12人の怒れる男
12 Angry Men
(アメリカ 1957)
[製作] ヘンリー・フォンダ /ジョージ・ジャスティン/レジナルド・ローズ
[監督] シドニー・ルメット
[原作] レジナルド・ローズ
[脚本] レジナルド・ローズ
[撮影] ボリス・カウフマン
[音楽] ケニヨン・ホプキンス
[ジャンル] 法廷/ドラマ/ミステリー
[受賞]
ベルリン映画祭 金熊賞/国際カトリック映画事務局賞
英国アカデミー賞 男優賞(ヘンリー・フォンダ)
ロカルノ国際映画祭 特別賞
キャスト
ヘンリー・フォンダ
(陪審員8番(デイヴィス))
ジャック・ウォーデン
(陪審員7番)
リー・J・コブ (陪審員3番)
エド・ベグリー (陪審員10番)
E・G・マーシャル (陪審員4番)
マーティン・バルサム
(陪審員1番)
ジョン・フィードラー (陪審員2番)
ジャック・クラグマン (陪審員5番)
エド・バインズ (陪審員6番)
ジョゼフ・スウィーニー (陪審員9番(マッカードル))
ジョージ・ヴォスコヴェック (陪審員11番)
ロバート・ウェバー (陪審員12番)
概要
『12人の怒れる男』(12 Angry Men)は、シドニー・ルメット監督による法廷ドラマ映画。少年が父親を殺害した容疑で起訴された事件をめぐり、12人の陪審員が有罪か無罪かを議論する物語。裁判後の評議室だけを舞台に、密室劇として展開される。ヘンリー・フォンダを筆頭にした優れたキャストの演技と、鋭い脚本が融合し、先入観や偏見、集団心理をテーマにした名作として高く評価されている。
ストーリー
父親を殺害したとして起訴された少年の運命が、12人の陪審員に委ねられる。裁判は一通り終わり、陪審員たちは評議室で審議を始める。有罪の場合、少年には死刑が言い渡されることになる。最初の投票では、11人が有罪とする中、陪審員8号(ヘンリー・フォンダ)だけが無罪を主張する。
8号は「合理的な疑い」を挙げ、証拠や証言の矛盾点を指摘し始める。彼は少年の有罪を疑う立場から他の陪審員たちに再考を促す。議論が進むにつれ、陪審員たちは各々の先入観や感情、偏見と向き合わざるを得なくなる。例えば、陪審員10号は人種的偏見を抱え、陪審員3号は自身の息子との確執からくる感情で判断していた。
8号の粘り強い主張と冷静な分析により、陪審員たちは次第に証拠を再評価し始める。証人の信憑性、証言の矛盾、事件現場の状況が次第に明らかになるにつれ、「有罪」が「無罪」に傾いていく。
物語は密室での激しい対立と冷静な議論を通じて、偏見や集団心理、そして法制度の重要性を浮き彫りにしていく。
エピソード
密室劇の緊張感
映画はほぼ一つの部屋内で進行するため、監督はカメラアングルや照明を工夫し、視覚的な変化を与えた。
ヘンリー・フォンダ
フォンダは主演だけでなく、プロデューサーとしても映画に携わり、製作における中心的役割を果たした。
実際の評議室の再現
評議室のセットは閉塞感を強調するために狭く設計され、撮影が進むにつれてカメラの位置が低くなり、窮屈な雰囲気を増幅した。
キャストの演技合戦
名優たちの集団演技が見どころで、それぞれのキャラクターがリアルかつ個性的に描かれている。
少ない予算での挑戦
制作費が限られていたため、セットやキャストの規模を小さくする代わりに、緊迫感のある脚本と演技に重点を置いた。
即興的な演技の採用
キャスト同士の議論がリアルに感じられるのは、一部が即興で演じられたため。
批評家からの絶賛
映画公開当初は商業的成功を収められなかったが、後に批評家からの高評価を受け、クラシックとしての地位を確立した。
ルメット監督のデビュー作
本作はシドニー・ルメットの映画監督デビュー作であり、緻密な演出が注目された。
台詞の力
アクションがないにもかかわらず、鋭い台詞が観客の関心を引きつけ、映画全体を通して緊張感を持続させた。
感想
偏見や感情に流される人間の弱さが見事に描かれていて、全編を通して引き込まれた。特に8号の冷静さと粘り強さが印象的で、「一人の声でも正義を変えられる」というメッセージに心を動かされた。限られた空間と台詞だけで、こんなに緊張感のある物語を描けるなんてすごい。個々のキャラクターもリアルで、どこか身近な存在に感じられたのも共感できる理由の一つ。
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