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モンパルナスの灯 Montparnasse 19 1958|キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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パリの夜空に消えた天才画家の短い生。情熱、貧困、そして死の後に訪れたあまりにも遅い光。

20世紀初頭のパリ・モンパルナスを舞台に、哀愁漂う異色の天才画家アメデオ・モディリアーニの波乱に満ちた芸術家生命と悲恋を描いた伝記ドラマの傑作。

名匠ジャック・ベッケル監督がメガホンをとり、夭折のスター俳優ジェラール・フィリップが病魔と貧困、アルコールに苦しみながらも美を追求し続けた孤高の画家を熱演。

芸術の残酷さと純粋な愛の姿を儚く美しい映像美で切り取った名作人間ドラマ。

モンパルナスの灯
Montparnasse 19
(フランス・イタリア 1958)

[監督] ジャック・ベッケル
[原作] ミシェル・ジョルジュ・ミシェル
[脚本] ジャック・ベッケル/マックス・オフュルス/アンリ・ジェンソン
[撮影] クリスチャン・マトラ
[音楽] ジョルジュ・ヴァン・パリス/ポール・ミスラキ
[ジャンル] ドラマ/伝記
[受賞] ブリュッセル映画祭 女優賞(リリー・パルマー)

キャスト

ジェラール・フィリップ
(アメデオ・モディリアーニ)

アヌーク・エーメ
(ジャンヌ)

リリー・パルマー
(ベアトリス)

ライラ・ケドロワ (スボロウスキー夫人)
アルレット・ポワリエ (ルル)


評価

それまでの古典的な「芸術家の成功物語」とは一線を画し、生前は誰にも理解されずに困窮を極めたモディリアーニの悲劇的な人生と、芸術ビジネスの冷酷な本質を容赦なく暴き出した作品として高い評価を得ています。

主演のジェラール・フィリップが見せた息を呑むほどの美しさと陰りのある演技、そしてラストシーンにおけるリノ・ヴァンチュラ演じる画商の凄惨な佇まいは、映画史に残る名場面として語り継がれています。

あらすじ:病と貧困に喘ぐモンパルナスの絵描き

1919年のパリ。モンパルナスで暮らすイタリア出身の画家アメデオ・モディリアーニ(ジェラール・フィリップ)は、その卓越した才能にもかかわらず作品が全く売れず、極貧の生活を送っていた。肺結核を患う彼は、苦痛と失意から酒とアブサンに溺れ、荒んだ日々を過ごす。彼を精神的・経済的に支えるのは、画商のズボロフスキー(ジェラール・セティ)や元愛人のベアトリス(リリー・パルマー)ら限られた人々だけだった。

ある日、画塾に通う画学生ジャンヌ(アヌーク・エーメ)と出会ったモディリアーニは、彼女の清純で芯の通った美しさに一目で心を奪われる。二人は深く愛し合うようになるが、裕福で厳格なジャンヌの父親は、定職も払う金もない貧乏画家との交際に激しく反対し、二人を引き裂こうとする。

父親の目を盗んで駆け落ちした二人は、南仏ニースで束の間の穏やかで幸福な生活を送る。ジャンヌの存在によって創作意欲を取り戻したモディリアーニは次々と作品を描き上げ、パリで念願の個展を開くことになった。しかし、個展で飾られた裸婦画が警察から「不道徳だ」と撤去を命じられ、作品はまたしても一作も売れずに終わってしまう。

心身ともに極限まで衰弱したモディリアーニは、路頭に迷うジャンヌと生まれてくる子供を養うため、自尊心を捨てて見知らぬ人々にスケッチを売り歩こうとするが、誰一人として取り合わない。失意のなかで雪の舞うパリの街を彷徨った彼は路上で倒れ込み、病院へ搬送されるものの、ジャンヌの名を呟きながらそのまま静かに息を引き取る。

モディリアーニの訃報を知った強欲な画商モレル(リノ・ヴァンチュラ)は、画家の死によって彼の絵の価値が爆発的に跳ね上がることを誰よりも早く予見していた。モレルはモディリアーニの死を隠したまま、哀しみに暮れるジャンヌのもとへ急行し、彼女の手元に残されていたすべての遺作を二束三文の破格で買い叩くのだった。モディリアーニの描いた美しい肖像画が廊下にズラリと並べられるなか、画家の命と引き換えに金儲けを目論む画商の冷酷な笑みとともに物語は静かに幕を閉じる。

エピソード・背景

  • 名匠マックス・オフュルスの遺志を継いだ映画化
    当初は名監督マックス・オフュルスが監督を務める予定でしたが、クランクイン直前に他界。急遽、彼の親友であり『現金に手を出すな』などで知られる巨匠ジャック・ベッケルが監督を引き継ぎ、オフュルスに捧げる形で完成させました。
  • ジェラール・フィリップ自身の早すぎる運命
    絶望のなかで早世するモディリアーニを壮絶な美しさで演じたジェラール・フィリップですが、彼自身も本作の公開からわずか1年後の1959年、36歳の若さで癌により急逝しました。フィリップの遺作群の中でも特に象徴的な一作となっています。
  • アヌーク・エーメの真に迫る透明感
    ジャンヌ役を演じたアヌーク・エーメは、のちに『男と女』(1966年)で世界的な大スターとなりますが、本作で見せた儚くも一途な佇まいは「モディリアーニの絵画からそのまま抜け出してきたようだ」と大絶賛されました。
  • リノ・ヴァンチュラが見せた冷酷な画商役
    のちにフランス映画界を代表する硬派スタアとなるリノ・ヴァンチュラが、ラストで芸術家をむさぼる画商モレル役を恐ろしいほどの冷徹さで演じ、短い出演時間ながら強い存在感を示しました。
  • 実際の歴史(悲劇の真相)との違い
    実際のジャンヌ・エビュテルヌは、モディリアーニが逝去したわずか2日後、後を追って妊娠中の身でありながら身を投げました。映画では彼女の後追い自殺には直接触れず、画商による作品買い叩きの場面に焦点を絞ることで「芸術ビジネスの残酷さ」を強調しています。
  • 劇中画の美しさとモノクロームの演出
    モディリアーニ独特の面長で首の長い肖像画のスタイルが劇中にも印象的に登場。白黒のシネマスコープで捉えられたパリの雨や雪の風景が、画家の孤独な心情をいっそう引き立てています。

まとめ:作品が描いたもの

生前は不遇を託ち、死後に天才と称えられた画家の切ない半生を通して、芸術の持つ純粋さと、それを商品として貪る社会の醜悪さを描いた不朽の名作です。情熱を注いで描いたキャンバスと、最期まで貫かれた無償の愛の尊さが、観る者の心に深い感動を残します。

〔シネマ・エッセイ〕

雨に濡れた石畳、アブサンのグラスに反射する微かな光、そしてキャンバスに向かう男のどこか悲しげな眼差し。スクリーンのどこを切り取っても、モディリアーニの描く肖像画のような切なさと美しさが漂っています。

ジェラール・フィリップが見せる、プライドと絶望の間で引き裂かれる姿には息を呑むほどの凄絶さがあります。だからこそ、自分の死によって絵が高値で取引されることを知らずに逝った男の悲劇と、その残骸を静かに買い叩いていく画商の姿が対比されるラストは、胸が張り裂けそうなほどの虚しさを突きつけてきます。芸術とは何か、愛とは何かを、消えゆく蝋燭の灯火のように美しく問いかけてくる永遠の傑作です。

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