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危険な関係 Les liaisons dangereuses 1959|キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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冷酷なゲームの果てに待つ悲劇。ジャズの甘美な調べに乗せて描く、洗練された愛の自滅。

18世紀のラクロによる不朽の不倫恋愛小説を、ロジェ・ヴァディム監督が現代(1950年代)のパリ社交界へと鮮やかに置き換えて映画化。上流階級の夫婦が繰り広げる冷酷な恋愛ゲームと、その果てに訪れる破滅を描く。セロニアス・モンクやアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズによるモダン・ジャズのスコアが物語の退廃的な魅力を一層引き立てる官能的な愛憎劇。

危険な関係
Les liaisons dangereuses
(フランス・イタリア 1959)

[監督] ロジェ・ヴァディム
[原作] コデルロス・ド・ラクロ
[脚本] クロード・ブルレ/ロジェ・ヴァディム/ロジェ・ヴァラン
[撮影] マルセル・グリニョン
[音楽] セロニアス・モンク
[ジャンル] ドラマ

キャスト

ジャンヌ・モロー
(ジュリエット)

ジェラール・フィリップ
(ヴァルモン)

ジャンヌ・ヴァレリー (セシル)
アネット・ヴァディム (マリアンヌ)

マドレーヌ・ランベール (ロセモンド)


評価

公開当時、原作の古典小説を現代のブルジョワ社会に移植した斬新な試みや、その過激で不道徳なテーマ性が大きな物議を醸し、フランス本国では一時輸出禁止措置が取られるなどスキャンダラスな話題を集めました。

ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローという当代屈指の名優が魅せる冷徹でエレガントな駆け引き、そして全編を彩るジャズ・ミュージックの融合は、1950年代末のシネマティックな雰囲気を象徴する傑作として高く評価されています。

あらすじ:自由恋愛を誓い合う冷徹な夫婦

外交官のヴァルモン(ジェラール・フィリップ)と妻のジュリエット(ジャンヌ・モロー)は、互いに他の相手と情事を重ねることを認め合い、その詳細を報告し合うという歪んだ信頼関係で結ばれた夫婦であった。二人の絶対的なルールは「他者に対して絶対に本気の恋に落ちないこと」だった。

ある日、ジュリエットは自分を捨てて若い娘セシル(ジャンヌ・ヴァレリー)と結婚しようとしている元愛人への復讐を思いつく。彼女は夫ヴァルモンに、純真なセシルを誘惑して処女を奪うよう持ちかける。ヴァルモンは快諾し、セシルとその恋人ダンスニー(ジャン=ルイ・トランティニャン)の間に割り込んで巧みに彼女を落としていく。だが同時期に、ヴァルモンは道徳的でまじめな人妻マリアンヌ(アネット・ヴァディム)と出会い、彼女の固い貞操を崩すことにも執着し始める。

ヴァルモンは猛烈なアプローチの末、ついにマリアンヌを心身ともに虜にする。しかし、彼女と過ごすうちに、ヴァルモンはルールを破って彼女を本気で愛してしまう。

ヴァルモンの本心を見抜いたジュリエットは激しい嫉妬に駆られ、マリアンヌと別れるようヴァルモンに強く迫る。妻とのゲームの優位性を保ちたいヴァルモンは、苦渋の決断としてマリアンヌに冷酷な別れを告げる。ショックを受けたマリアンヌは精神を病み、重病に倒れてしまう。

ヴァルモンの裏切りに満ちた嫉妬に怒りが収まらないジュリエットは、セシルを愛していた青年ダンスニーを唆し、「ヴァルモンがセシルを弄んだ」と吹き込む。激怒したダンスニーはヴァルモンに決闘を挑み、ヴァルモンは彼の剣にかかって命を落とす。

死の直前、ヴァルモンはジュリエットから送られた過去の悪行や手紙の数々をダンスニーに託していた。ダンスニーの手によってその不道徳な書簡が社交界に暴露され、ジュリエットの醜い素顔が完全に公となる。すべてを失い、顔に不慮の火傷を負ってみにくくなったジュリエットは、社交界から永遠に追放され、誰もいなくなった静寂のなかで孤独に打ちひしがれるのだった。


エピソード・背景

  • ジェラール・フィリップ最後の現代劇
    フランス映画界の永遠の貴公子ジェラール・フィリップが、病により36歳の若さで急逝する直前に主演した遺作の一つです。彼が魅せた知的で冷酷、かつ哀愁を帯びたヴァルモン役はハマリ役として語り継がれています。
  • サントラを彩るジャズの名盤
    音楽にはセロニアス・モンクやアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズが起用され、ハード・バップを中心としたモダン・ジャズが全編に流れます。映画音楽史におけるジャズ・サントラの金字塔としても非常に有名です。
  • スキャンダルと検閲の嵐
    フランス作家協会から「名作古典の名を汚す」として題名の変更を求められるなどの裁判沙汰に発展し、さらに海外への輸出が制限されるなど、当時の道徳観を大きく揺るがした衝撃作でした。
  • 古典から現代社会への舞台移植
    原作は18世紀末の書簡体小説ですが、監督のロジェ・ヴァディムは1950年代当時の富裕層のライフスタイル(スキーリゾート、メガロポリス、ジャズクラブなど)へ大胆に置き換え、ブルジョワ社会の空虚さを暴き出しました。
  • 当時の妻アネット・ヴァディムの起用
    監督のロジェ・ヴァディムは、元妻ブリジット・バルドーに続き、当時の妻であったアネット・ヴァディム(スチュベンバーグ)を純真な人妻マリアンヌ役に抜擢し、その華やかで繊細な存在感が話題となりました。

まとめ:作品が描いたもの

愛をコントロールできると過信した男女が、自ら仕掛けた罠と本物の感情によって自滅していく姿を描いた退廃的な人間ドラマです。優雅な社交界の裏に潜む人間のエゴイスティックな欲望と、完璧だったはずの計算が破綻していく過酷な運命を皮肉たっぷりに切り取っています。

〔シネマ・エッセイ〕

モノクロームの画面に漂うのは、あまりにも洗練された煙草の煙と、夜の静寂を切り裂くジャズの哀切な旋律。冷笑を浮かべてゲームを楽しむヴァルモンとジュリエットの姿は、一見すると現代社会の最先端を走る知性そのものに見えます。

しかし、知性で感情を支配しようとした二人が行き着くのは、あまりにも虚しい破滅でした。本物の愛に気づきながらもそれを捨てざるを得なかった男の苦悩と、嫉妬によってすべてを焼き尽くした女の惨めな末路。スクリーンに満ちるモダンで退廃的な美しさは、今なお色あせることなく観る者を甘い毒のように魅了し続けます。


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