PR

慕情 Love is a Many-Splendored Thing 1955

ローレライ@洋画愛好家をフォローする

香港の小高い丘に咲いた悲しくも美しい愛——アカデミー賞受賞の名曲とともに贈るロマンス映画の金字塔

名匠ヘンリー・キング監督が大女優ジェニファー・ジョーンズと名優ウィリアム・ホールデンを迎えて描いたロマンチック・ドラマの傑作。

激動の東アジア・香港を舞台に、英国人と中国人の血を引く女医と、アメリカ人戦場特派員との国境や人種を越えた悲恋を描き出す。

慕情
Love is a Many-Splendored Thing
(アメリカ 1955)

[製作] バディ・アドラー
[監督] ヘンリー・キング
[原作] ハン・スーイン
[脚本] ジョン・パトリック
[撮影] レオン・シャムロイ
[音楽] アルフレッド・ニューマン/サミー・フェイン
[ジャンル] 恋愛/戦争/実話
[受賞]
アカデミー賞 衣装デザイン賞/作曲賞/歌曲賞
ゴールデン・グローブ賞 国際評価作品賞

キャスト

ジェニファー・ジョーンズ
(Dr.ハン・スーイン)

ウィリアム・ホールデン
(マーク・エリオット)

トリン・タッチャー (ハンフリー・パーマー・ジョーンズ)
イザベル・エルソム (アデリーン・パーマー・ジョーンズ)
マーレイ・マシソン (Dr.ジョン・キース)
ヴァージニア・グレッグ (アン・リチャーズ)


受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1956第28回アカデミー賞歌曲賞(「Love is a Many-Splendored Thing」) / 劇・コメディ映画音楽賞 / 衣裳デザイン賞(カラー部門)受賞
1956第28回アカデミー賞作品賞 / 主演女優賞(ジェニファー・ジョーンズ) / 撮影賞 / 美術賞 / 録音賞ノミネート
1956第13回ゴールデングローブ賞国際理解貢献映画賞受賞

評価

女性医師ハン・スーインの自伝的小説『多くの輝きをもつもの』を原作に、過酷な時代に翻弄される男女の純愛を描いた不朽の名作です。 香港の風光明媚なロケーションと、オリエンタルな情緒漂う鮮やかな色彩美が高く評価されています。

映画史に残るサミー・フェイン作曲のテーマ曲「慕情(Love is a Many-Splendored Thing)」の美しさは圧巻で、映画音楽の歴史を象徴する作品として今なお親しまれています。

あらすじ:オリエンタルの都で芽生えた運命の恋

1949年、国共内戦の激化により避難民が押し寄せる香港。イギリス人と中国人の血をひく女医ハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、夫を戦乱で亡くした傷を抱えながら、病院での仕事に専念していた。

あるパーティーで、彼女はアメリカ人の新聞記者マーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と出会う。妻と別居中であるマークの情熱的なアプローチに、当初は戸惑いを見せるスーイン。しかし、香港の街を見下ろす静かな丘の上で言葉を交わすうち、二人は深く惹かれ合っていく。

周囲の人種的偏見や別居中の妻との離婚協議の難航など、様々な障害が立ちはだかるものの、二人はお互いこそがかけがえのない存在であることを確信していくのだった。

二人は束の間の幸せを慈しむようにマカオなどへ旅をし、愛を深めていく。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発。マークは特派員として戦場へ赴くことになり、過酷な戦地へと旅立っていく。

戦地からのマークの手紙だけを糧に、彼の手紙を待ち続けるスーイン。そんなある日、彼女のもとに「マーク戦死」の悲報が届く。爆撃によって彼の命が奪われたことを知り、絶望の淵に突き落とされるスーイン。

泣き崩れる彼女は、二人が愛を誓い合った想い出の丘へと向かう。風が吹き抜ける小高い丘の上で、彼女は今もなお自分の心の中で生き続けるマークの幻影と、彼の「愛は素晴らしく輝かしいものだ」という言葉を感じ取る。悲しみを乗り越え、彼との愛を永遠の誇りとして生きていく決意を胸に、彼女は丘を後にするのだった。


エピソード・背景

  • 時代を超えて愛されるアカデミー受賞曲「慕情」
    サミー・フェイン作曲、ポール・フランシス・ウェブスター作詞によるテーマ曲「Love is a Many-Splendored Thing(慕情)」は第28回アカデミー歌曲賞を受賞。フォー・エイセス歌唱のレコードが大ヒットしたほか、数多くのアーティストにカバーされるポピュラー音楽の金字塔となりました。
  • 実際の香港とマカオでのロケーション撮影
    当時の香港(ヴィクトリア・ピークやレパルスベイ)やマカオで大規模なロケを敢行。東洋と西洋が交差する独特のエキゾチックな街並みと自然が、シネマスコープの美しいカラー映像で捉えられています。
  • 主演ふたりの不仲説とプロ意識
    劇中では情熱的な恋人を演じたジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデンですが、撮影現場での相性は最悪だったという有名な逸話があります。ジョーンズの過剰な警戒心(夫の製作者デヴィッド・O・セルズニックへの配慮)にホールデンが閉口していたとされますが、画面上では見事なケミストリーを見せています。
  • チャイナドレスの美しさと衣装賞獲得
    ジェニファー・ジョーンズが劇中で着用する洗練されたチャイナドレスの数々は、彼女の気品あふれる美しさを引き立て、第28回アカデミー衣裳デザイン賞を受賞しました。
  • 原作者ハン・スーインの波乱の生涯
    原作の著者ハン・スーイン(韓素音)は実在の医師・作家であり、本作の爆発的ヒットによって世界的な知名度を獲得。彼女の自伝的要素が物語に強いリアリティを与えています。

まとめ:作品が描いたもの

国境や人種、そして戦争という時代の荒波に引き裂かれながらも、一瞬の真実の愛を抱いて生きる人間の尊さを描いたラブロマンスの傑作です。「愛とは多くの輝きを持つもの」というタイトルの通り、たとえ愛する者を失っても、愛した記憶そのものが人生を永遠に照らし続けるという力強いメッセージが、観る者の心に深い感動を残します。

〔シネマ・エッセイ〕

港を見下ろす小高い丘と、風にそよぐ一本の木。映画史に残る切なくも甘美なメロディが流れるたび、遠い異国の地に咲いた悲しくも気高き恋の記憶が胸を締め付けます。

マークの手紙を待つスーインの儚い横顔が、スクリーンに溢れるエキゾチックな色彩以上に私の心を強く揺さぶります。周囲の冷ややかな視線や偏見に晒されながらも、自分の感情に嘘をつかず、一筋の愛を貫こうとする彼女の佇まい。傷つくことを恐れずに誰かを深く愛する姿には、言葉を超えた人間の気品が漂っています。

愛する人を永遠に失った悲しみの果てに、二人の思い出の丘へと駆け登っていくラストシーン。幻影となったマークの面影を抱きしめ、涙を拭って歩み出す彼女の瞳には、愛を知った者だけが持てる静かな強さが宿っています。形あるものは失われても、一度灯った愛の輝きは誰にも奪えないのだと、切ない余韻とともに教えられます。

タイトルとURLをコピーしました