ワン・フロム・ザ・ハート
One From the Heart
(アメリカ 1982)
[製作総指揮] バーナード・ガースタン
[製作] マーミアン・バーンスタイン/グレイ・フレデリックソン/フレッド・ルース/モナ・スケイガー
[監督] フランシス・フォード・コッポラ
[原作] アーミアン・バーンスタイン
[脚本] アーミアン・バーンスタイン/フランシス・フォード・コッポラ
[撮影] ロナルド・ヴィクトル・ガルシア/ヴィットリオ・ストラーロ
[音楽] トム・ウェイツ
[ジャンル] ドラマ/恋愛/ミュージカル
キャスト
フレデリック・フォレスト
(ハンク)
テリー・ガー
(フラニー)
ラウル・ジュリア
(レイ)
ナスターシャ・キンスキー
(レイラ)
レイニー・カザン (マギー)
ハリー・ディーン・スタントン
(モー)
アレン・ガーフィールド (レストランオーナー)
カーマイン・コッポラ (エレベーター乗客)
イタリア・コッポラ (エレベーター乗客)
レベッカ・デ・モーネイ
(代役)
概要
『ワン・フロム・ザ・ハート』は、フランシス・フォード・コッポラが監督を務めたロマンティック・ミュージカル映画。
ラスベガスを舞台に、愛と夢を模索するカップルの物語が幻想的な映像美と音楽で彩られる。
全編をスタジオで撮影し、独特のアートディレクションとトム・ウェイツによる音楽が特徴的。公開当時は興行的に失敗したものの、現在では独自の芸術性が評価されている。
ストーリー
物語の中心は、ラスベガスに住む長年の恋人同士、ハンク(フレデリック・フォレスト)とフラニー(テリー・ガー)。彼らの関係はマンネリ化し、お互いに不満を抱いていた。ある記念日、些細な喧嘩がきっかけで二人は別れることを決意する。
フラニーは夢を追い求める女性で、ハンクの現実主義的な性格に不満を抱えていた。一方、ハンクはフラニーを愛しているものの、自分の感情を上手く表現できずにいた。二人は別々の夜を過ごす中で、それぞれ新しい相手と出会う。
フラニーは、陽気で自由な性格のレイ(ラウル・ジュリア)に惹かれ、ハンクは謎めいたサーカスダンサーのレイラ(ナスターシャ・キンスキー)と交流を深める。華やかなラスベガスの光と影の中で、それぞれが新たな恋や夢に向かって動き出す。
しかし、夜が更けるにつれ、二人は互いの存在の大切さに気づいていく。新しい出会いがもたらす刺激と、長年共有してきた絆の間で揺れ動きながら、彼らは自分たちの関係と向き合う決断を迫られる。
エピソード
- ラウル・ジュリアは、自由奔放なキャラクターを演じるために、実際にラスベガスのダンサーたちと時間を過ごし、彼らの生き方を研究した。
- 映画全編がスタジオで撮影され、コッポラはキャストとともに夢のようなラスベガスの世界観を作り上げた。この閉じられた環境で、キャスト同士の絆が深まった。
- テリー・ガーはフラニーの感情的なシーンで即興的なセリフを取り入れ、コッポラもその自然な表現を撮影に活かした。彼女は、演技だけでなく歌唱にも挑戦し、新たな一面を見せた。コッポラとの共同作業を通じて、彼女のキャリアに新たな幅が加わった。
- フォレストは、感情を表に出すのが苦手な男の心情をリアルに表現するため、現実でも内省的な態度を保ちながら撮影に挑んだ。
- 音楽の中核を担ったトム・ウェイツとクリスタル・ゲイルの歌声が、キャラクター同士の感情を表現する重要な役割を果たした。二人のコラボレーションは映画の大きな魅力となっている。
撮影中、トム・ウェイツの音楽が現場で頻繁に流され、それがキャストたちの感情表現に大きく影響を与えた。 - ナスターシャ・キンスキーは、セリフよりも身体の動きや表情で感情を伝える演技にこだわり、幻想的なキャラクター像を作り上げた。
- 撮影中、コッポラは俳優たちに場面の変更を即興で伝え、キャラクターのリアリティを引き出そうとした。この柔軟なアプローチが、キャスト間の緊張感を高めた。
- コッポラは美術監督ディーン・タヴォウラリスと密に連携し、ラスベガス特有の煌びやかな世界観と、登場人物たちの内面のコントラストを作り上げた。
- 映画が興行的に失敗した際、キャストや音楽担当のウェイツはコッポラを励まし、芸術性が評価される時が来ることを信じていた。
感想
華やかなラスベガスの風景と、心の葛藤が繊細に交差していて、現実と夢の境目が曖昧になる不思議な感覚だった。フラニーが自分の夢を追いながらも、愛を諦めきれない姿に共感。幻想的な映像美と音楽が心を揺さぶり、現実の人間関係の複雑さを感じさせてくれる映画だった。特に、二人が自分たちの気持ちに向き合うラスト近くの展開には、静かな感動があった。
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