モーガン
[撮影] ミッチェル・アムンセン
[音楽] ダニー・エルフマン
[ジャンル] アクション/クライム/スリラー
キャスト

ジェームズ・マカヴォイ
(ウェスリー・ギブソン)

モーガン・フリーマン
(スローン)

アンジェリーナ・ジョリー
(フォックス)

テレンス・スタンプ
(ペクワースキー)

トーマス・クレッチマン
(クロス)
コモン (ガンスミス)
クリステン・ヘイガー (キャシー)
マーク・ウォーレン (リペアマン)
デヴィッド・オハラ (ミスターX )
コンスタンティン・ハベンスキー (エクスターミネーター)
ダト・バフタゼ (ブッチャー)

クリス・プラット
(バリー)
ローナ・スコット (ジャニス)
ソフィア・ハク (プージャ)
ブライアン・カスペ (薬剤師)
マーク・オニール (同僚)
ブリジット・マクマナス (チェックアウトガール)
ストーリー
うだつの上がらない平凡な事務員ウェズリー・ギブソン(ジェ-ムズ・マカヴォイ)は、横暴な上司からの罵倒に耐え、親友と浮気する恋人に何も言えない、無気力で退屈な日々を送っていた。彼は時折襲ってくる激しい動悸をパニック障害だと思い込み、薬で抑え込んでいた。ある日、薬局で謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)に声をかけられた直後、彼は凄腕の暗殺者クロス(トーマス・クレッチマン)による銃撃戦に巻き込まれた。フォックスによって救出されたウェズリーは、千年以上の歴史を持つ秘密の暗殺組織「フラタニティ(兄弟団)」の本部へと連れ去られた。
組織のリーダーであるスローン(モーガン・フリーマン)は、ウェズリーの父親が組織の最強の暗殺者であったこと、そして先日裏切り者のクロスによって殺害されたことを告げた。ウェズリーを襲っていた動悸は病気ではなく、極限状態で心拍数が跳ね上がり、周囲がスローモーションに見えるほどの超人的な反射神経と集中力を発揮する「暗殺者の才能」の発現であった。父の遺産を手にすることと、退屈な日常を捨てる決意をしたウェズリーは、組織での過酷な訓練を開始した。
訓練は容赦のないものであった。フォックスによる激しい格闘、肉体を酷使する銃撃戦、さらには傷を瞬時に癒す特殊な「回復風呂」での治療を繰り返した。ウェズリーは「銃弾の軌道を曲げる」という伝説的な技術を習得し、ついに一流の暗殺者へと覚醒していった。フラタニティは、神聖な「運命の織機」が織り出す布のミス(織り目)を解読し、将来世界に害をなすと予言された者の名を暗殺リストとして受け取っていた。ウェズリーは「一人を殺して千人を救う」という信念のもと、次々とターゲットを抹殺していったが、心の中には常に父を殺したクロスへの復讐心が燃えていた。
ウェズリーは、ついにクロスを走行中の列車内へと追い詰めた。激しい死闘の末、列車が谷底へ崩落する寸前、ウェズリーはクロスに致命傷を負わせた。しかし、死に際のクロスから告げられたのは、「私がお前の父親だ」という衝撃の告白であった。実はクロスこそがウェズリーを陰で見守っていた実父であり、フラタニティを裏切ったのではなく、私欲のためにターゲットを捏造し始めたスローンの腐敗を暴こうとしていた唯一の正義であった。スローンは自分を狙うクロスを排除するため、実の息子であるウェズリーを利用したのであった。
真実を知ったウェズリーは、父の隠れ家で彼が残した緻密な作戦計画と装備を発見した。復讐を誓ったウェズリーは、数千匹のネズミに小型爆弾を背負わせて組織の本部へ放ち、混乱に乗じて単身乗り込んだ。凄まじい銃撃戦の末、彼はスローンとフォックスを含む幹部たちが集まる部屋へと辿り着いた。スローンは窮地に陥ると、実はこの場にいる全員(幹部たち)の名前も「運命の織機」によってリストアップされていた事実を暴露した。彼は「自分たちの死を受け入れるか、能力を活かして支配者として生きるか」を突きつけた。
沈黙の中、組織の理念に忠実であることを選んだフォックスは、ウェズリーに微笑みかけると、円を描くように一発の弾丸を放った。その弾丸は部屋を一周し、フォックス自身を含む幹部全員の頭部を撃ち抜き、最後にスローンをかすめた。スローンはその隙に逃亡したが、組織は完全に壊滅した。
後日、再びかつての冴えない事務員の姿に戻ったかのように見えたウェズリーは、自分を探しに来たスローンを誘い出した。スローンがウェズリーに銃口を向けようとした瞬間、数キロ先から放たれたウェズリーの超長距離射撃が、スローンの眉間を正確に貫いた。ウェズリーはカメラに向かって「最近、君はどうだい?」と問いかけ、誰にも支配されない自らの人生を歩み始めた。
エピソード・背景
- アンジェリーナ・ジョリーの役作り
アンジェリーナは自身のキャラクターであるフォックスについて、「ただの殺し屋ではなく、信念のために命を捨てる武士道のような精神を持たせたい」と提案しました。劇中のフォックスの刺青の多くは、彼女自身の本物のタトゥーが活かされています。 - 弾道を曲げるVFX
本作の象徴である「カービング・バレット(曲がる弾丸)」の描写は、科学的には不可能ですが、監督のティムール・ベクマンベトフは「圧倒的な映像美とスピード感」を重視し、後のアクション映画に多大な影響を与えました。 - 織機(しょっき)の設定
原作コミックでは「スーパーヴィラン」の組織でしたが、映画では「運命の織機」に従う暗殺者集団へと設定が変更されました。これにより、映画独自のダークファンタジー的な世界観が構築されました。 - 実写へのこだわり
列車が谷底へ落ちるシーンや、激しいカーチェイスシーンの多くは、精巧なミニチュアや実車を使用した大掛かりな撮影が行われました。 - ジェームズ・マカヴォイの負傷
激しいアクションシーンの撮影中、マカヴォイは足首を捻挫したり、顔に傷を負ったりと、満身創痍で撮影に臨みました。彼は後に「ボロボロになるほど役になりきれた」と語っています。 - 監督独自の視覚演出
ロシア出身のベクマンベトフ監督は、独自の「スローモーション」と「クイックなカメラワーク」を組み合わせたスタイルを持ち込み、ハリウッドに新鮮な衝撃を与えました。 - 続編の構想
興行的な大成功を受けて、長年にわたり続編の構想が語られてきましたが、物語が完結していることやキャストのスケジュールの都合により、現在まで実現には至っていません。
まとめ:作品が描いたもの
本作は、平凡な男の成長物語という王道の設定に、「運命と自由意志」という重厚なテーマを掛け合わせたエンターテインメント作品です。支配されていた日常から脱却し、自らの人生を選択しようとするウェズリーの姿は、観客に強烈なカタルシスを与えました。
「運命は変えられない」とする組織の理念が、実は権力者の欺瞞であったという皮肉な展開は、現代社会における組織と個人のあり方を暗示しています。過激なバイオレンス描写の裏側に、自己のアイデンティティを確立しようとする若者の葛藤が描かれた、視覚的にも精神的にも刺激的な一作と言えるでしょう。


